誰もが誰かに嫉妬する

麻木香豆

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第二章

第五話

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「えっ、柳さんが?!」
翌日、学校で私がそう話すと、幸太も驚いた様子だった。彼は自分のギターの師匠が柳さんだと言っていたけれど、そのことを知らなかったそうだ。

「あの、静かに吠えるギター侍と呼ばれた柳さんが……他のバンドメンバーはガチャガチャしてうるさかったもんなぁ。だからこそ柳さんの静かなところが際立ってたかもね」
「そうだね。……でも、そのバンドのギターボーカルってのが荷が重いから、幸太、ほんと助けてくれよ」
「俺だって緊張するよ。師匠の前でギターだよ」
私と幸太は中学からの同級生で、彼の父親がミュージックバーの常連だったことから、昔から仲良くなった。幸太は他の男子たちみたくサッカー部や野球部ではなく、クラシックギター部に入っていた。

「まぁ、芹香さんを超えるのは難しいかもしれないけど、紅一点……いいじゃん」
「そうかなぁ。プレッシャーに押しつぶされそうだ」
「押しつぶされても、少しスリムになれるかもしれないけど……」
「あー、それセクハラじゃん!」
「冗談だって、だから怒らないでよ」
私は腹が立って幸太を追いかけ回した。

その時、音楽室にどこかで見たことがある人が現れた。

「あら、成美ちゃん、幸太くん。相変わらず仲良いわね」

……なぜここにいるの?

「芹香さん!」
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