11 / 11
八岐大蛇と酒呑童子
八岐大蛇と酒呑童子11
しおりを挟む
「というわけで、綱一は今就職が決まりました!」
談話室で初音を抱きながら嬉しそうに語るのは、生き生きとした表情の奈々だ。
「よかったよかった。じゃあ、来年度の認可保育園が決まるまではここに通うって事だね、多分来年度は家の近所の園が受かると思うよー」
「ほんとに理一郎さんには感謝してもしきれません!……それで、あの、蛇なんですけど、私も愛着沸いてきちゃって……」
「ふふふ、だろうねぇ。大丈夫、時々でいいから菖蒲湯で沐浴させてあげたり、綱一さんが菖蒲湯飲んだり、そういう事を続けていればもう悪い作用は無いはずだよ」
「よかったー!私も仕事先決まったし、この保育園に来てから良い事ばっかりです!」
「うんうん。初音ちゃん今日もしっかりお預かりします」
談話室をウキウキで退出した奈々は、ガラス窓越しに保育園の中を覗いた。働いているるみかと目が合って、ひらひらと手を降ってくれた。
弾んだ気持ちで一階まで降りていくと、テツと出くわした。
「あ……先日はお世話になりました」
「今日は仕事ですか?昼職?」
お礼の返事もない。せっかちな男だ。
「働く時間は遅いんですけど、一応そうです」
「……ええか、理一郎さんはええ人やから自分が言うといたるわ。皆が言う神様とか妖怪とか、そういう物の怪の類ってほんまにおんねん。それはアンタもよー分かってるやろ?」
「あ、はい……」
気圧されて、一歩下がる。背中には理一郎のビルの壁だ。
「そういうんと女性は切っては切れへんねん。女の人にはあっちと通じる虚があるからや。――ええか、特に夜があかんねん。あんたは一回影響されとるから余計にや。夜に近づくのは生半可な覚悟じゃあかんで。夜を手懐ける覚悟のあるやつしか夜職はしたらあかんねん。理一郎さんが全員救えるわけちゃうからな」
「は、はいっ!」
「わかったらええわ。よーきばりやー」
理一郎に聞いたところテツは大学生らしい。確実に年下なのに、威圧されてしまった。
「ありがとうございます!」
やっと解放された奈々は、抜けるような太陽の下を歩き出した。そんな奈々の前を猫が通った。
「あれ?あの時の猫ちゃん?」
野良猫だと思っていたが、よく見たら首輪をしている。誰かに変われているのか、地域猫なのか分からないが、ごろにゃんと奈々の足元に近づいてきた。
しゃがみ、喉の辺りを撫でてあげるとごろごろと嬉しそうに鳴いた。
「ふふ、可愛い」
ひとしきり撫でると、満足したのか猫は去っていく。奈々は、その猫をどこか神々しいものを見るような気持ちで見送ったのだった。
・
猫の鳴き声が聞こえ、理一郎は窓を開けた。
「またですか」
『人の欲があつまる町だから仕方が無かろう。三番路地に女人かいる。見ればわかろう。今回は狐だったが、次は鬼かもしれぬぞ』
「ランク狐というか最早ランク物の怪だったから楽だったのに……鬼だったらテツにも頑張って貰わないといけないからまたお手当ださなとなぁ」
『あの安部の名の子を良く育てよ』
「はーいはい。てか、俺ばっかじゃない?」
『声が聞けるのは柴田の姓と相場が決まっておるのじゃ』
「……結婚して改姓しちゃおうかな」
『嘘はよろしくないぞ、若者』
「もう人間的には若者でもないけどねぇ」
猫は伸びをすると、またどこかへと消えてしまう。理一郎は上着を羽織り、今日はパープルのサングラスをかけると三番路地へと向かったのだった。
談話室で初音を抱きながら嬉しそうに語るのは、生き生きとした表情の奈々だ。
「よかったよかった。じゃあ、来年度の認可保育園が決まるまではここに通うって事だね、多分来年度は家の近所の園が受かると思うよー」
「ほんとに理一郎さんには感謝してもしきれません!……それで、あの、蛇なんですけど、私も愛着沸いてきちゃって……」
「ふふふ、だろうねぇ。大丈夫、時々でいいから菖蒲湯で沐浴させてあげたり、綱一さんが菖蒲湯飲んだり、そういう事を続けていればもう悪い作用は無いはずだよ」
「よかったー!私も仕事先決まったし、この保育園に来てから良い事ばっかりです!」
「うんうん。初音ちゃん今日もしっかりお預かりします」
談話室をウキウキで退出した奈々は、ガラス窓越しに保育園の中を覗いた。働いているるみかと目が合って、ひらひらと手を降ってくれた。
弾んだ気持ちで一階まで降りていくと、テツと出くわした。
「あ……先日はお世話になりました」
「今日は仕事ですか?昼職?」
お礼の返事もない。せっかちな男だ。
「働く時間は遅いんですけど、一応そうです」
「……ええか、理一郎さんはええ人やから自分が言うといたるわ。皆が言う神様とか妖怪とか、そういう物の怪の類ってほんまにおんねん。それはアンタもよー分かってるやろ?」
「あ、はい……」
気圧されて、一歩下がる。背中には理一郎のビルの壁だ。
「そういうんと女性は切っては切れへんねん。女の人にはあっちと通じる虚があるからや。――ええか、特に夜があかんねん。あんたは一回影響されとるから余計にや。夜に近づくのは生半可な覚悟じゃあかんで。夜を手懐ける覚悟のあるやつしか夜職はしたらあかんねん。理一郎さんが全員救えるわけちゃうからな」
「は、はいっ!」
「わかったらええわ。よーきばりやー」
理一郎に聞いたところテツは大学生らしい。確実に年下なのに、威圧されてしまった。
「ありがとうございます!」
やっと解放された奈々は、抜けるような太陽の下を歩き出した。そんな奈々の前を猫が通った。
「あれ?あの時の猫ちゃん?」
野良猫だと思っていたが、よく見たら首輪をしている。誰かに変われているのか、地域猫なのか分からないが、ごろにゃんと奈々の足元に近づいてきた。
しゃがみ、喉の辺りを撫でてあげるとごろごろと嬉しそうに鳴いた。
「ふふ、可愛い」
ひとしきり撫でると、満足したのか猫は去っていく。奈々は、その猫をどこか神々しいものを見るような気持ちで見送ったのだった。
・
猫の鳴き声が聞こえ、理一郎は窓を開けた。
「またですか」
『人の欲があつまる町だから仕方が無かろう。三番路地に女人かいる。見ればわかろう。今回は狐だったが、次は鬼かもしれぬぞ』
「ランク狐というか最早ランク物の怪だったから楽だったのに……鬼だったらテツにも頑張って貰わないといけないからまたお手当ださなとなぁ」
『あの安部の名の子を良く育てよ』
「はーいはい。てか、俺ばっかじゃない?」
『声が聞けるのは柴田の姓と相場が決まっておるのじゃ』
「……結婚して改姓しちゃおうかな」
『嘘はよろしくないぞ、若者』
「もう人間的には若者でもないけどねぇ」
猫は伸びをすると、またどこかへと消えてしまう。理一郎は上着を羽織り、今日はパープルのサングラスをかけると三番路地へと向かったのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる