ふしぎな繁華街のふしぎな保育園のふしぎな男

花田トギ

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八岐大蛇と酒呑童子

八岐大蛇と酒呑童子3

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「あ、笑ったね。良い笑顔してるじゃん」
「何それ、ナンパですか?」
「違う違う、お母さんには笑っててほしいってだけ……はい、つきましたよココでーす」
 到着したのは、雑居ビルの前だった。テナントの看板の二階と三階にももの保育園の表示があった。
「あー……」
 奈々は一階を見て眉を寄せた。事前情報として調べて知っていたが、一階は無料案内所だったからだ。チラリと案内所の中を見ると、奥の方に仏頂面の大柄な男が接客をしていた。
 緊急で預けられるところを探したらココしかなかったとはいえ、奈々の常識からするとかなり外れた場所にももの保育園はあった。
「保育園行く人はね、裏にエレベーターあるから安心してね。見えないようになってるから」
 荷物を持った理一郎が裏手に回ると、確かにエレベーターがあった。周りも、到着したエレベータの中も保育園らしい装飾がされている。
「なんだか、一階との差がすごいところですね」
「そうだよねぇ。なかなかハードル高めだよねーだけど、このあたりで働くお母さん達からは預けやすいって意見もあるから移転も難しいんだよねー」
「そうなんですねーあ、ありがとうございます。ここまで荷物持ってもらって」
 エレベーターが二階に到着した。荷物を貰おうと手を出す。
「良いの良いの、こんなのお安い御用だから」
 理一郎はまだ返してくれない。
「もう着いたので」
 と言っても「いーのいーの」と笑って、保育園の受付をすり抜けた。
「ほら、こっちに談話室あるから。ここに荷物置いとくね」
「し、しつれいしまーす……?」
 談話室と言われた部屋には、木目調の壁紙が貼られていて、ふわふわの椅子が置いてあった。その横にはベビーチェアとベビーベッドが置かれ、荷物おきの大きな籠もあった。
「お茶かお水かコーヒーか紅茶どっちが良い?あとリンゴジュースもあるよ」
「えっと、じゃあお水で」
 奈々の返事に理一郎は笑顔で頷き、携帯をいじり出した。
「あ、えと、り、理一郎さん?」
「はい、奈々さんなんですか?あ、苗字も一応良い?」
「え……?」
 苗字をどうして聞かれるのか。怪しすぎて、初音を抱っこ紐の上から抱きしめた。
 ごくり、と自分の喉が鳴ったのが分かる。
「しつれいしやーっす」
 緊張する中、入って来たのはザ・ギャルという風貌の女の人だ。ただ、子供に大人気のキャラクターのエプロンをしている。先程とは違う緊張感に包まれる。だってギャルは少し苦手だから。
「あ?渡辺さんだよね。お水置いておくねー。リイチローはアイスコーヒーね」
「ありがとうー。後でまたそっちも見に行くね」
「おっけおっけー。……って渡辺さん固まってない?」
 目の前でふりふりと手を振られる。薄着のギャルの胸元につい目がいくが、そこにはひらがなで『るみか』と名札が付いていた。名前の周りには手書きのアニメキャラクターがたくさん描かれている。
「あ……!これってピクキュア?」
 【ピクセルキュアラー】略してピクキュアは、奈々が子供の頃に流行った女児アニメだ。ちなみに今も続いているが、元祖のみピクキュアと呼ばれている。
「え?!ピクキュア世代?RGB派?CMYK派?」
 懐かしい単語に心が躍る。
「RGB……!」
 るみかの胸元にはRGBの人気キャラが描かれていた。これは外していない答えだろう。
「やっぱり王道はそっちだよねー!ちなみに私は第三勢力のドット派!」
「ええー?!選択肢に無かったのに?」
「人生ってそういうものだからさー。ほら、リイチローに説明聞いて、後でお試し保育に預けにおいでよ」
 小麦色の肌から白い歯を見せてカラッと笑うと、るみかは談話室を出ていってしまった。
「――元気な人でしょ?うちの保育士のるみかさん」
「ほ、保育士?!ってうちのって?」
「あれ?……あ、そっか、外から一緒に来たから言うの忘れてた。ここ俺の園。申し遅れました、柴田理一郎です。理一郎の理は理事長の理って事でよろしく」
 理一郎は名刺を差し出した。確かにももの園理事長の肩書がそこには書かれている。
「ええー?!」
 今までの驚きが全て口から出た奈々の声に、初音が起きて鳴いてしまった。談話室には親子の声が響いた。
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