冬月シバの事件簿

麻木香豆

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第二部

抱いた思い

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女子大学生、藤原妃里亜を殺人容疑で取り調べ中。殺人容疑を否定している。

取り調べは女癖の悪い刑事である冬月シバ。
報道で出回った写真では美しき社長令嬢とは思っただが目の前にいるのは金髪の髪の毛も手入れをしておらずバサバサ、涙と鼻水で顔も化粧っけもない女がいた。

「あの男から先日プレゼントとして大きなぬいぐるみが置かれていたのです……大学に行っている時にメイドさんが運んだんですの」

彼女の部屋はシバも現場を訪れてそのぬいぐるみの数にはアンティーク美術館かと思うほどであった。

「昔から親から寂しくないようにってぬいぐるみをくれたのよ」
現場でとてつもない匂いのする某大型スーパーで扱っている成人男性サイズのクマのぬいぐるみがあった。その中で死んでいた男。以前から妃里亜が警察でストーカー被害を訴えていたのだが改善されなかったという。

だが他のぬいぐるみもボロボロでパーツが取れて年季の入っているものばかり。アンティーク調に見えたのもそのせいだろう。
倉庫から見つかった男の死因は暴行によるクモ膜下出血。

「ちょいと憶測になるけどストーカーだった結城嘉次郎が先にぬいぐるみを送り後日忍び込んでそのぬいぐるみに入り込んだ」
妃里亜は笑った。

「あいつもバカよね……あの時私はむしゃくしゃしてたのよ」
彼女の顔は豹変した。
「だからいつものようにぬいぐるみに八つ当たりしたの。そしたら……あのぬいぐるみから変な音と感触。でも止められなくてなんだかんだしてたら中でやつは死んでた、ぬいぐるみの中で」

きっと結城は夢見たのであろう、ぬいぐるみ越しで抱かれることを。
しかし彼女は子供の頃から両親の不仲を見ていて心の傷をぬいぐるみたちに与えていたのだ。

そしてゴミ箱からは手紙があり
『これを他のぬいぐるみと同じように接してね』
と。

「ほんとバカだな」
泣き笑う妃里亜を見てシバは同情するしかなかった。
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