『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第15話 王宮の亀裂】

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【第15話 王宮の亀裂】

王宮の大広間。

王国の重臣たちが集まり、重苦しい会議が続いていた。

長い机の中央には王太子カルディオン。

だが、いつものような威圧感はない。

どこか焦りが見えていた。

「もう一度言う」

カルディオンは苛立った声で言った。

「王都港の税を下げろ」

財務卿が静かに答える。

「それは不可能です」

「なぜだ!」

「王家の財政がもたないからです」

カルディオンは机を叩いた。

「北方港に客を取られているんだぞ!」

「だから税を下げるのです」

財務卿は冷静だった。

「下げればさらに財政が悪化します」

沈黙。

貴族たちは互いに視線を交わしている。

その時。

老侯爵がゆっくり言った。

「北方港が成功した理由は明確です」

カルディオンは睨む。

「何だ」

「税が安い」

「手続きが早い」

「商人に有利」

カルディオンは怒った。

「それが問題だと言っている!」

老侯爵は静かに続けた。

「つまり」

「クレスト公爵令嬢の政策が優れている」

会議室が静まり返る。

カルディオンの顔が真っ赤になった。

「……あの女の名前を出すな!」

だが老侯爵は止まらない。

「王国の経済を支えていたのは」

「彼女です」

カルディオンは立ち上がった。

「ふざけるな!」

「俺が王太子だ!」

しかし――

誰も賛同しなかった。

沈黙だけが残る。

その頃。

王宮の庭園。

エルネスタはベンチに座っていた。

一人だった。

最近、侍女たちの態度も変わっている。

(皆、様子を見ていますわね)

王太子妃になれるのか。

それとも――

ならないのか。

彼女は静かに呟いた。

「……困りましたわ」

その時。

侍女が慌てて走ってくる。

「エルネスタ様!」

「何?」

「王都の貴族の間で」

「何かありました?」

侍女は言いにくそうに言った。

「アリアベル様の評判が……」

エルネスタの目が細くなる。

「どういうこと?」

「北方領地が大成功していると」

「王国一の才女だと」

「噂が広がっています」

エルネスタは一瞬だけ表情を消した。

(あの女……)

その頃。

北方のクレスト公爵城。

執務室では、私が書類を読んでいた。

「新しい交易契約?」

アルフレッドが頷く。

「南方の香料商会です」

私はすぐ答えた。

「いいですね」

「港が完成したおかげです」

アルフレッドは微笑む。

「お嬢様の計画通りです」

その時。

窓の外から馬の音が聞こえた。

私は顔を上げる。

アシュレイだった。

彼は執務室に入ると、言った。

「王都の情報だ」

私は紅茶を飲みながら聞く。

「どうなっています?」

アシュレイは短く言う。

「王宮で衝突が起きている」

「衝突?」

「貴族と王太子だ」

私は少し考えた。

「予想より早いですね」

アシュレイは頷く。

「王太子は孤立している」

私は肩をすくめる。

「仕方ありません」

「経済は嘘をつきませんから」

アシュレイは私を見た。

「王国は」

「あなたを必要としている」

私は静かに首を横に振る。

「いいえ」

私は窓の外を見る。

広い北方の大地。

「私が必要なのは」

「この領地です」

アシュレイはしばらく黙っていた。

そしてぽつりと言った。

「王太子は」

「本当に取り返しのつかないことをしたな」

遠くで鐘が鳴る。

北方の穏やかな夕暮れ。

だが王宮では――

王太子の立場が、さらに崩れ始めていた。
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