3 / 11
八岐大蛇と酒呑童子
八岐大蛇と酒呑童子3
しおりを挟む
「あ、笑ったね。良い笑顔してるじゃん」
「何それ、ナンパですか?」
「違う違う、お母さんには笑っててほしいってだけ……はい、つきましたよココでーす」
到着したのは、雑居ビルの前だった。テナントの看板の二階と三階にももの保育園の表示があった。
「あー……」
奈々は一階を見て眉を寄せた。事前情報として調べて知っていたが、一階は無料案内所だったからだ。チラリと案内所の中を見ると、奥の方に仏頂面の大柄な男が接客をしていた。
緊急で預けられるところを探したらココしかなかったとはいえ、奈々の常識からするとかなり外れた場所にももの保育園はあった。
「保育園行く人はね、裏にエレベーターあるから安心してね。見えないようになってるから」
荷物を持った理一郎が裏手に回ると、確かにエレベーターがあった。周りも、到着したエレベータの中も保育園らしい装飾がされている。
「なんだか、一階との差がすごいところですね」
「そうだよねぇ。なかなかハードル高めだよねーだけど、このあたりで働くお母さん達からは預けやすいって意見もあるから移転も難しいんだよねー」
「そうなんですねーあ、ありがとうございます。ここまで荷物持ってもらって」
エレベーターが二階に到着した。荷物を貰おうと手を出す。
「良いの良いの、こんなのお安い御用だから」
理一郎はまだ返してくれない。
「もう着いたので」
と言っても「いーのいーの」と笑って、保育園の受付をすり抜けた。
「ほら、こっちに談話室あるから。ここに荷物置いとくね」
「し、しつれいしまーす……?」
談話室と言われた部屋には、木目調の壁紙が貼られていて、ふわふわの椅子が置いてあった。その横にはベビーチェアとベビーベッドが置かれ、荷物おきの大きな籠もあった。
「お茶かお水かコーヒーか紅茶どっちが良い?あとリンゴジュースもあるよ」
「えっと、じゃあお水で」
奈々の返事に理一郎は笑顔で頷き、携帯をいじり出した。
「あ、えと、り、理一郎さん?」
「はい、奈々さんなんですか?あ、苗字も一応良い?」
「え……?」
苗字をどうして聞かれるのか。怪しすぎて、初音を抱っこ紐の上から抱きしめた。
ごくり、と自分の喉が鳴ったのが分かる。
「しつれいしやーっす」
緊張する中、入って来たのはザ・ギャルという風貌の女の人だ。ただ、子供に大人気のキャラクターのエプロンをしている。先程とは違う緊張感に包まれる。だってギャルは少し苦手だから。
「あ?渡辺さんだよね。お水置いておくねー。リイチローはアイスコーヒーね」
「ありがとうー。後でまたそっちも見に行くね」
「おっけおっけー。……って渡辺さん固まってない?」
目の前でふりふりと手を振られる。薄着のギャルの胸元につい目がいくが、そこにはひらがなで『るみか』と名札が付いていた。名前の周りには手書きのアニメキャラクターがたくさん描かれている。
「あ……!これってピクキュア?」
【ピクセルキュアラー】略してピクキュアは、奈々が子供の頃に流行った女児アニメだ。ちなみに今も続いているが、元祖のみピクキュアと呼ばれている。
「え?!ピクキュア世代?RGB派?CMYK派?」
懐かしい単語に心が躍る。
「RGB……!」
るみかの胸元にはRGBの人気キャラが描かれていた。これは外していない答えだろう。
「やっぱり王道はそっちだよねー!ちなみに私は第三勢力のドット派!」
「ええー?!選択肢に無かったのに?」
「人生ってそういうものだからさー。ほら、リイチローに説明聞いて、後でお試し保育に預けにおいでよ」
小麦色の肌から白い歯を見せてカラッと笑うと、るみかは談話室を出ていってしまった。
「――元気な人でしょ?うちの保育士のるみかさん」
「ほ、保育士?!ってうちのって?」
「あれ?……あ、そっか、外から一緒に来たから言うの忘れてた。ここ俺の園。申し遅れました、柴田理一郎です。理一郎の理は理事長の理って事でよろしく」
理一郎は名刺を差し出した。確かにももの園理事長の肩書がそこには書かれている。
「ええー?!」
今までの驚きが全て口から出た奈々の声に、初音が起きて鳴いてしまった。談話室には親子の声が響いた。
