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逃亡先の安らぎ
小鳥で逃亡5
しおりを挟む寂れた商店街を二人は歩いていた。行き交う人もほぼおらず、裸足で無くなった竜児の歩みは順調だ。
歩みは順調だが、目的地も無くただ彷徨う。
「聞いても良いですか?」
「いーよ」
「どうして絹田さんと二人で暮らしているんです?ご両親は?」
「ん-、俺もよくわかんないんだよね」
「え?」
歩みを止めた前川につられて、竜児も足を止めた。
「母さんは少し前に死んで、親父は生きてる。きぬが言うには親父から俺たちは逃げてるらしいけど、なんで逃げてるのかは知らない」
「どう……して?」
「さあ?きぬが言わないからわかんない。でも、そろそろこの生活も飽きてきたんだよね」
ぺろっと可愛く舌を出す青年の背後が、ツタにまみれている事に気が付いた。壁が続いているが、何の建物だろうか?このあたりはあまり配送に来たことが無い地域だから、よく知らない。
視線をスライドすると、安っぽいネオンが光っているのが見えた。昼間からチカチカ光るなんて、いったい何の――。
と、建物の正体に気が付いた。
「前川サンの事結構気に入ってるんだよね」
「はい?!」
するりと腕を絡ませられる。少し下から見上げられると、美青年の顔面力がつよすぎて顔が赤くなった。
「大丈夫。十八過ぎてるからそういう事してもだいじょうぶだよ」
甘い囁きは悪魔か天使か。
チラチラとネオンが光っているのは、ホテルへの入口だ。
「前川サンだって、俺の事気に入ってるでしょ?もっと、知りたくない……?」
「そ、それは……!ぴ、ピィちゃんは良いですか?!」
「なんかこれだけ探してもダメだったらしょうがないかなーって。ピィちゃんいなくなった寂しさ、前川サン埋めてくんない?」
――未成年ではない、成人だ。だから正直手をだしても大丈夫。いや、大丈夫か!?ホントに?!未婚の成人男性二人がラブホテルに入る事に何の罪もないだろうことは分かっているが、なけなしの理性がギリギリ前川を引き留めている。
「……ダメ?俺じゃダメなの?」
陥落。
一目惚れに近い相手からのこの言葉は効く。前川は鼻息荒く竜児の肩を抱き、ホテルの入口へと向かっていった。
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