ふしぎな繁華街のふしぎな保育園のふしぎな男

花田トギ

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八岐大蛇と酒呑童子

八岐大蛇と酒呑童子4

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「――っていうのがももの園の特徴かな。何か質問はありますか奈々さん?」
 初音の泣き声を聞きつけて、るみかが入ってきてあやしてくれた。その間に、ももの園の説明を受けたのだが、正直話があまり入ってこない。
「質問……?いーっぱいありますけど?!」
「オッケー、一つずつどうぞ?」
 腕をゲンドウポーズにして、優しく理一郎は頷いた。
「まず、おいくつですか?」
「まずそれなの?!」
 カッコつけていた肘が崩れ、部屋の隅でるみかがクスクス笑っている。
「リイチローほんと若く見えるよね。でもその人三十超えてるよー」
「ええ?!」
 肌艶を見ても若く見えるのだが……こうなると聞きたいのは美容法だけれど、それを聞くとまた突っ込まれる気がする。
「あ、あとどうして無認可保育園なのにこんなに安くていいんですか?」
 無認可保育園だと、認可保育園よりも高額になるのが普通だ。だから皆認可された園に入りたいし、認可されるには色々とクリアしなくてはならない規定があるはずだ。例えば保育士の数や、子供の安全性等。
「安かろう悪かろうで心配って事かな?そのあたりは実際の園を見て貰えば分かると思うよ。るみかさん、このままお願いしていい?俺ちょっと下行ってくるから」
「はーい。じゃあ、初音ちゃんはあーしが抱っこしていきますねー」
 るみかに連れられて、奈々は保育ルームへ移動しながらも頭の中は混乱していた。混乱しながらも、園内の清潔さや、展示物をしっかりチェックして歩いた。
「実際の保育の事聞きたいよねー。実務はリイチローよりるみかの方が詳しいからなんでも聞いてね」
 とは言っても、偏見はもちたくないがギャルに保育が出来のだろうか。爪だってきっと長くてキラキラしているだろうし、赤ん坊には危険ではないのだろうか。と、るみかの爪を見る。
「あ……爪、短いんですね」
「もちろん、ネイルはするけど短くしてるよー。あーし爪薄いからジェルしてた方が子供も痛くない気がすんだよね」
「なるほど……」
 るみかが小さな扉の前で足を止めた。
「はい、到着。こちらが初音ちゃんが入る、乳児ルームだよ」
 歩ける幼児とはいはいの乳児は完全に部屋が分けられているようだ。優しい曲線のものしか置いていない乳児ルームは、赤ちゃんにピッタリなものに思われた。意外と広いスペースで黒髪の保育士さんが赤ん坊をあやしている。皆がギャルというわけでは無くて、少し安心した。
「そだそだ、心配してるだろうから伝えるけど、保育士の数なんだけど、国の規定保育士数より多い人数で見てるからね」
「……じゃあ余計に人件費かかりません?」
「だって保育園は赤字だもん」
 そんな事まで言ってもいいのだろうか。るみかのあっけらかんとした物言いには驚かされる。
「じゃあどうして?」
「リイチローのポケットマネー。――あいつあんな見た目だけど、ホントいいやつなんだよ。困ってるお母さんと子供の力になりたいんだって。あいつ自身もなんか家の事情で苦労したみたいだし、私情もあるのかも……ってしゃべりすぎたわ、今のはナシで」
 一応るみかにもしゃべりすぎの自覚があるらしい。それが面白くて、思わず口元が緩む。
「るみかさん、理一郎さんの事好きなの?」
「え?!いやぁ……好きか嫌いかだとまあ嫌いじゃないけど、そういう目では見れないっていうか。てかさ、今の派手髪になるリイチローマジでイケてるから今度写真見せてあげるね。美青年ってか美少年ってか、美少女みたいだから」
 ケラケラと明るく笑うるみかにつられて、初音もきゃあきゃあと笑い声を上げた。
「あ、初音ちゃんいい子でちゅねぇ。楽しいの伝わったんだねえ」
 思えば、奈々の声で泣いて起きた初音を抱っこしてすぐにあやしてくれたのもるみかだ。その後もずっと抱っこをしていて、それで初音はぐずらなかった。ほぼ初めて他人に抱っこされたというのに。
 この事実は、奈々がるみかを信用するに値すると思われた。
「……このまま、今日、お試し保育お願いしてもいいですか?」
「もっちろん!後で書類だけ書いてもらうね。――どっか行くの?カフェとか美容院とか?」
 お試し保育の時間は二時間だ。その間に出来る事は限られている。るみかのいう通り、カフェや美容院で束の間の息抜きをする人もいるのだろう。だってここは歓楽街。お店はたくさんあった。
「あ……えっと、ちょっと人に会うんです」
「ふーん……。楽しんできてね。初音ちゃんと待ってるからさ」
 あいまいに微笑んで、奈々は保育園を後にした。
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