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4-4 ざまぁは永遠に ――「幸福は連鎖するものですの♡」
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第4章 神話になった“返品不可”
4-4 ざまぁは永遠に ――「幸福は連鎖するものですの♡」
---
それから、どれほどの時が過ぎただろう。
ミリアとリオンが“アリアの風”を広めてから、百年以上の月日が流れた。
聖都エル=ルシエラの中心には、白い大理石の塔がそびえている。
塔の頂には、二人が寄り添う姿の女神像――
“笑う二人の神”として祀られたミリアとリオンの像があった。
彼らの物語は語り継がれ、
国の暦には“返品祭(へんぴんさい)”という祝日が生まれた。
かつての“笑祭”が姿を変え、
いまや一年で最も盛大な祝祭として国民に愛されている。
---
その年の返品祭。
街の広場は、再び無数の花びらに覆われていた。
風に舞う白と金の花弁、香る紅茶、響く笑い声。
――すべては、かつて一人の“返品された令嬢”から始まった奇跡。
---
舞台の上に立つのは、一人の少女。
透き通るような銀髪に、優しく光る青の瞳。
名はアミリア=ルシエラ。
ミリアとリオンの遠い子孫にあたる少女だった。
「皆さま、本日もようこそお集まりくださいました!」
彼女の声が魔法の拡声で広場に響く。
「今年も、“返品不可の日”がめぐってまいりましたわ♡」
聴衆が大きな拍手で応える。
“返品不可の日”とは、
誰もが「過去の痛みを返品しない」ことを誓う日。
つまり――もう後悔を抱えて生きないと決意する記念日だった。
---
アミリアは手に持った小さな袋を掲げた。
「こちらは、“ざまぁの種”ですの♡」
袋の中には、代々受け継がれてきた“ざまぁ芽(ざまぁめ)”の種。
困難の中で笑って乗り越える者にだけ、花を咲かせるという。
「どうか、笑いとともに蒔いてくださいませ♡
涙で濡れた土ほど、強く芽吹きますの♡」
観客の中の誰かが叫ぶ。
「アミリア様、女神ミリアみたいです!」
別の子どもが笑って言う。
「ざまぁ!って言ったら、幸せになるんだよね!」
「ええ♡ そのとおりですの♡」
アミリアは笑ってうなずき、舞台の中央で両手を広げた。
「では――恒例の“ざまぁ合唱”を始めますわ♡!」
---
楽団が奏でる明るい音楽。
人々は一斉に声を合わせる。
> 「ざまぁ♡ ざまぁ♡ 笑って今日もざまぁ♡」
「泣くより笑え 泣くより笑え 返品不可のざまぁ♡」
子どもたちが踊り、大人たちが手を叩く。
広場の噴水の上には光の花びらが舞い上がり、
まるで天から女神アリアとミリアが見守っているかのようだった。
---
祭りが終わり、人々が帰ったあと。
夜の広場に残ったアミリアは、そっと塔を見上げた。
“笑う二人の神”の像は、月明かりに照らされ、穏やかな微笑みを浮かべている。
「……ご先祖様。あなたたちの時代から、“ざまぁ”はちゃんと続いてますのよ♡」
彼女は胸に手を当てた。
その胸の奥で、小さな光が脈打つ。
それは代々受け継がれる“幸福の種”――
アリアが残した祝福の欠片。
すると、背後から優しい声がした。
「まだ起きてたのかい、アミリア」
「まぁ、カイル様。お勤め終わりですの?」
「ああ、今日も子どもたちの喧嘩を“ざまぁ”で仲直りさせてきたよ」
「まぁ♡ 素晴らしい平和の方法ですわね♡」
「“ざまぁ外交”って呼ばれてる」
「ええ、きっと女神アリア様も誇らしいですわ♡」
二人は笑い合い、月の光の下で並んで座った。
---
「ねぇ、アミリア」
「なんですの?」
「君は、女神の生まれ変わりなんじゃないか?」
「また、そのお話ですの?」
「いや、本気で言ってる。君が笑うと、花が咲くんだ」
「それは、わたくしが“笑顔で水やりしてる”からですわ♡」
カイルは頭をかいた。
「……君には敵わないな」
「当然ですの♡ わたくし、返品不可の系譜ですから♡」
二人の笑い声が夜空に響いた。
---
そのとき、風が吹いた。
塔の頂から、一枚の花びらが舞い降りる。
白く光るその花弁が、アミリアの手のひらに落ちた。
「……あら?」
花びらが、淡く光を放っている。
すると、どこからか声がした。
> 『ごきげんよう、アミリア♡』
驚いて周囲を見回すと、
塔の上に、淡い光の輪が浮かんでいた。
> 『ふふっ、よく育ててくださいましたわね。
“ざまぁ”の心は、確かに受け継がれておりますわ♡』
それは、千年前の女神――アリアの声だった。
> 『あなたたちの笑いが絶えない限り、
この世界は何度でも幸福を取り戻せますの♡』
アミリアは微笑み、静かにうなずいた。
「もちろんですわ♡ 笑いは、この国の通貨ですもの♡」
> 『よろしいですわ♡ では、今宵は特別に――もうひとつ贈り物を差し上げますの♡』
光が空に広がり、満天の星々が連動して瞬いた。
星々が描くように現れたのは、ひとつの文字。
> 『ざまぁ♡』
カイルが思わず笑う。
「……星空に“ざまぁ”って書かれる国、世界でもここだけだな」
「誇るべき文化ですわ♡」
「確かに!」
二人は見上げながら、手を取り合った。
---
やがて朝が来る。
夜露に濡れた花々が一斉に咲き、朝日を浴びて輝く。
その光景を見ながら、アミリアはそっとつぶやいた。
「ねぇ、アリア様。
“返品不可”って、つまり――
幸福は返品できないほど、手放せないものという意味ですのね♡」
> 『ええ♡ それが“本当のざまぁ”ですわ♡』
風の声が答える。
そしてその声は、朝の空に溶けていった。
---
――それからさらに千年後。
学者たちは古文書を開き、こう記している。
> “この国の笑いは、千年絶えず。
