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八岐大蛇と酒呑童子
八岐大蛇と酒呑童子8
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「――じゃあ要約すると、蛇を貰ってきてからコウイチさんがお酒を飲むようになった。奈々サンが結婚して渡辺奈々になり、初音ちゃんが生まれたと――で合ってる?」
奈々が今日までの顛末を脈絡なく愚痴混じりで話すのを、理一郎はただただ聞いてくれていた。その間初音はテツがあやしてくれている。強面だと思っていたが、赤ん坊を前にするととても優しい顔をするものだと驚いた。
「ちょっと違います。私はもともと渡辺で、綱一が結婚して渡辺になりました」
綱一は女性が性を変える事が多かった分、これからは男も同数変えるようになった方が良い気がするという理由で自分で姓を変える事を望んでくれた。
「なるほど、じゃあ婿養子と勘違いされたのかもしれないな……ちなみにコウイチさんってどんな漢字書くの?」
「綱引きの綱に、数字の一ですけど……?」
「ん-ん。なるほどぉ。渡辺綱一になったって事ね。それはそれは……そして急に酒飲み……もしかして、結婚してから綱一さんって腕に怪我とかしてない?」
「え?!どうしてわかるんですか?!もしかして占い師とかもしてるんですか?!」
案内所、保育園と経営しているのだから、ここで占い師が足されても不思議ではない気がする。
「いやいや、そういうわけじゃあ無いんだけど。あの、ちょっと変な話するんだけどとりあえず聞いてくれる?」
「はあ……?まあ、聞きますけど」
これまで奈々の話をしっかり聞いてくれた理一郎の話だ。聞かないわけにはいかないだろう。
「奈々さんって、妖怪とか、神様とかそういうの信じるタイプ?」
「ええ?!」
驚きながら笑ってしまった。緊張した面持ちで、理一郎の発した言葉が余りにも突飛に思えたからだ。
「笑っちゃうよねぇ。――ちなみに俺は信じてるんだ」
笑ってしまった事を後悔した。それほどに真面目な理一郎の声に委縮する。
「ごめんごめん、怒ってるわけじゃなくてね。この世界は色んなモノが複雑に絡み合って出来ていると思うんだよね。それで、色んなパズルのピースがハマると、思いもよらない偶然が引き起こされる。その偶然の正体の一つがいわゆる妖怪とか神様の悪戯だったりする事もある――って話」
「それが、私とどういう関係があるんですか?」
「すごーく昔、酒呑童子って名前の鬼がいたんだよね」
「鬼?桃太郎の鬼みたいなあの鬼ですか?」
初音に読んであげようと、絵本を数冊購入していた。その中の一冊に桃太郎はあった。久しぶりに読むと、お話しの最後が現代風にアレンジされていて、優しい話になっていたのには驚いた。
「そんな感じ。酒呑っていうくらいだからお酒が好きなんだよね。そんな事から八岐大蛇の子孫って話もあるんだ」
「やまたのおろち……?あ、やまたっていうのに頭が八で又は七個しかないあのでかい蛇!」
「若いのによく知ってるねえ、でも八岐大蛇の八岐は八個に別れてるって意味のなんだよね。だから八個の頭って意味になるから、間違ってはいないんだよ。今のところね」
「はあ……なるほど」
一生使えそうにない雑学を得てしまった。
「それでね、酒呑童子は悪さをするんだけど……それを成敗した人の一人が渡辺綱なんだよね。渡辺に綱引きの綱で、ツナ」
何が言いたいのかわかるような気がした。
「そのツナって人が腕怪我したんですか?」
「ん-と、それは少し違くてね。酒呑童子の手下の茨木童子っていう強い鬼がいたんだけど、綱はそいつの腕を切って持って帰るんだ」
「じゃあ、綱一が腕を怪我するのっておかしくないですか?」
理一郎は苦笑いして、お茶をすすった。前に飲ませてもらった、少し変わった味のお茶だ。
「そう、全く同じになるとは限らない。だって残っているのは思いや記憶――怖い言い方すると、怨念だけだから。それがパズルのピースみたいに埋まってくる。渡辺綱という字、蛇、酒、腕の怪我。こういうばらばらのピースが集まって一つの妖怪が体現してくる。――それを、俺は防ぎたい」
にわかには信じられない話に、眉を寄せた。
「そして、奈々サンが出産した事も影響している」
「――へ?」
「古来、出産は異界と繋がる行為だったから」
「はい?」
「まあこの辺はややこしいから後々として、話を聞く限りランクは狐だから何とかなる気がする。ようはパズルのピースを組み換えれば良いってワケ。一つは渡辺綱一を渡辺じゃなくす事。もう一つは、蛇をなんとかする事かな。多分その蛇に妖の力があると思うんだよねー」
「ど、どうしてそう思うんですか?」
「多分、見た方が早い。危ないから初音さんは保育園に預けていこうか」
