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告げられる合否
ザックスの提案
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ザックスはアデリアより三つ年上で、家族以外では唯一『アディ』と愛称で呼ぶ兄のような存在だ。
お釣りのちょろまかし方や、安くものを仕入れて高く売りつける方法等を熟知し、兵士にも知り合いが多いザックスはアデリアからすると頼れるもう一人の家族でもあった。
「なあアディ。楽な仕事があるんだが?」
木製のカップに入ったスープを飲み切ったところで、ザックスから仕事の提案をされた。
「それってさっきのオジサンが言ってた仕事と同じ?」
「んなわけあるか!二時間程度でちょっと質問に答えていれば足代と菓子が貰えるらしい」
「お菓子?!」
アデリアは甘いものが大好物だ。まだ小さい時、母親は休みのたびに甘いお菓子を作ってくれていた。最近はアデリアにだけ作ってくれないけれど。
「ああ、それも上品な菓子だ。俺たちじゃあ滅多に買えないような。それもっておばさんに謝りにいけよ。家族は大切にするべきだ」
「え……ザックス天才!」
弟も妹も、母親だって甘いものは大好きだ。そしてアデリアは楽に生きたいが家族の事はアデリアなりに愛していた。
「だろう?」
「それってどこに行けばいいの?」
ふっふっふ、ともったいぶったザックスは、アデリアの耳元でこのあたりの人間なら一度は聞いたことのある名を口にした。
「聞いて驚け、ラスール伯爵の家だ」
「――え?!ラスールってあの?あの冷血人間ラスール?!」
「こらこら、声が大きい。そうだ、あのラスールだ」
ラスール家は由緒ある伯爵家だ。ただ、当主であるラスール伯爵は冷血漢で有名だった。
「冷血漢の伯爵に嫌気がさして、メイド達がどんどん辞めてしまうらしい。だから今度伯爵の身の回り専門のメイドを雇うんだと」
「え?でもそれってもし私が受かったらどうするの?」
きょとんと目を丸くしたアデリアにザックスは豪快な笑い声を浴びせた。
「アディ、安心しろ。腐っても伯爵家、応募してくるのは良家の女ばかりだ!平民のお前がうかるわけないだろ!」
「うっ……なんかちょっとムカつくんですけどぉ……」
「良いんだよアディはそのままで。菓子とちょっと金貰って、おばさんと仲直りしてまたオレと遊ぶんだよ」
ぷぅ、と頬を膨らませたアデリアの頭を雑に撫でた。アデリアの絹糸のような髪がザックスの無骨な指に絡む。
「まあいっか。お菓子とお金貰えるんだよね。……行っても良いけどこの恰好で良いの?」
裾が擦り切れたスカートの裾をちらりと持ち上げる。着たおした洋服は、ところどころ汚れもついていた。
「安心しろ、必要な物はオレが手配してやる。アディは追い返されないように丁寧な言葉使いをするだけで良いからさ」
「ザックスがそういうなら……」
「ま、もし追い返されたら……」
「されたら?」
「オレ様がアディと結婚して、おばさんを安心させてやるから大丈夫だ」
「もう!適当なんだから!」
ジョッキに入っていたエールを飲み干したザックスの顔は、アルコールで赤くなっている。ザックスは酒が入るといつもこの手のジョークを言っていて、アデリアはその度に舌を出して怒っていた。
お釣りのちょろまかし方や、安くものを仕入れて高く売りつける方法等を熟知し、兵士にも知り合いが多いザックスはアデリアからすると頼れるもう一人の家族でもあった。
「なあアディ。楽な仕事があるんだが?」
木製のカップに入ったスープを飲み切ったところで、ザックスから仕事の提案をされた。
「それってさっきのオジサンが言ってた仕事と同じ?」
「んなわけあるか!二時間程度でちょっと質問に答えていれば足代と菓子が貰えるらしい」
「お菓子?!」
アデリアは甘いものが大好物だ。まだ小さい時、母親は休みのたびに甘いお菓子を作ってくれていた。最近はアデリアにだけ作ってくれないけれど。
「ああ、それも上品な菓子だ。俺たちじゃあ滅多に買えないような。それもっておばさんに謝りにいけよ。家族は大切にするべきだ」
「え……ザックス天才!」
弟も妹も、母親だって甘いものは大好きだ。そしてアデリアは楽に生きたいが家族の事はアデリアなりに愛していた。
「だろう?」
「それってどこに行けばいいの?」
ふっふっふ、ともったいぶったザックスは、アデリアの耳元でこのあたりの人間なら一度は聞いたことのある名を口にした。
「聞いて驚け、ラスール伯爵の家だ」
「――え?!ラスールってあの?あの冷血人間ラスール?!」
「こらこら、声が大きい。そうだ、あのラスールだ」
ラスール家は由緒ある伯爵家だ。ただ、当主であるラスール伯爵は冷血漢で有名だった。
「冷血漢の伯爵に嫌気がさして、メイド達がどんどん辞めてしまうらしい。だから今度伯爵の身の回り専門のメイドを雇うんだと」
「え?でもそれってもし私が受かったらどうするの?」
きょとんと目を丸くしたアデリアにザックスは豪快な笑い声を浴びせた。
「アディ、安心しろ。腐っても伯爵家、応募してくるのは良家の女ばかりだ!平民のお前がうかるわけないだろ!」
「うっ……なんかちょっとムカつくんですけどぉ……」
「良いんだよアディはそのままで。菓子とちょっと金貰って、おばさんと仲直りしてまたオレと遊ぶんだよ」
ぷぅ、と頬を膨らませたアデリアの頭を雑に撫でた。アデリアの絹糸のような髪がザックスの無骨な指に絡む。
「まあいっか。お菓子とお金貰えるんだよね。……行っても良いけどこの恰好で良いの?」
裾が擦り切れたスカートの裾をちらりと持ち上げる。着たおした洋服は、ところどころ汚れもついていた。
「安心しろ、必要な物はオレが手配してやる。アディは追い返されないように丁寧な言葉使いをするだけで良いからさ」
「ザックスがそういうなら……」
「ま、もし追い返されたら……」
「されたら?」
「オレ様がアディと結婚して、おばさんを安心させてやるから大丈夫だ」
「もう!適当なんだから!」
ジョッキに入っていたエールを飲み干したザックスの顔は、アルコールで赤くなっている。ザックスは酒が入るといつもこの手のジョークを言っていて、アデリアはその度に舌を出して怒っていた。
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