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覚えたうた

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【遠い遠い白の国、昔昔アクバイ、全部白い国。そこには全てが手に入る。たくさんの宝石、栄養のある食べ物、美しい女。遠い遠い白の国、昔昔、アクバイ、見つけたら全て手に入る】



【砂の砂の真ん中、緑緑続く道、極彩色の花々。おそれず踏み出せ、穴の中。目を閉じるな、二度と開かぬぞ、目を開け。百数えたら手を伸ばせ、掴め掴め、離すな、立ったそこが白の国】



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 初めて恋した人を、今でも鮮やかに覚えている。

 タシュが五歳の時に一目ぼれしたのは、旅芸人一座の踊り子だった。白い肌、金糸のような髪をなびかせて躍る美しい彼女を見て、胸が高鳴った。

 タシュは彼女の踊りを見るために、興行に通い詰めた。

 町の大店の次男坊であったタシュは、責任は無いが金だけはそこらの子よりもあった。特に今まで使う事もなかった金を、彼女に貢いだ。

 可愛いパトロンの存在は一座にも歓迎され、幌の中で彼女と二人で話をする事を許された。美しい彼女はアイムといった。異国の名前は恋慕を募らせた。

 彼女はタシュが来るとヤギのミルクを温めて振る舞ってくれた。夜が寒いこの街で、ジンジャーとはちみつをいれたミルクはタシュの体だけでなく、心も温めた。

 アイムはタシュに語ったのは、白の国と呼ばれる御伽噺だった。



『昔昔あるところに、アクバイという国がありました。建物も、民の服も肌も白く、その国は白の国と呼ばれていました。白の国には、たくさんの宝石と、金がありました。たくさんの美しい女がいて、その国を見つけた男は全てを手に入れる事が出来るのです』

 

 アイムが語った寝物語、アイムが歌った白の国の歌を何度も何度も口の中で紡ぎ、タシュはタシュの国の成人年齢である18になった。
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