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極彩色

追っ手

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 まだ日が高い時間、見慣れない一行の姿は目立つ。第二セルの住人達から不思議そうに何度も指をさされる中、一行は早足で出口へと向かっていく。
「ウユチュ様、もしかしなくても薬に気付いていましたね?」
「……あら、何のことかしら」
「飲みなれたロッポチャに薬が入れば、気が付くはずだ」
「――エベツが飲んでしまったら、可哀そうでしょう?あの子は何も悪くないのに」
「今回は痺れ薬だから良かったですが、以降は絶対にやめてください」
「そうよね……分かったわ、やめます」
「またそんな軽く……」
「……ほら、そこを曲がって頂戴スドゥル。そうすると小さな森が見えるの、その中の大きな木の一つに、穴が開いているわ。そこへが外への入り口」
 背負われたウユチュと、背負うスドゥルが先頭を行き、皆はそれについていく。その少し後ろからは、騒がしい声が聞こえてきた。
 追っ手だろうと判断した一行は足を早めた。
 森の奥へ行こうとしたタシュを引き留めたのは、兵を引き連れたクロレバの声だった。
「私から逃れられると、本当に思っていたか?」
 クロレバの姿を見たトゥフタは小さく震え、タシュの後ろに隠れてしまう。
「我が夫よ、その衣装も似合っておるぞ。さあ、我が元へ戻れ」
「あ……い、嫌だ……っ」
「今日はそういう嗜好か?女王が命じているんだ。今、戻るなら酷くはしない」
「……っ」
 顔を覗かせたトゥフタを隠すようにタシュは腕をあげた。長い袖がカーテンのようにトゥフタを隠す。
「渡す筈がないだろう!」
「タシュ……っ」
 ぐっと、タシュの腰にしがみ付いた。
「言う事を聞かない子には、しっかりとお仕置きが待っているが良いんだね?」
「もうトゥフタはお前の元へは戻らない。俺が外へ連れていく」
「お前の事は。さっさと始末するべきだったようね」
「あの時は死んだかと思ったけど……お慈悲をありがとうございます女王さま」
「戯言を……!捕えろ!王を傷つけるなよ!」 
 女王の指示で兵たちが走って近づいてくるのを、タシュはトゥフタを背後に隠したまま手刀でいなす。タシュの手が届かない範囲はエベツが参戦してくれた。兵とも顔見知りなのだろう、決定的な攻撃が出来ず、時間ばかりが立っている。。
 トゥフタの手を掴もうとした兵の手を、タシュが叩き落とし、背負い投げる。兵と言えど女性に手をあげるというのは心が痛む。タシュの動きも徐々に精度が落ちていってしまう。
 トゥフタを守るように二人は善戦したものの、数の利には叶わない。はるかに兵の数の方が上回っている。結局、三人は捕らえられる事となってしまった。
 後ろ手に縛られ膝をつかされた三人の前に、満足げなクロレバが立ち、見下ろしてきた。
「タシュ、我を困らせてくれたな」
「……やっぱ女の人には酷いこと出来ないよ、俺……」
 タシュに対して鼻で笑うと、俯いたままのトゥフタの顎を持ち上げ、視線を合わせた。
「どうするのが一番良いお仕置きになるだろうかと考えていたんだが……タシュの目の前で犯すのはどうだ、我が夫よ」
「ひっ……そ、そん……っ、ひどい……」
 怯えたようなトゥフタの顔を見て、高らかな笑い声をあげる。ひとしきり笑った後、急に険しい顔を浮かべた。
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