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正しい事
女装脱出大作戦
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「な、誰だ?!」
「しーっ!」
「な!?タシュ?!お前無事だったのか」
エベツを閉じたドアに押さえつけ、タシュは指を立てて唇に添えた。
「――タシュ?!その恰好は……」
窓辺に寝そべっていたトゥフタが立ち上がり、タシュの方へと歩を進める。最初はゆっくりと、最後は駆け寄るように。
「トゥフタ……ちょっと痩せたんじゃないか?」
「無事で、良かった」
胸元へ飛びこんだトゥフタを、タシュは両腕でしっかりと抱きしめた。
「心配かけてすまない」
「良いんだ、お前が無事なら」
いい雰囲気の二人の間に、エベツの咳払いが割って入る。
「すまない。タシュ、今の状況を教えてくれないか」
「ああ、そうだそうだ。実はあまり時間が無いんだ。二人共、協力してくれないか?」
タシュの計画を手短にだが一通り聞いた二人は、トゥフタをここから連れ去る提案に目を丸くし、俯いた。
「だが、まず一つ確認しなけらばならない。トゥフタはここから逃げたいか?――俺と、生きたいか?」
「生きたい。ここを出て、お前と生きたい」
タシュの問いかけに、弾かれたように返事をしたトゥフタを、エベツは苦しそうに見つめる。
「ああ、ここから出よう。そして俺と生きよう。大丈夫だ。俺はもちろん、スドゥルもウユチュ様も、エベツさんだって協力してくれる。外に出てもなんとかなるよ」
「ああ、そうだ。ここ以外に本当に行く事が叶うなんて」
順調に話が進む中、エベツが歪めた口をやっと開いた。
「申し訳ないが、私は行かない」
否定の言葉に、二人はエベツを見つめる。その表情は、とても辛そうだった。
「どうしてだ?」
「国内での脱出には手を貸せるだけ貸す。だが、私は王付きの女官。そして女官長でもある。王が居なくなった後の国民をほっておけない」
「エベツお前にも来て欲しい」
トゥフタの言葉に、エベツは唇を食いしばる。
「――この国を出た後のトゥフタ様は、王ではありません。私が仕える理由がありません」
「そんな、エベツさんだってトゥフタを逃がしたいって思ってたじゃないか!」
「もちろん思っていた。だから、いつかこうなるかもしれないと覚悟はしていた!それは、私が国に残るという覚悟だ!」
「エベツ……私はお前がいないと、寂しい」
「――そのお言葉が聞けただけで、私は幸福です」
トゥフタが伸ばした右手を、エベツは片膝を付いて手に取り、頬に当てた。
「今まで仕えさせて頂いて感謝致します。タシュ、トゥフタ様を頼むぞ」
そう言ったエベツの目には、うすく涙が溜まっているように見えたが、タシュは指摘を避けた。多分、タシュには知られたくない涙なのだろうと感じたから。
「もちろんだ。俺が責任持って守るよ」
「その言葉信じたぞ。――さあ、時間が無い。まずはどうやってここを抜け出す?あの騒ぎはどれくらい続く?」
扉の前から衛兵がいなくなったのは、どうやら奥の方で騒ぎがあったかららしい。タシュの話ではそれはスドゥルとウユチュが起しているらしいが、そんなに長続きしないだろう。
「しーっ!」
「な!?タシュ?!お前無事だったのか」
エベツを閉じたドアに押さえつけ、タシュは指を立てて唇に添えた。
「――タシュ?!その恰好は……」
窓辺に寝そべっていたトゥフタが立ち上がり、タシュの方へと歩を進める。最初はゆっくりと、最後は駆け寄るように。
「トゥフタ……ちょっと痩せたんじゃないか?」
「無事で、良かった」
胸元へ飛びこんだトゥフタを、タシュは両腕でしっかりと抱きしめた。
「心配かけてすまない」
「良いんだ、お前が無事なら」
いい雰囲気の二人の間に、エベツの咳払いが割って入る。
「すまない。タシュ、今の状況を教えてくれないか」
「ああ、そうだそうだ。実はあまり時間が無いんだ。二人共、協力してくれないか?」
タシュの計画を手短にだが一通り聞いた二人は、トゥフタをここから連れ去る提案に目を丸くし、俯いた。
「だが、まず一つ確認しなけらばならない。トゥフタはここから逃げたいか?――俺と、生きたいか?」
「生きたい。ここを出て、お前と生きたい」
タシュの問いかけに、弾かれたように返事をしたトゥフタを、エベツは苦しそうに見つめる。
「ああ、ここから出よう。そして俺と生きよう。大丈夫だ。俺はもちろん、スドゥルもウユチュ様も、エベツさんだって協力してくれる。外に出てもなんとかなるよ」
「ああ、そうだ。ここ以外に本当に行く事が叶うなんて」
順調に話が進む中、エベツが歪めた口をやっと開いた。
「申し訳ないが、私は行かない」
否定の言葉に、二人はエベツを見つめる。その表情は、とても辛そうだった。
「どうしてだ?」
「国内での脱出には手を貸せるだけ貸す。だが、私は王付きの女官。そして女官長でもある。王が居なくなった後の国民をほっておけない」
「エベツお前にも来て欲しい」
トゥフタの言葉に、エベツは唇を食いしばる。
「――この国を出た後のトゥフタ様は、王ではありません。私が仕える理由がありません」
「そんな、エベツさんだってトゥフタを逃がしたいって思ってたじゃないか!」
「もちろん思っていた。だから、いつかこうなるかもしれないと覚悟はしていた!それは、私が国に残るという覚悟だ!」
「エベツ……私はお前がいないと、寂しい」
「――そのお言葉が聞けただけで、私は幸福です」
トゥフタが伸ばした右手を、エベツは片膝を付いて手に取り、頬に当てた。
「今まで仕えさせて頂いて感謝致します。タシュ、トゥフタ様を頼むぞ」
そう言ったエベツの目には、うすく涙が溜まっているように見えたが、タシュは指摘を避けた。多分、タシュには知られたくない涙なのだろうと感じたから。
「もちろんだ。俺が責任持って守るよ」
「その言葉信じたぞ。――さあ、時間が無い。まずはどうやってここを抜け出す?あの騒ぎはどれくらい続く?」
扉の前から衛兵がいなくなったのは、どうやら奥の方で騒ぎがあったかららしい。タシュの話ではそれはスドゥルとウユチュが起しているらしいが、そんなに長続きしないだろう。
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