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A02運行:特命掛、結成
0022A:危ないのは、ゲリラよりも警察の方かもしれない
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再び真岡の地に足を下した。そこはやはり、悲しいにおいがする。
「それで、火災の現場というのがあれか」
それは、プラットホームからでもよく見えた。なぜなら、線路が幾重にも広がる広大な鉄道用地の中に、それはあったからだ。
さらに良いことに、それは雪で真っ白な世界の中で真っ黒焦げになりながら佇んでいた。
「ということは、あの時、我々は現場からかなり近いところに居たんだなあ」
「寒さと暗闇で視野狭窄に陥っていたのかもしれん。これに気が付かないとは」
「今気が付くことができたのだから問題なかろう。しかし、あれはなんだ?」
黒焦げになった建造物らしきそれは、何の脈絡も無くだだっ広い線路の海原に建っている。
「ハツちゃんのお父さんが言っていた通り、蒸気機関車運転用の石炭庫でしょう」
「じゃあ、あそこから石炭を機関車に供給するわけだ」
「ええ。ですから、あれが使用不可能になるとかなり問題が生じるはずです」
事実、そこらかしこで鉄道員があわただしくしていた。それに、運行掲示板にあるいくつかの列車に「運休」の文字が書かれるなどしていたことからも、混乱がうかがえる。
「あれを狙う理由はあるわけだ」
「ええ、そうなりますね」
「さて、では現場へ行ってみるか」
火災現場は目と鼻の先だ。具体的に言えば、プラットホームから線路に降りて、鉄道敷地を少し歩けば着いてしまうだろう。
そして、井関達は鉄道マンであるから、鉄道敷地に入ることになんの問題もない。
井関は先陣を切ってホームから線路へ降りた。
「うわあ、雪が深いなあ!」
などとはしゃいでいたら、奥から男が血相を変えて走ってきた。
「コラー! 線路に降りちゃいかん!」
その男は警察の制帽を被っていた。もしかしたら現場保全を任された者だろうか。だとしても、鉄道マンである井関には何の関係もない話で、それを無視して歩みを進める。その時。
「いかんと言っておろう!」
パン! あまりにも乾いた破裂音だ。
内地でぬくぬくと生まれ育った四人には、それがピストルの音だと気が付くことが出来なかった。
「言っておろうが!」
パン! パン!
その一発が井関の足元に当たり、雪が吹き飛ばされていった。それでやっと、自らに向けられているものが銃口であることに気が付いたのだ。
「待て! 撃つな!」
「なら命令に従え!」
警官はでたらめに引き金を引き絞り、そのたびに弾丸が発射されていく。そしてその弾はだんだんと井関達4人のそばへ着弾するようになる。
「オイ! 銃で人を撃つんじゃないよ!」
「銃は人を撃つためにあるんだろう!」
小林のそばを銃弾がかすめていき、それに焦った笹井がそんなことを言う。だが、それは警官を激情させるだけだった。
警官はついに全弾を打ち切り、拳銃をそのあたりの雪原へ投げ捨てた。そして腰からサーベルを引き抜いて、更に追いかけてくる。
「覚悟ぉ!」
「出来ない!」
ついに逃げ遅れた井関が捕まった。そして警官はあろうことか、そんな井関にサーベルを振り下ろそうとする。
その時、見慣れた少女がそこへ割り込んできた。
「ちょっとシゲさん! その人たちは鉄道員よ!」
その少女はハツだった。この間とは違い、顔色は幾分か良さそうだ。
「ああ、おハツちゃん。なんだそうだったのか。最初に言ってくれればよかったのに」
シゲと言われた男は、ひとかけらも悪びれる素振りも見せずにサーベルをしまった。
そして平然とこんなことを言うのだ。
「君たちのおかげで拳銃をどこかへ失くしてしまった。探すのを手伝ってくれ」
「それで、火災の現場というのがあれか」
それは、プラットホームからでもよく見えた。なぜなら、線路が幾重にも広がる広大な鉄道用地の中に、それはあったからだ。
さらに良いことに、それは雪で真っ白な世界の中で真っ黒焦げになりながら佇んでいた。
「ということは、あの時、我々は現場からかなり近いところに居たんだなあ」
「寒さと暗闇で視野狭窄に陥っていたのかもしれん。これに気が付かないとは」
「今気が付くことができたのだから問題なかろう。しかし、あれはなんだ?」
黒焦げになった建造物らしきそれは、何の脈絡も無くだだっ広い線路の海原に建っている。
「ハツちゃんのお父さんが言っていた通り、蒸気機関車運転用の石炭庫でしょう」
「じゃあ、あそこから石炭を機関車に供給するわけだ」
「ええ。ですから、あれが使用不可能になるとかなり問題が生じるはずです」
事実、そこらかしこで鉄道員があわただしくしていた。それに、運行掲示板にあるいくつかの列車に「運休」の文字が書かれるなどしていたことからも、混乱がうかがえる。
「あれを狙う理由はあるわけだ」
「ええ、そうなりますね」
「さて、では現場へ行ってみるか」
火災現場は目と鼻の先だ。具体的に言えば、プラットホームから線路に降りて、鉄道敷地を少し歩けば着いてしまうだろう。
そして、井関達は鉄道マンであるから、鉄道敷地に入ることになんの問題もない。
井関は先陣を切ってホームから線路へ降りた。
「うわあ、雪が深いなあ!」
などとはしゃいでいたら、奥から男が血相を変えて走ってきた。
「コラー! 線路に降りちゃいかん!」
その男は警察の制帽を被っていた。もしかしたら現場保全を任された者だろうか。だとしても、鉄道マンである井関には何の関係もない話で、それを無視して歩みを進める。その時。
「いかんと言っておろう!」
パン! あまりにも乾いた破裂音だ。
内地でぬくぬくと生まれ育った四人には、それがピストルの音だと気が付くことが出来なかった。
「言っておろうが!」
パン! パン!
その一発が井関の足元に当たり、雪が吹き飛ばされていった。それでやっと、自らに向けられているものが銃口であることに気が付いたのだ。
「待て! 撃つな!」
「なら命令に従え!」
警官はでたらめに引き金を引き絞り、そのたびに弾丸が発射されていく。そしてその弾はだんだんと井関達4人のそばへ着弾するようになる。
「オイ! 銃で人を撃つんじゃないよ!」
「銃は人を撃つためにあるんだろう!」
小林のそばを銃弾がかすめていき、それに焦った笹井がそんなことを言う。だが、それは警官を激情させるだけだった。
警官はついに全弾を打ち切り、拳銃をそのあたりの雪原へ投げ捨てた。そして腰からサーベルを引き抜いて、更に追いかけてくる。
「覚悟ぉ!」
「出来ない!」
ついに逃げ遅れた井関が捕まった。そして警官はあろうことか、そんな井関にサーベルを振り下ろそうとする。
その時、見慣れた少女がそこへ割り込んできた。
「ちょっとシゲさん! その人たちは鉄道員よ!」
その少女はハツだった。この間とは違い、顔色は幾分か良さそうだ。
「ああ、おハツちゃん。なんだそうだったのか。最初に言ってくれればよかったのに」
シゲと言われた男は、ひとかけらも悪びれる素振りも見せずにサーベルをしまった。
そして平然とこんなことを言うのだ。
「君たちのおかげで拳銃をどこかへ失くしてしまった。探すのを手伝ってくれ」
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