冬月シバの事件簿

僕に似た子供

窓辺

　これはかなり前のことか。

　とある夫婦が詐欺容疑で逮捕された。被害金額は億単位、被害者の中には多額の金額を騙し取られて悲観し一家心中したものもいる。当時最悪な詐欺事件と言われている。自宅は高級住宅。

　女をパトカーに入れる際に
「息子は……」
　と、家を振り返る。この夫婦には小さな子供がいた。窓辺から見える小さな瞳。こっちをみている。

　まだ小さい男の子だ。この状況を理解できないだろう。きっと小学生の頃にはわかるだろう、今日の日のことを。


　俺もそうだった。兄貴は父親に暴力を振られ、目の前で母親も暴力を受けていた。母親がマンションから飛び降りたことで発覚した。俺はまだ2歳でほぼ記憶に無いが大人たちがたくさんやってきたのを覚えている。

　そして兄弟で児童施設に預けられ、小学生の時に父親が逮捕されたこと、母親が死んだことを知った。
　間も無くして里親に引き取られたのだが、とても陽気な2人で。あった時から太陽のように光り輝いてて、暴力を受けて心を閉ざしていた兄貴も次第に笑うようになった。俺は親の記憶がないからこれが親なのかと認識した。
　でもやはり血の繋がりがないことも成長につれてわかってくる。だから反抗期はすごくひどく荒れたのに里親たちは大きく包み込み、暖かく見守ってくれた。

　あの窓辺にいる男の子は今後どう育っていくのだろうか。一つ一つ感情を持ってはいけないと上司に言われたものの気になって仕方なかった。
　たびたび男の子……コウジというのだが、会いに行った。コウジは親戚の間をたらい回しにされて最後には児童養護施設に引き取られた。

　なかなか心が開くことができない。それなのに俺は顔を出す、懲りないよな。