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鳥籠の中の彼女
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彼女―アルエットは、学園の中にある鳥籠と呼ばれる大きな建物の中に閉じ込めれている。何でも、今回の鳥籠計画の被害者らしい。鳥籠計画というのは、鳥の名前が付く生徒を閉じ込めるもので何故閉じ込めているのかはこの学園に通う生徒も分かっていない。ただ、空を自由に飛ぶ為に必要な翼を奪ってしまおうという事なのだろう。もぎ取ってしまうのではなく大事に閉じ込めて此処が彼女の居場所だという刷り込みをしているのだとオレ―オルカはそう思っている。ただ、刷り込み作業は、あまり上手くいっていない。何故なら、偶に図書室でアルエットが司書の玄八(やはる)と楽し気に話しているのを目撃したからだ。そして、話し終えるとアルエットは鳥籠の中へと帰って行くが、放課後を知らせる鐘の音が鳴ると、アルエットは鳥籠の中から出てきて校門へと歩いていく。彼女にとっては、あの鳥籠はオレ等が使っている教室となんら変わらないものなのだろう。何の目的があってこの鳥籠があるのかオレにも分からなくなってきた。もしかしたらこの計画は失敗に終わっている可能性もあるが、敢えてそれをアルエットに伝えていないのかもしれない。だとすると、オレがアルエットを連れ出しても誰も文句は言わないはずだ。実際に連れ出そうとするとアルエットはきっと驚くだろう。自分の力で飛び立てる事が出来る事、そして、オレが何故自分の事を助けたのかという事に。
オレが、こうしてアルエットを気にかけているからでも好きだからでもない。ただ、何となくこの計画を阻止してみたいと思ったからに過ぎない。そして、オレがこの学園の卒業生だから真相を知っていきたいとうのもあるが、アルエットにはその事は伝えてないから正直怪しまれても仕方ないと思う。だが、学園側はオレ達に何か隠していると思う。そうじゃなきゃ、卒業式の時にあまり此処の生徒だと悟られないようにしろと言われないと思うからだ。オレ以外にもそう思った奴は、何人か居ると思うがオレみたいに真相を突き止めようと思った奴は居ないだろう。もし仮に居たとしても、途中で引き返すしいつも通りの日常に戻るかもしれない。学園側は、オレ等卒業生の行動も察知している可能性があるからだ。オレは、出来るだけ学園側に悟られない様にこうしてアルエットの居る鳥籠へと足を運んでいるが、そろそろバレそうだから、オレは次は何処を探索しようか悩みながら帰路へとついた。
家に帰ると、アルエットと仲良くしている司書の朱樂(しゅらく)が居た。オレは、ついにバレたのかと思ったが様子からしてそうではないことが分かった。朱樂は、オレが帰ってくるなり立ち上がり優しく微笑んだ。目の見えない彼女は、音と声だけで誰がそこに居るのか判断している。そして、オレが声を掛ける前に、朱樂は優しく微笑んだまま口を開いた。
「おかえりなさい。オルカさん。…また鳥籠に行っていたのですか?」
その言葉を聞いて、一瞬ドキリと心臓が鳴るが朱樂はオレが学園に在学中に何度も鳥籠に行っているのを知っている唯一の人物だが、オレがまさか真相を突き詰めようとしているなんてことは知る由もないだろう。
「嗚呼。…それがどうかしたか?」
小首を傾げて問い掛けると、朱樂はゆっくりと閉じていた目を開ける。綺麗な茶色の瞳がオレを捉えると、微笑みを絶やさずまたゆっくりと静かな声で言葉を紡いだ。
「…いえ、この間オルカさんを見掛けたので少し気になって此処に来ました。原則として卒業生が学園に来てはいけない事は、オルカさんも承知のはずでは?」
「そうだな。…でも、オレは籠の前に居ただけだ」
オレは、少し嘘をついた。この間、アルエットに接触したことを隠した。だが、朱樂はスッと目を細めた。嘘を見抜いたような苛つきを表現するような目でオレを見詰める。何も見えてないはずなのに、やけに心臓の音がうるさく感じる。
「本当にそうですか?この間アルエットさんとお話をしていた時、彼女はどこか疲れているように思えましたが、貴方、アルエットさんに酷い言葉を浴びせたのでは?」
酷く冷たい声でオレに責め立てる。朱樂にとって、アルエットは妹のような存在だ。それ故に、もしオレがアルエットに欠陥人間と言ったことを伝えてしまうと朱樂はあらゆる手を使ってでもオレを近付けさせなようにするだろう。そうなってしまっては、折角接触を図れたのにまた一から計画を立てなくてはならなくなる。だから、オレはまた朱樂に嘘を吐いた。
「まさか。オレが?そんな訳ないだろ。単に疲れて寝れてないだけだろ」
俺の発した言葉を聞けば、朱樂はゆっくり小首を傾げ微笑みを消した。無表情のまま暫くオレを見詰めていた。何も見えていない彼女は、心の目でオレが嘘を吐いているのかどうか見極めるしかない。この会話のない間が、オレは昔から苦手だ。心を見透かされているように感じてしまう。その間が何時間にも感じてしまっている頃に、やっと朱樂は口を開いた。
「…そうですか。分かりました。では、私はこれで失礼しますね。…嗚呼、そうでした。オルカさん、私あなたの心の中だけははっきり見えるんですよね。…ふふ、この事は誰にも言いません。ただ、アルエットさんに接触するのは控えた方が良いですよ。…貴方、目を付けられてますから。…それでは、さようなら」
いつもの暖かい笑みを零して朱樂は一礼すると、自分の家に帰って行った。オレは、先程の朱樂の言葉がぐるぐると頭の中を支配させるが、今自分に出来る事をしようと思ったが、この日は確りとは眠れなかった。