「何それ、ナンパですか?」
「違う違う、お母さんには笑っててほしいってだけ……はい、つきましたよココでーす」
到着したのは、雑居ビルの前だった。テナントの看板の二階と三階にももの保育園の表示があった。
「あー……」
奈々は一階を見て眉を寄せた。事前情報として調べて知っていたが、一階は無料案内所だったからだ。チラリと案内所の中を見ると、奥の方に仏頂面の大柄な男が接客をしていた。
緊急で預けられるところを探したらココしかなかったとはいえ、奈々の常識からするとかなり外れた場所にももの保育園はあった。
「保育園行く人はね、裏にエレベーターあるから安心してね。見えないようになってるから」
荷物を持った理一郎が裏手に回ると、確かにエレベーターがあった。周りも、到着したエレベータの中も保育園らしい装飾がされている。
「なんだか、一階との差がすごいところですね」
「そうだよねぇ。なかなかハードル高めだよねーだけど、このあたりで働くお母さん達からは預けやすいって意見もあるから移転も難しいんだよねー」
「そうなんですねーあ、ありがとうございます。ここまで荷物持ってもらって」
エレベーターが二階に到着した。荷物を貰おうと手を出す。
「良いの良いの、こんなのお安い御用だから」
理一郎はまだ返してくれない。
「もう着いたので」
と言っても「いーのいーの」と笑って、保育園の受付をすり抜けた。
「ほら、こっちに談話室あるから。ここに荷物置いとくね」
「し、しつれいしまーす……?」
談話室と言われた部屋には、木目調の壁紙が貼られていて、ふわふわの椅子が置いてあった。その横にはベビーチェアとベビーベッドが置かれ、荷物おきの大きな籠もあった。
「お茶かお水かコーヒーか紅茶どっちが良い?あとリンゴジュースもあるよ」
「えっと、じゃあお水で」
奈々の返事に理一郎は笑顔で頷き、携帯をいじり出した。
「あ、えと、り、理一郎さん?」
「はい、奈々さんなんですか?あ、苗字も一応良い?」
「え……?」
苗字をどうして聞かれるのか。怪しすぎて、初音を抱っこ紐の上から抱きしめた。
ごくり、と自分の喉が鳴ったのが分かる。
「しつれいしやーっす」
緊張する中、入って来たのはザ・ギャルという風貌の女の人だ。ただ、子供に大人気のキャラクターのエプロンをしている。先程とは違う緊張感に包まれる。だってギャルは少し苦手だから。
「あ?渡辺さんだよね。お水置いておくねー。リイチローはアイスコーヒーね」
「ありがとうー。後でまたそっちも見に行くね」
「おっけおっけー。……って渡辺さん固まってない?」
目の前でふりふりと手を振られる。薄着のギャルの胸元につい目がいくが、そこにはひらがなで『るみか』と名札が付いていた。名前の周りには手書きのアニメキャラクターがたくさん描かれている。
「あ……!これってピクキュア?」
【ピクセルキュアラー】略してピクキュアは、奈々が子供の頃に流行った女児アニメだ。ちなみに今も続いているが、元祖のみピクキュアと呼ばれている。
「え?!ピクキュア世代?RGB派?CMYK派?」
懐かしい単語に心が躍る。
「RGB……!」
るみかの胸元にはRGBの人気キャラが描かれていた。これは外していない答えだろう。
「やっぱり王道はそっちだよねー!ちなみに私は第三勢力のドット派!」
「ええー?!選択肢に無かったのに?」
「人生ってそういうものだからさー。ほら、リイチローに説明聞いて、後でお試し保育に預けにおいでよ」
小麦色の肌から白い歯を見せてカラッと笑うと、るみかは談話室を出ていってしまった。
「――元気な人でしょ?うちの保育士のるみかさん」
「ほ、保育士?!ってうちのって?」
「あれ?……あ、そっか、外から一緒に来たから言うの忘れてた。ここ俺の園。申し遅れました、柴田理一郎です。理一郎の理は理事長の理って事でよろしく」
理一郎は名刺を差し出した。確かにももの園理事長の肩書がそこには書かれている。
「ええー?!」
今までの驚きが全て口から出た奈々の声に、初音が起きて鳴いてしまった。談話室には親子の声が響いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる