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ふーふになるまで

第3話 帰りたい

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『はぁかったるい。早く帰りたい……』
 婚活パーティー開始して2回目の席替えを終えてデザートの時間だがトイレに行き、飲み放題のドリンクを取りに来てため息をつく。席には戻りたくない、とさっきまで座っていた席に、他の席も見るとどこも賑わっている。たった2時間でここまで仲良くなるのかと。
 大島もお酒を飲んで上機嫌である。室田も大きな声で笑っている。

 何故ここまで湊音が憂鬱なのは、彼がバツイチだったからだ。
 最初の一対一の二分トークで紹介カードを渡すとまず持ってすぐ『離婚歴あり』を見て、ふーんと言われる。
 何年結婚していたのか、中にはお子さんはいますかと深く聞かれたが、子供はできなかったと言ったら、ハァと言われて会話が無くなった。

『僕に生殖能力がないと思ったのか。みんな結婚してすぐ子供欲しいんだろうな』
と。


 しかし湊音は実際子供ができないわけではない。若いうちに結婚した湊音と彼の元妻の二人はまず仕事を選んだ。子供はもう少し落ち着いてからにしようと避妊を必ずしていた。
 そのおかげなのか二人は仕事も順調だったが、塾講師をしている元妻に家事を押し付けていた。そしてそろそろ子供を欲しがった6歳上の元妻が湊音を求めたが湊音は仕事の疲れで拒否をし続け、いつの間にか寝室は別になった。

 一度酒を飲まされてベロベロに酔わされた湊音、離婚直前にその時の子供がお腹にいると告げられ絶望した。そこまでして子供が欲しかったのかと。だが自分の子供であることは間違いない、子供には罪がない。

 そして先日産んだと連絡をもらって会いに行った湊音は一度その赤ん坊を抱きしめた。
 小さな男の子で泣き声が大きかった。の指を握った。その瞬間、彼はもう会ってはいけない、元妻も夫婦に戻ることは望んでいなかった。

 湊音は養育費も払っている。元妻は拒否をしたが……流石に今回のパーティーでのプロフィールカードに認知した子供がいる、養育費を払ってることを書けるわけがなかった。ただの付き添いで来たものの説明するだけでも苦しくなるだけである。

『僕はまた恋ができるのか?』

 と、好きなオレンジジュースを注いでいる時だった。



 
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