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ペアルックを見かけたら。
しおりを挟む「さっきすごいもん見たんだけどさ」
いつもの待ち合わせ場所、某駅前。
今日は珍しく、俺の方が早かった。
「何?」
待ち合わせ時間ジャストについた隼人は、先についていた俺に驚いたりはしない。何事もなかったように、慣れた道を行く。
「どぎついオレンジのペアルック。笑える。てか、最悪じゃね?」
声を押さえて爆笑する俺に、隼人は冷たい目を向けてきた。
「そう言ってるお前は、最低な顔してるけどな」
それだけ言って目をそらした隼人に、なんだかムカついた。
「何だよ、それ」
「そのまんまの意味だろ」
苛立っている俺に、隼人は焦りもせずに言い返してくる。
それがあまりに平然としすぎていて、俺の方が不安になった。
「ペアルック、お前すんのかよ」
口を尖らせてわざと聞いた。
隼人はペアルックなんて絶対にしない。お揃いのアクセだって持ったりしない。相手が彼女でも、友達でもだ。
「しないけど、別に良いじゃん。笑うようなことじゃないだろ」
隼人は横目に俺を見るだけで、機嫌をとるような仕草は見せなかった。
「どぎついオレンジなんだぜ?」
「お前は最低で最悪などぎつい無神経男だけどな」
食い下がれば、さらに強い言葉で罵られた。俺だってペアルックにそこまでの悪態はついてないのに、だ。
他の奴に言われれば怒り狂うほどの言葉なのに、友達に言われるとなんだか寂しくなる。
口数の少なくなった俺の横を、隼人は変わらず歩く。
どこに遊びに行くのか決めるために立ち寄る、いつものカフェ。
カフェモカを前に、俺はどこか気が滅入っていた。
目も見れなくなった隼人に、力なく聞いてみる。
「俺たち、友達だよな」
「友達だな」
すぐに返ってきた言葉に、心が弾んだ。
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