鳥籠の中にいる小鳥はいつしか飛ぶことを諦め地を歩くだけになる。空を飛ぶと危ない。飛ぶなら危険のない自由な空を探せ。-いつの日かアルエットの父親に聞いた言葉が頭の中をよぎる。この言葉が、何故か俺にはキーワードのような気がしてならなかった。だから、オレは学園には二度と近寄らず学園の周りで少しずつ聞き込みをする様にした。そして、何か発見がある度にメモに残した。これが、今オレに出来ることだ。いつか真相を突き止めれたその時、オレは生きているのかどうか分からないが、これ以上被害者を出すわけにはいかない。オレが、この命に代えてでも被害を防いでやる。そう強く胸に近い、また今日も聞き込みを始めた。
end
オレが、こうしてアルエットを気にかけているからでも好きだからでもない。ただ、何となくこの計画を阻止してみたいと思ったからに過ぎない。そして、オレがこの学園の卒業生だから真相を知っていきたいとうのもあるが、アルエットにはその事は伝えてないから正直怪しまれても仕方ないと思う。だが、学園側はオレ達に何か隠していると思う。そうじゃなきゃ、卒業式の時にあまり此処の生徒だと悟られないようにしろと言われないと思うからだ。オレ以外にもそう思った奴は、何人か居ると思うがオレみたいに真相を突き止めようと思った奴は居ないだろう。もし仮に居たとしても、途中で引き返すしいつも通りの日常に戻るかもしれない。学園側は、オレ等卒業生の行動も察知している可能性があるからだ。オレは、出来るだけ学園側に悟られない様にこうしてアルエットの居る鳥籠へと足を運んでいるが、そろそろバレそうだから、オレは次は何処を探索しようか悩みながら帰路へとついた。
家に帰ると、アルエットと仲良くしている司書の朱樂(しゅらく)が居た。オレは、ついにバレたのかと思ったが様子からしてそうではないことが分かった。朱樂は、オレが帰ってくるなり立ち上がり優しく微笑んだ。目の見えない彼女は、音と声だけで誰がそこに居るのか判断している。そして、オレが声を掛ける前に、朱樂は優しく微笑んだまま口を開いた。
「おかえりなさい。オルカさん。…また鳥籠に行っていたのですか?」
その言葉を聞いて、一瞬ドキリと心臓が鳴るが朱樂はオレが学園に在学中に何度も鳥籠に行っているのを知っている唯一の人物だが、オレがまさか真相を突き詰めようとしているなんてことは知る由もないだろう。
「嗚呼。…それがどうかしたか?」
小首を傾げて問い掛けると、朱樂はゆっくりと閉じていた目を開ける。綺麗な茶色の瞳がオレを捉えると、微笑みを絶やさずまたゆっくりと静かな声で言葉を紡いだ。
「…いえ、この間オルカさんを見掛けたので少し気になって此処に来ました。原則として卒業生が学園に来てはいけない事は、オルカさんも承知のはずでは?」
「そうだな。…でも、オレは籠の前に居ただけだ」
オレは、少し嘘をついた。この間、アルエットに接触したことを隠した。だが、朱樂はスッと目を細めた。嘘を見抜いたような苛つきを表現するような目でオレを見詰める。何も見えてないはずなのに、やけに心臓の音がうるさく感じる。
「本当にそうですか?この間アルエットさんとお話をしていた時、彼女はどこか疲れているように思えましたが、貴方、アルエットさんに酷い言葉を浴びせたのでは?」
酷く冷たい声でオレに責め立てる。朱樂にとって、アルエットは妹のような存在だ。それ故に、もしオレがアルエットに欠陥人間と言ったことを伝えてしまうと朱樂はあらゆる手を使ってでもオレを近付けさせなようにするだろう。そうなってしまっては、折角接触を図れたのにまた一から計画を立てなくてはならなくなる。だから、オレはまた朱樂に嘘を吐いた。
「まさか。オレが?そんな訳ないだろ。単に疲れて寝れてないだけだろ」
俺の発した言葉を聞けば、朱樂はゆっくり小首を傾げ微笑みを消した。無表情のまま暫くオレを見詰めていた。何も見えていない彼女は、心の目でオレが嘘を吐いているのかどうか見極めるしかない。この会話のない間が、オレは昔から苦手だ。心を見透かされているように感じてしまう。その間が何時間にも感じてしまっている頃に、やっと朱樂は口を開いた。
「…そうですか。分かりました。では、私はこれで失礼しますね。…嗚呼、そうでした。オルカさん、私あなたの心の中だけははっきり見えるんですよね。…ふふ、この事は誰にも言いません。ただ、アルエットさんに接触するのは控えた方が良いですよ。…貴方、目を付けられてますから。…それでは、さようなら」
いつもの暖かい笑みを零して朱樂は一礼すると、自分の家に帰って行った。オレは、先程の朱樂の言葉がぐるぐると頭の中を支配させるが、今自分に出来る事をしようと思ったが、この日は確りとは眠れなかった。
鳥籠の中にいる小鳥はいつしか飛ぶことを諦め地を歩くだけになる。空を飛ぶと危ない。飛ぶなら危険のない自由な空を探せ。-いつの日かアルエットの父親に聞いた言葉が頭の中をよぎる。この言葉が、何故か俺にはキーワードのような気がしてならなかった。だから、オレは学園には二度と近寄らず学園の周りで少しずつ聞き込みをする様にした。そして、何か発見がある度にメモに残した。これが、今オレに出来ることだ。いつか真相を突き止めれたその時、オレは生きているのかどうか分からないが、これ以上被害者を出すわけにはいかない。オレが、この命に代えてでも被害を防いでやる。そう強く胸に近い、また今日も聞き込みを始めた。
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