毛利真伝

もうりん

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初陣編

#18 貞俊の想い1

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皆生屋敷     福原貞俊
わしは家虎さまに覚悟を伝えただけなのに家虎さまに泣かれてしまった。その後鉛のように重い心を必死に引きずって部屋を出ようとしたが家虎さまが眠りに就く直前の"貞俊が一緒じゃないといやだ。"と言う寝言のように言った我儘が脳裏によぎって手がピタリと止まった。家虎さまは子を作る為に居る妾とも違う倅の元俊が居る我が子と言う立ち位置とも違う本当に特別な存在だった。いずれは家虎さまも嫁を取るだろう。だがわしに取ってはそれは地獄に落とされるぐらい辛いことでいつまでもわしの側で可愛い寝顔を晒して眠る家虎さまを愛でたいと切に願っていた。その為にはわしも生きなければならない。そう思うと自然と心より先に体が動いた。
わしは家虎さまに寄り添うように寝転がると家虎さまをうっとりと眺めながら眠りに就いたのであった。
皆生屋敷     皆生家虎
私は貞俊に寝かされた後目が覚めると翌日の早朝になっていた。私はふと横を見ると貞俊が私の隣で寝ていた。私は約束を守ってくれた貞俊を嬉しく思いながら静かに頬ずりした。
そして…
「…私の心はいつも貞俊の下にあるんだけどな…。それは貞俊が父代わりだからでも私の傅役だからでも無く貞俊が私の初恋の人であるからに他ならないんだけど…な。」と独り言ぐちると貞俊の頬を軽く叩くと貞俊が起きた。
そして左右を見て私を見つけると
「あっ、家虎さま。もう起きて居られましたか。」と言って来た。
心なしか元気になっているようにも思えた。やはり疲れていたのだな。休ませて良かった。貞俊は私の大切な人だしこれからも時々は無理やり休ませねばな。貞俊は無理をし過ぎる癖があるしな。
「まぁな。でも、貞俊より早く起きたんだし当たり前でもあるがな。」と言うと貞俊が
「主より先に起きれぬとは情けないことです。」と至って真面目に言うので
「まぁ、そんなことないと思うが良いや正装のまま寝たんだしもう準備は出来ておろう。私の着替えでも手伝え。」と私が言うと貞俊は微笑みを浮かべると月山富田城に向かうようの服を取り出した。
それに不思議に思った私は貞俊に
「今日は月山富田城に行く予定は無いはずなのだが?」と言うと貞俊に何食わぬ顔で
「九郎さまや殿にお別れを言いに行くのでしょう?」と言われ私は何も言えなくなった。
確かに私が大友に勝てば九郎とかつて約束した家臣になると言う約束も反故にすることになる。それに私を可愛がりこの皆生六万石を任せて下さった殿にも不義理を謝らねばならない。
「あぁ、勿論だ。」と言うと私は春綱と宗勝にもその事を告げると宗勝が留守役を引き受けてくれた。
「では行って来る。」と宗勝に言うと宗勝の
「えぇ、無事の帰還をお祈りして居ります。」と言う声に見送られ貞俊と私、春綱は月山富田城に向けて出立した。
第十八話では引き続き貞俊さんと家虎君の恋物語と月山富田城の晴久さんたちへの挨拶へと向かう序章となりました。次回は貞俊さんによる小話をお送りする予定です。
では、次回もよろしくお願いします。
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