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極彩色

住処

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「――どちらにせよ、そのままの姿では動きにくいだろう?家にあるのでよければ、服を着替えると言い。それくらいの時間なら、あるだろう?」
「そんな、そこまでお世話になるなんて……」
「家はこの裏だ。覚えてるだろう?」
 ウユチュは後ろに立ったままだった皆の顔を見ると、首を傾げた。ヤンに付いて行っても良いかを聞いているのだと合点がいったタシュは、こくり、と頷いた。
 前回よりは大きな女官服を用意してもらったとはいえ、やはり脇やらが少々キツく、動きづらいのが正直なところだ。もうここからは外に出る道しか行かない筈。となれば、もう女官服を脱ぎ去ってしまってもよいだろう。
 ちら、と横に立ったままのトゥフタを見ると、合図もしていないのに目が合った。
 この美しい姿も見納めかと思うと、少々勿体ない気持ちになる。
「――ウユチュやスドゥルは、ここで生活していたのだな」
「あ?――ああ、そうらしいな。んで、あの婆さんはそん時の知り合いってことだな」
「初めて本物の老人を見た」
「……どう思った?」
「私は……私達は老いる前に命が尽きる。それが良い事だと教えられてきた。美しいままで、醜く老いる事なく死ねるのは、幸せだと」
「……まあ、ある意味そうかもな」
「だが、あの老女を見ても私は醜いとは思わない。ウユチュを見て流した涙は美しいと思えた」
「ふぅん……?」 
「タシュはどう思うんだ?」
 トゥフタの純粋な問いに、腕を組んで少々考えてみた。タシュからすれば老人なんて珍しくもなんとも無い存在だ。それを今更どう思うと聞かれても返答に困ってしまう。トゥフタは何を聞きたいんだろう。
「――まあ、トゥフタ達の受けた教えの真偽は分からんが、トゥフタなら、ジジイになっても綺麗なままだと思うぞ。多分、綺麗なジジイになる」
「――っ!なんだそれは……!ありえないっ」
 トゥフタが軽く握った拳でタシュの肩を叩く。その表情は明るく、多分、トゥフタの聞きたかった答えに近かったのだろうと安堵した。
 大袈裟に痛がりながら、老人になったトゥフタを想像してみる。金糸の髪は白髪になるのだろうか。艶やかな長い髪を切って、白髪で短髪になるトゥフタ。
 年齢を感じさせる皺は、彼の年輪であり、生きてきた背景が映し出されるようで威厳に満ちていそうだ。
 白髪になったタシュ自身を、トゥフタの横に添えてみる。
「うん、悪くない」
「何か言ったか?」
「いや、なんでもない。ほら、ウユチュ様達もう進んでるぞ。追い付こう!」
 差し出したタシュの手を、トゥフタは自然と取った。二人は前を歩く一行に追い付いても、手を繋いだままだった。
 極彩色な世界は、前に進む力を与えてくれるように感じた。
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