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短編
息子よ
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首吊り遺体の足元に1通の手紙が落ちていた。中には自分の犯した罪と家族への詫び。
なぜここにこれを置いたのだ。いかにも誰かに読んでほしいと言っているようなものではないか。私は誰にも見られないように制服の内ポケットにしまった。
警察署に戻り、この手紙をどうしようかと考える余地もない……と思っている矢先。
「内海さん」
後ろから声が聞こえて振り返ると、後輩の冬月が私を見ている。
「息子さん、ですよね……このたびはご愁傷様です。こんな時も捜査しなくてはいけないなんて酷ですよね」
そうだ、あの首吊り遺体は私の息子だ。息子は子供の頃から手がかかるやつで。
金銭のトラブルで人を殺してしまい、その事件を目くらませるために私は色々と裏で手を回していた。
なのに息子は自殺をし、しかも自分がやりましたという遺書まで残して。黙っていればよかったのに。本当に手がかかってバカな息子だ。
「こないだ見つかった自営業の男と息子さん、お知り合いですってね」
息子が殺したんだ、その自営業の男。
「なんか不自然だなーと思って。色々調べたんですよ」
もう捜査は終えたはずだ。
「茜部、内海さんのポケット」
おい、なんだ!
「すいません、内海さん。私見ましたよ現場で遺留品を隠しているところを」
くそっ!
「自営業の男の死に関してのデータ改竄がありましてね、あ。わからないと思っても解析部に頼めば不正もわかりますからね」
くそっ!!!!
茜部は私の内ポケットから息子の遺書を……そして中を見る。
「やっぱり……息子さんの事件を改竄したんですね……この遺書をあの現場でみつかればただの自殺だったのに。あの現場から持ち去ったということはあなたが関係してるからですよね」
しまった、そうだったか。あの場に置いておけば私が庇っていたことはバレなかったか……。
「息子は悪くない! 悪くない!!!!!」
私は遺書を取り上げた。
「あああああああ!!!!!」
錯乱した私は窓から飛び降りた。遺書とともに。落ちる瞬間、息子が生まれた時、子供の頃の時、いろんな情景が走馬灯のように浮かんできた。
息子よ……。
最後までダメな父さんですまんな。今すぐお前のそばに行くからな。
終
なぜここにこれを置いたのだ。いかにも誰かに読んでほしいと言っているようなものではないか。私は誰にも見られないように制服の内ポケットにしまった。
警察署に戻り、この手紙をどうしようかと考える余地もない……と思っている矢先。
「内海さん」
後ろから声が聞こえて振り返ると、後輩の冬月が私を見ている。
「息子さん、ですよね……このたびはご愁傷様です。こんな時も捜査しなくてはいけないなんて酷ですよね」
そうだ、あの首吊り遺体は私の息子だ。息子は子供の頃から手がかかるやつで。
金銭のトラブルで人を殺してしまい、その事件を目くらませるために私は色々と裏で手を回していた。
なのに息子は自殺をし、しかも自分がやりましたという遺書まで残して。黙っていればよかったのに。本当に手がかかってバカな息子だ。
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息子が殺したんだ、その自営業の男。
「なんか不自然だなーと思って。色々調べたんですよ」
もう捜査は終えたはずだ。
「茜部、内海さんのポケット」
おい、なんだ!
「すいません、内海さん。私見ましたよ現場で遺留品を隠しているところを」
くそっ!
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くそっ!!!!
茜部は私の内ポケットから息子の遺書を……そして中を見る。
「やっぱり……息子さんの事件を改竄したんですね……この遺書をあの現場でみつかればただの自殺だったのに。あの現場から持ち去ったということはあなたが関係してるからですよね」
しまった、そうだったか。あの場に置いておけば私が庇っていたことはバレなかったか……。
「息子は悪くない! 悪くない!!!!!」
私は遺書を取り上げた。
「あああああああ!!!!!」
錯乱した私は窓から飛び降りた。遺書とともに。落ちる瞬間、息子が生まれた時、子供の頃の時、いろんな情景が走馬灯のように浮かんできた。
息子よ……。
最後までダメな父さんですまんな。今すぐお前のそばに行くからな。
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