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極彩色

人売り

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静まり返った空間で、ヤンが空になったウユチュの器に茶を継ぎ足した。暖かな湯気が立ち上る。
「ごめんなさい、お話しを止めてしまったわね」
「良いんです、ウユチュ様。――あの移設工事の後、第二セルはかなり変わりました。学び舎を介して存在した第一セルとの交流も断たれ、我々はアクバイという国の一部でありながら、陸の孤島と化したのです。何より、新たな移住者がここ何十年も現れない。クロレバ様はここを潰そうと考えてらっしゃるようにしか思えません」
「そんな、まさか」
「新たな血が入らないと、どうなるか知っているか?」
 何を言おうが女王なのだから、自国の人間を無下にはしないだろうと笑い飛ばそうとしたタシュだったが、ヤンの真剣な表情に言葉に詰まった。
「混ざっているとはいえ、我々の血は濃い。元より子を成せる人間しかここにはいない筈なのに、子を成せない夫婦が増えてきた。――イーリンも、そうだった」
「まあ……!」
 ウユチュが悲痛な声を上げ、ヤンの隣へと移動した。その背中をさするためだ。
「スドゥル坊ちゃんならどうして子を成せなくなったか分かりますかい?」
「――断定は出来ませんが、考えられるのは二つです。一つは遺伝子の似ている者同士の婚姻が続いた為、遺伝子に不具合が起きた。もう一つはアクバイの民の大半と同じように、元より生殖機能を持たず生まれたか」
 名指ししたスドゥルの返答に、満足そうに大きく頷くと、ヤンは言葉を続けた。
「この国の外貨は、蜂蜜以外に何で得ているか、ウユチュ様は知ってらっしゃいますよね?」
「何を言っているの?……もしかして忌まわしいあの事を言っているの?私の時からは蜂蜜だけよ?私がそうしたのだから」
「それを証明出来ますか?」
「証明って……スドゥルに調べさせていたけれど、消えた国民の話なんて聞かなかったわよ?」
 同意を求めるウユチュの視線に、スドゥルは力強く頷いた。
「スドゥル坊ちゃんが調べたのは、アクバイの国の事でしょう?第二セル内の事まではお調べになってないはずです」
「……どういう事?」
「クロレバ様は人売りをしてらっしゃいます。第二セルの人間を売っているんです」
 背中に当てていたウユチュの手が止まり、その指先は薄氷のごとく冷たくなっていった。
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