君は気が触れたリスナーと言うのかな

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君は気が触れたリスナーと言うのかな

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「ねぇ、みんなの今日の晩ごはんはなぁに?」

私の推し、じゅんくんは音声の生配信をしており、甘えた声で画面越しのリスナーへ聞いた。きっと、今日の晩ごはんをどうしようか考えてるのだ。

テーブルに並んだ二人分の料理をチラッと見て、コメントを打つ。

「はやしライス」
他リスナーのごはんメニューと共に、コメントが流れる。

「はやしライスいいね!おいしそう!!」
読まれた!じゅんくんの陽気な声。

「じゅんくんの分もあるよw」
もう一石投じる。

「えぇ!美味しいから2杯目も食べなさい?」
君はそもそもこの料理の味を知らないし、女の子にどれだけ食べさせる気よ、と心の中でツッコミを入れた。
食べに来るわけがないのだ。

なのに、
お休みの日は、自分ともう一皿、じゅんくんの分まで作るのだ。

どうかしてる女と言われればそうだろう。

まぁ、じゅんくんのせいであり、
自分のためである。

以前の配信で、

「仕事から帰ってきて、ごはんがあったらテンション上がるなぁ。女の子の手料理なら、なおさら!」

私もそうだなぁ...帰宅してごはんを誰かが作って待っていてくれたら。
同じひとり暮らし環境で、ごはんのお供に配信を聞いてて気付いた。
私は異性のために、ごはんを作ったことがない。

それだけだが、
他の女の子の「私が作るよ!」というじゅんくんをちやほやするコメントを見てて、だんだん嫌な気持ちになってきた。
その子達にではなく、それをできないが故、コメントできずにいる自分に、心苦しさを覚えた。

彼に似合う女の子になりたい、
というと恋する乙女で可愛らしいが、

彼の想像する一般基準の女の子になりたい、という女子力低値の自分を引き上げる、危機感にあふれた想いからだった。

それから、
目の前に居もしない推しのために、実際に夕飯を作る活動が行われている。

でも、そのおかげか、ごはんを作ることが楽しくなった。

じゅんくんは今日、何が食べたいのかな。
ハンバーグ、カレー、オムライス、お肉料理が鉄板だけど、
最近は栄養が偏ってるから、お野菜も多めにしよう。

もう少し痩せたいって言ってたから、食べすぎないよう、途中で満腹度を高めるために、汁ものもつけよう。

始めにお野菜を食べるといいからサラダをつけて、生野菜は苦手だから、必ず火を通す。

私のごはんを楽しみに待つ、好きな人がいる。そう思うと、プレッシャーな反面、手間のかかる料理も自然と作れて楽しい。

出来上がって並べる時は、
ランチョンマットを敷き、
かわいいシロクマの箸置きに、
推しのために買った男物の箸を置き、ごはんなども盛ってお皿を並べる。

好きな人に出すなら、と思うと、俄然1人の時より見た目にこだわった。おざなりだったお皿も、今では小洒落なカフェのように、ドレッシング用の小皿まで付けている。

大人のおままごと。

そう言うと可愛いが、
寂しさのあまり、推しが目の前にいると思い込み、気を紛らわしてるだけといえばそうだ。

私は今日も、家に来もしない推しにご飯を作り続けている。
いつか推しに似た人と付き合って、その時にごはんをふるまえたら、
少しは今の状態にも恰好がつくかな。

それまではじゅんくんという、甘い夢の中で。

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おしまい。

他人から見たらトリッキーな行動かもしれない。
でも、それが1つの努力という形で、いつか彼女の中で昇華されますように。
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