『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第14話 揺れる王太子妃の座】

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【第14話 揺れる王太子妃の座】

王宮の廊下。

エルネスタは静かに歩いていた。

しかしその表情は、いつもの余裕ある微笑みではない。

少しだけ――

焦っていた。

(おかしいですわね……)

最近、宮廷の空気が変わっている。

以前は皆、彼女に愛想よく挨拶してきた。

未来の王太子妃。

そう思われていたからだ。

だが今は違う。

「……ごきげんよう」

貴族の夫人が挨拶する。

だがその態度はどこかよそよそしい。

(明らかに距離を置いていますわね)

エルネスタは微笑みながら通り過ぎた。

その時。

廊下の奥から声が聞こえる。

「聞いたか?」

「北方の港の話か?」

「王都港より税が安いらしい」

「商人がどんどん移っている」

エルネスタは足を止めた。

北方の港。

つまり――

アリアベルの領地。

「まさか」

彼女は小さく呟く。

(本当に成功しているの……?)

その頃。

王太子の執務室では、また怒鳴り声が響いていた。

「税収が減っただと!」

カルディオンが机を叩く。

財務官は青ざめていた。

「はい……」

「王都港の取引量が減少しております」

「原因は!」

「北方港です」

カルディオンの顔が歪む。

「またあの女か!」

財務官はさらに言う。

「商人たちは北方の港を高く評価しております」

「税が安く、手続きも早いそうです」

カルディオンは叫んだ。

「王都港を閉鎖しろ!」

財務官は固まった。

「……は?」

「北方の船を入れるな!」

「無理です!」

財務官は必死に言った。

「北方港は王国の正式な港です!」

カルディオンは言葉を失う。

確かにそうだった。

クレスト公爵領は王国の領土だ。

つまり――

止める権利がない。

その時。

エルネスタが部屋に入ってきた。

「殿下」

カルディオンは疲れた顔をした。

「聞いてくれ」

「またあの女だ」

エルネスタは静かに聞く。

そして優しく言う。

「大丈夫です」

「殿下は王太子です」

「いずれ皆、殿下に従います」

カルディオンは少し安心した。

「そうだな」

だがその時。

騎士が駆け込んでくる。

「殿下!」

「今度は何だ!」

騎士は報告した。

「貴族会議から通達です」

「読め!」

「王家の財政問題が解決するまで」

「王太子妃の正式決定を延期」

部屋が静まり返る。

カルディオンはゆっくり振り返る。

「……延期?」

騎士はうなずく。

「はい」

「エルネスタ様の王太子妃就任は」

「保留となりました」

沈黙。

エルネスタの笑顔が一瞬だけ固まった。

(……保留?)

つまり――

王太子妃ではなくなる可能性がある。

カルディオンは怒鳴った。

「ふざけるな!」

「俺の婚約だぞ!」

しかし騎士は困った顔をした。

「貴族会議の決定です」

エルネスタは静かに俯く。

「殿下……」

しかしその瞳の奥では、冷たい計算が始まっていた。

(これはまずいですわね)

王太子の立場が揺らいでいる。

つまり――

自分の未来も不安定になる。

(もし、このまま王太子が失脚したら……)

その頃。

北方港。

私は新しく到着した船を見ていた。

荷物が次々と降ろされていく。

毛皮、鉄、木材。

北方の交易は順調だった。

アシュレイが隣で言う。

「港は成功だな」

「ええ」

私は頷く。

「商人は正直ですから」

利益がある場所へ集まる。

それだけの話だ。

アシュレイは海を見ながら言う。

「王都では」

「王太子妃の決定が延期された」

私は少し驚いた。

「もう?」

「貴族会議が動いた」

私は小さく笑った。

「ずいぶん早いですわね」

アシュレイは言う。

「王国は」

「あなたを中心に回り始めている」

私は首を横に振る。

「違います」

「私は」

私は海を見つめた。

「ただ」

「自分の仕事をしているだけです」

船の鐘が鳴る。

北方の港は今日も賑わっていた。

その一方で――

王太子妃の座は、静かに揺らぎ始めていた。
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