「今からですか?!」
「うん。――って言っても、奈々サンの足を洗って靴を買ってからね」
裸足で歩いたせいで薄汚れた足裏が恥ずかしくて、奈々は下をむいた。
奈々が今日までの顛末を脈絡なく愚痴混じりで話すのを、理一郎はただただ聞いてくれていた。その間初音はテツがあやしてくれている。強面だと思っていたが、赤ん坊を前にするととても優しい顔をするものだと驚いた。
「ちょっと違います。私はもともと渡辺で、綱一が結婚して渡辺になりました」
綱一は女性が性を変える事が多かった分、これからは男も同数変えるようになった方が良い気がするという理由で自分で姓を変える事を望んでくれた。
「なるほど、じゃあ婿養子と勘違いされたのかもしれないな……ちなみにコウイチさんってどんな漢字書くの?」
「綱引きの綱に、数字の一ですけど……?」
「ん-ん。なるほどぉ。渡辺綱一になったって事ね。それはそれは……そして急に酒飲み……もしかして、結婚してから綱一さんって腕に怪我とかしてない?」
「え?!どうしてわかるんですか?!もしかして占い師とかもしてるんですか?!」
案内所、保育園と経営しているのだから、ここで占い師が足されても不思議ではない気がする。
「いやいや、そういうわけじゃあ無いんだけど。あの、ちょっと変な話するんだけどとりあえず聞いてくれる?」
「はあ……?まあ、聞きますけど」
これまで奈々の話をしっかり聞いてくれた理一郎の話だ。聞かないわけにはいかないだろう。
「奈々さんって、妖怪とか、神様とかそういうの信じるタイプ?」
「ええ?!」
驚きながら笑ってしまった。緊張した面持ちで、理一郎の発した言葉が余りにも突飛に思えたからだ。
「笑っちゃうよねぇ。――ちなみに俺は信じてるんだ」
笑ってしまった事を後悔した。それほどに真面目な理一郎の声に委縮する。
「ごめんごめん、怒ってるわけじゃなくてね。この世界は色んなモノが複雑に絡み合って出来ていると思うんだよね。それで、色んなパズルのピースがハマると、思いもよらない偶然が引き起こされる。その偶然の正体の一つがいわゆる妖怪とか神様の悪戯だったりする事もある――って話」
「それが、私とどういう関係があるんですか?」
「すごーく昔、酒呑童子って名前の鬼がいたんだよね」
「鬼?桃太郎の鬼みたいなあの鬼ですか?」
初音に読んであげようと、絵本を数冊購入していた。その中の一冊に桃太郎はあった。久しぶりに読むと、お話しの最後が現代風にアレンジされていて、優しい話になっていたのには驚いた。
「そんな感じ。酒呑っていうくらいだからお酒が好きなんだよね。そんな事から八岐大蛇の子孫って話もあるんだ」
「やまたのおろち……?あ、やまたっていうのに頭が八で又は七個しかないあのでかい蛇!」
「若いのによく知ってるねえ、でも八岐大蛇の八岐は八個に別れてるって意味のなんだよね。だから八個の頭って意味になるから、間違ってはいないんだよ。今のところね」
「はあ……なるほど」
一生使えそうにない雑学を得てしまった。
「それでね、酒呑童子は悪さをするんだけど……それを成敗した人の一人が渡辺綱なんだよね。渡辺に綱引きの綱で、ツナ」
何が言いたいのかわかるような気がした。
「そのツナって人が腕怪我したんですか?」
「ん-と、それは少し違くてね。酒呑童子の手下の茨木童子っていう強い鬼がいたんだけど、綱はそいつの腕を切って持って帰るんだ」
「じゃあ、綱一が腕を怪我するのっておかしくないですか?」
理一郎は苦笑いして、お茶をすすった。前に飲ませてもらった、少し変わった味のお茶だ。
「そう、全く同じになるとは限らない。だって残っているのは思いや記憶――怖い言い方すると、怨念だけだから。それがパズルのピースみたいに埋まってくる。渡辺綱という字、蛇、酒、腕の怪我。こういうばらばらのピースが集まって一つの妖怪が体現してくる。――それを、俺は防ぎたい」
にわかには信じられない話に、眉を寄せた。
「そして、奈々サンが出産した事も影響している」
「――へ?」
「古来、出産は異界と繋がる行為だったから」
「はい?」
「まあこの辺はややこしいから後々として、話を聞く限りランクは狐だから何とかなる気がする。ようはパズルのピースを組み換えれば良いってワケ。一つは渡辺綱一を渡辺じゃなくす事。もう一つは、蛇をなんとかする事かな。多分その蛇に妖の力があると思うんだよねー」
「ど、どうしてそう思うんですか?」
「多分、見た方が早い。危ないから初音さんは保育園に預けていこうか」
「今からですか?!」
「うん。――って言っても、奈々サンの足を洗って靴を買ってからね」
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