冬月シバの事件簿

麻木香豆

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鬼が見た景色

綺麗な景色の前で

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「とても綺麗な景色だね」
「ええ……」

 二人のカップルが高台から沈みゆく夕日を見てそう呟く。
 すると須藤が晴海をガバッと抱きしめる。

「もう、こうすることはできないのか」
「……嫌だ……そんなの嫌だ。須藤さん、ずっとこうしていたい」
「晴海、色々二人で出掛けたね。最後に素敵な景色も見られて楽しい旅だった。もうそれもおしまいだね」
「おしまい、だなんて言わないで……」
「晴海、きみと出会えてよかったよ」
「私もよ……須藤さん」

 須藤は放心した晴海を抱きしめ、涙を流しながら自分たちの過去に浸る。
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