毛利真伝

もうりん

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初陣編

#19貞俊の想い2

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ー福原貞俊ー
わしは今日の朝実は家虎さまより早く起きていて寝たふりをしていたので家虎さまのまさかの告白とも言えた独り言を聞いていた。まさか家虎さまの口から初恋と言う言葉が出るとは思わなかったわしは思わず飛び起きそうになったが辛うじて仮眠を保つと家虎さまに頬を叩かれて驚いたが不思議と全く苦しくもなく起きることが出来た。起きると家虎さまの朗らかな笑みがあって凄く幸せな気持ちになった。そして、唖然として情の赴くままに家虎さまと話していると家虎さまはわしが上の空なのに気がついたのか着替えるのを手伝えと言い始めるとわしはハッとして家虎さまに微笑みを向けると家虎さまの寂しそうな笑顔は満面の笑みに変わった。どれだけ武勇や軍略に優れれどまだ中身は10歳。まだまだ精神的に未熟で幼い。10歳にして父母から離れて生活している。その寂しさは想像を絶するだろう。わしだけでもこの子の愛する主君の為に精神的な支えであって上げねばこの優しい子は本当に精神的に壊れてしまうだろう。わしは馬上からそんな事を思っていると凄まじい速さで馬を走らす家虎さまに追いつこうとするわしに並走するように馬を並ばせた湯原殿がわしの脳裏を悟ったのか真剣な顔で
「福原殿、背後は私と乃美殿に任せて福原殿は家虎さまをお願いします。私たちの事を家虎さまは信頼為さって下さっているとは思います。ですが、私や乃美殿に家虎さまが持たれている感情と福原殿に家虎さまが持たれている感情は違うように思えます。つまりは家虎さまを精神的にも全てにおいて救えるのは福原殿。貴方だけなんですよ。」と湯原殿が言うとわしは何も言えなくなってしまった。
つまり、湯原殿と乃美殿は元よりわしと家虎さまの関係を知っていたことになる。そして、わしに家虎さまを託すのもお二人の腹づもりと言った所か。
「湯原殿。この身を持って誓います。家虎さまはわしが必ずどんな戦場に身を置こうと生きて帰しますよ。」と言うと湯原殿は馬を止めてしまうと
「宜しゅうお願い致します。」と頭を下げた後家虎さまの少年特有の甲高い声が聞こえた。
「貞俊、春綱遅いぞ!」と言う家虎さまの声にわしと湯原殿は頷くと
「申し訳ありませぬ!」と言うと慌てて拗ねる家虎さまに追い付くとわしは家虎さまを宥めながら月山富田城に向かった。
家虎さまはわしが説教しているのに嬉しそうにしているし本当にわし相手には懲りない御方だ。家虎さまは昔から信頼できる人には容赦無く言うと言った少し性格の悪い御方だった。だが、基本は人懐っこく誰にでも愛される御方だった。家虎さまは本当に生まれ持った才能は非常に大きい物があると思う。でも、家虎さまはまだその膨大な力を制御しきれて居ないように思える。だからこそ家虎さまは危うい。
でも、わしは何処までも家虎さまに着いていきますよ。
第十九話はほぼ貞俊さんによる独白になりました。次回からは本編に戻る予定です。
次回もよろしくお願いします。
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