隣に越してきた配信者にぺろりと食べられる俺の話

縫(ぬい)

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本編

日本語なのに言ってることが理解できないことってあるんだな

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「二ヶ月前から!? 嘘だろ聞いてないぞ!」

「言ってないもん。そもそも雫は幼馴染だから最近知り合ったわけでもないし」

「へ~~そりゃ……、おめでとう」

 友人に恋人ができたことは素直におめでたい。おめでたいがコイツはちょっと前まで彼女作んないとかほざいていた。


「私たちの馴れ初めはいいでしょ! えーっと……蛍くんでいいのかな? 身長そんなに高くなくて可愛い! うわ顔ちっさ! 目ぇでっか! 肌きれ~、なんか良い化粧水使ってる!?」

「え? あ、えと俺肌弱いからちゃんとしたやつ一応使ってるけ、ど……近っ、近い近い近い! きっ桐谷、そんなら俺帰るから! ごめんな!」

 やたらグイグイ来る桐谷の彼女に思わず逃げ腰になる。身長のことを言われた気がしたが気のせいだろ。

 その辺に乱雑に置いておいた自分の荷物を抱えて帰る準備をしている間に、桐谷が彼女に俺の事情を説明していた。


「そうなんだ。うるさいの大変だね……」

「うん、まあ、怖いけどさすがにいつか心の準備ができたら直接いうよ。このままってわけにもいかないし。その前になんか……防音シートとか見てみようと思ってるけど」

「えっ!! 直接って、チャイムとか鳴らして!? 対面するってこと!?」

「え? う、うん」

 それ以外になくないか? ポストに手紙とか入れてもいいけど、知らない人から急にそんな手紙くるの怖いだろうし。


「ええ~! だめだよこんな可愛い子がわざわざそんな事しに行くなんて……! すみませんお詫びにご馳走するんで……とか言われて部屋招き入れられてそのまままるごとぺろりって食べられちゃうよぉ~~!!」

「……は?」

「ああ……すまん蛍、こいつちょっと……。男と男をカップルにしたがる病気にかかってて……」

「は????」

 言っていることが一ミリも分からず頭の中がハテナで埋まる。

「とにかく気をつけたほうがいいよ! 私が男だったら蛍くんのことそのまま家に連れ込んで口説きに口説いて押し倒すよ!! それで体から始まる関係だけど徐々に本気になっていっもご」

「????????」

「気にするな蛍!! 泊まりは無理だけど遊びには来て平気だから!! ごめんなお前の安眠を守れなくて!」

 桐谷が彼女の口を勢いよく塞いで俺を見送る。
 そのまま不可解な気持ちになりつつ桐谷の家を後にした。

 ビジホとか行こうかなと一瞬だけ思ったけど、何で俺がお隣さんのためにビジホに課金しなきゃいけないんだと憤りを覚えそのまま普通に自宅に帰った。





「騒音……対策っと」

 家に帰り、騒音対策のグッズをスマホで検索してみる。
 ……色々あるな。この安いシートとか買ってみてもいいかも。
 壁が薄い以上俺の生活音も漏れてるかもしれないしな。今までは左右の部屋が空席だったから気づかなかった。

 少しした後、隣の部屋からいつも通り男の声が聞こえた。

(ん? まだ十八時だぞ。今日は早いな。土曜だからか?)


 その時、俺の頭にあるひとつの案が浮かぶ。


(隣の人の配信、ちょっと検索してみようかな……!?)

 なんかストーカーみたいな考えだがこれは違う。だって騒音の元凶だぞ。迷惑をかけられているのは俺が先である。

 ……単純に好奇心だ! 気になる!!

 といってもまあ、有名な配信サイト以外で配信してるんだとしたら見つけられないけど。


『はーい今日も配信やってくよ~。いや~やっとこのランクまで来れた!』

(いつもやってるゲームと同じみたいだな。俺はやってないけど、桐谷が前やってたゲームだから何となくわかる。えっと、確か……)

 イヤホンを挿し、スマホに入れている配信アプリのタグ検索でゲーム名を入力する。

 二十分後、二個目に開いた配信アプリでそれっぽい配信を見つけた。


(お、お、お? これじゃね? 声も似てるし……これで話してる内容が同じなら!)

 イヤホンを強く耳に当てて隣の部屋から漏れ聞こえる話し声と中身が合致しているか確認する。

 ……ビンゴだ!!!!!


 俺はちょっと興奮していた。こう、見つけ出したという感じが……なんか犯罪くさいな! やめよう! やましい気持ちはありません!

「おっSNSアカウントが概要欄に書いてある。……見たろ!」

 アカウント名をコピペし、該当SNSを開き検索をかける。
 ヒットしたアカウントを見ると、そこそこフォロワーもいるようだった。めちゃくちゃ有名なわけじゃないけど無名でもないって感じか。

「顔出しは……してないのかな? おおっすげー、ファンアートタグとかあるじゃん! Vtuber? ではなさそう……。代理キャラ的なやつ?」

 最早ちょっと楽しくなっている俺はスイスイと彼のSNSの画像欄を遡っていた。
 青いふわふわの髪の毛に白メッシュが入り、灰色の瞳を持ち耳にピアスがめちゃくちゃついている男性がお隣さんの代理キャラらしい。

 これがもし現実と同じ色合いで同じピアス量なら普通に怖すぎる。絶対うるせーばーかとか言えない。


「よくやってるのはFPSゲーム、非対称型対戦ゲーム、あと人狼? うわぁ陽キャだなあ~。俺、ひとりで出来るゲームしかしたことねえよ」

 対戦ゲーム、怖くないのだろうか。自分がミスって味方にボロクソ言われるのも味方がミスって微妙な空気になるのも、俺は耐えられないのだが。

 まあいいか。お隣さんのアカウントが分かって別に得することなど何もないけど、暇つぶしにでも見させてもらおう。
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