毛利真伝

もうりん

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初陣編

#13 皆生が一つになった時

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皆生屋敷     皆生家虎
私は屋敷に帰ると春綱に事の次第を報告し
「やってやりましょう!」と頼もしい返事を得ると次は民たちに説明した。
「家虎さま、もう居なくなるべか?」と達八が寂しそうに呟いた。
私は悲しんでくれる優しい民たちに胸を痛めて居ると
「やっと良い俺たちを慈しんでくれるお殿様に巡り会えたのに…。」と傳兵衛も別れを悲しんでいた。
とそこに
「勝手に諦めるなよ!」と怒りの怒号が聞こえた。
その怒号の方を向くとこの皆生の地の長老である達八の父である勘八が立ち上がっていた。
「家虎さまは次起こる大友と毛利の戦に毛利方として参戦なさる。その時、毛利が勝てば家虎さまと共に我らは独立を尼子から手に入れられるそうだ。家虎さまがそう掛け合われた。」と言うと
「「なぁんだ!」」と民たちの軽い声が響いた。
「ついに時は来たと言うことか!」と何故か張り切る達八が手を天に掲げると民たちは一斉に
「おぉーー!」と天に拳を突き上げた。
唖然とする私に傳兵衛は説明してくれた。
「家虎さまが毛利家の人質であることは知っていたんだ。それで何時か遅かれ早かれ家虎さまとの別れが来ることも。だから、家虎さまが俺たちに添い遂げようとしたように俺たちもまた家虎さまに添い遂げようと皆で決めてたんだよ。だから、俺たちも参戦するぜ。その戦。」と傳兵衛が言うと私も拳を突き上げて
「これからが我ら皆生の戦だ!」と大声で言うと貞俊たち家臣たちも参戦して
「「おぉーー!」」と皆で声を張り上げた。
そして、私は兄上たちに会うために郡山城に旅立った。
その頃、郡山城は…。
郡山城 志道広良
わしは並々ならぬ焦りと危険を感じて居た。わしの敬愛する大殿がこれ以上無いぐらいの荒れようで大殿を引いては毛利家を見限ろうとする者も増えていた。わしは元春さまや隆景さまと共に毛利家の内政を担っていたが戦では負け続けもう家臣も民たちも疲弊し切って居た。徴兵令には最早誰も応じず防戦する兵糧さえすらもが尽きているも同然だった。その上、九州の大友が毛利を滅ぼすのに本腰を入れる事になったと言う噂もあって尼子領や毛利家に縁のある皆生家に逃げる農民も多く居た。皆生家を新たに立てた大殿の正嫡の四男であられた家虎さまは皆生家で仁政を敷いているようで民たちの注目の的だった。
「大殿、これ以上は…もう…辞めましょう。」とわしが言うと大殿の肩がピクンと動き震える声色で
「辞めたとてどうなる。只々、滅びるのを待つのか?それとも尼子に下るのか!」と精一杯強がられた。
わしは大殿の気持ちを受け入れると
「大殿、嫌疑感のあるのは分かりますがここは家虎さまに縋りましょう。家虎さまは情に篤い方です。精一杯毛利家の為に尽くしてくれると思います。」と言うと大殿が
「しかし…わしは虎寿に…。」と言いかけた所に
「父上、少しは私の事頼って下さいよ。これでも…私は…父上の正嫡の四男毛利虎寿丸なんだから!」と言う空気を切るような鋭い声が響いてわしは内心歓喜した。
第13話では春綱さんそして皆生の民たちへの事情説明と今作では余り焦点を当てていなかった志道広良さんと元就さんの直接対決ターンとなりました。
次回もよろしくお願いします。
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