涙はすべて笑顔へと転じ、
悲劇すらも喜劇に変える文化を築いた。
この奇跡を人々は“ざまぁ文明”と呼ぶ。”
ある研究者が笑って言った。
「つまり、国民性が“ざまぁ”ってことだな」
「それを誇る国、他にありませんね」
---
やがて夜。
星空の下で、またひとつの花が咲く。
どこかで誰かが失恋し、けれど笑って「ざまぁ」と言う。
その瞬間、アリアも、ミリアも、アミリアも、
そしてすべての笑った者たちの声が風に乗る。
> 『泣くな♡ 笑え♡ ざまぁ♡』
それは、永遠の祝福の言葉。
---
この物語の結末に、涙はない。
あるのは――笑いながら生き抜いた者たちの、
幸福の連鎖と、終わりなきざまぁの祈り。
そして今も風が吹くたびに、白い花がどこかで咲く。
その名は、女神アリアがつけた唯一の花の名。
> “返品不可(ノンリターン)”
幸福は返品できない。
だからこそ、大切に抱きしめて、笑いながら生きるのだ。
---
4-4 ざまぁは永遠に ――「幸福は連鎖するものですの♡」
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それから、どれほどの時が過ぎただろう。
ミリアとリオンが“アリアの風”を広めてから、百年以上の月日が流れた。
聖都エル=ルシエラの中心には、白い大理石の塔がそびえている。
塔の頂には、二人が寄り添う姿の女神像――
“笑う二人の神”として祀られたミリアとリオンの像があった。
彼らの物語は語り継がれ、
国の暦には“返品祭(へんぴんさい)”という祝日が生まれた。
かつての“笑祭”が姿を変え、
いまや一年で最も盛大な祝祭として国民に愛されている。
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その年の返品祭。
街の広場は、再び無数の花びらに覆われていた。
風に舞う白と金の花弁、香る紅茶、響く笑い声。
――すべては、かつて一人の“返品された令嬢”から始まった奇跡。
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舞台の上に立つのは、一人の少女。
透き通るような銀髪に、優しく光る青の瞳。
名はアミリア=ルシエラ。
ミリアとリオンの遠い子孫にあたる少女だった。
「皆さま、本日もようこそお集まりくださいました!」
彼女の声が魔法の拡声で広場に響く。
「今年も、“返品不可の日”がめぐってまいりましたわ♡」
聴衆が大きな拍手で応える。
“返品不可の日”とは、
誰もが「過去の痛みを返品しない」ことを誓う日。
つまり――もう後悔を抱えて生きないと決意する記念日だった。
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アミリアは手に持った小さな袋を掲げた。
「こちらは、“ざまぁの種”ですの♡」
袋の中には、代々受け継がれてきた“ざまぁ芽(ざまぁめ)”の種。
困難の中で笑って乗り越える者にだけ、花を咲かせるという。
「どうか、笑いとともに蒔いてくださいませ♡
涙で濡れた土ほど、強く芽吹きますの♡」
観客の中の誰かが叫ぶ。
「アミリア様、女神ミリアみたいです!」
別の子どもが笑って言う。
「ざまぁ!って言ったら、幸せになるんだよね!」
「ええ♡ そのとおりですの♡」
アミリアは笑ってうなずき、舞台の中央で両手を広げた。
「では――恒例の“ざまぁ合唱”を始めますわ♡!」
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楽団が奏でる明るい音楽。
人々は一斉に声を合わせる。
> 「ざまぁ♡ ざまぁ♡ 笑って今日もざまぁ♡」
「泣くより笑え 泣くより笑え 返品不可のざまぁ♡」
子どもたちが踊り、大人たちが手を叩く。
広場の噴水の上には光の花びらが舞い上がり、
まるで天から女神アリアとミリアが見守っているかのようだった。
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祭りが終わり、人々が帰ったあと。
夜の広場に残ったアミリアは、そっと塔を見上げた。
“笑う二人の神”の像は、月明かりに照らされ、穏やかな微笑みを浮かべている。
「……ご先祖様。あなたたちの時代から、“ざまぁ”はちゃんと続いてますのよ♡」
彼女は胸に手を当てた。
その胸の奥で、小さな光が脈打つ。
それは代々受け継がれる“幸福の種”――
アリアが残した祝福の欠片。
すると、背後から優しい声がした。
「まだ起きてたのかい、アミリア」
「まぁ、カイル様。お勤め終わりですの?」
「ああ、今日も子どもたちの喧嘩を“ざまぁ”で仲直りさせてきたよ」
「まぁ♡ 素晴らしい平和の方法ですわね♡」
「“ざまぁ外交”って呼ばれてる」
「ええ、きっと女神アリア様も誇らしいですわ♡」
二人は笑い合い、月の光の下で並んで座った。
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「ねぇ、アミリア」
「なんですの?」
「君は、女神の生まれ変わりなんじゃないか?」
「また、そのお話ですの?」
「いや、本気で言ってる。君が笑うと、花が咲くんだ」
「それは、わたくしが“笑顔で水やりしてる”からですわ♡」
カイルは頭をかいた。
「……君には敵わないな」
「当然ですの♡ わたくし、返品不可の系譜ですから♡」
二人の笑い声が夜空に響いた。
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そのとき、風が吹いた。
塔の頂から、一枚の花びらが舞い降りる。
白く光るその花弁が、アミリアの手のひらに落ちた。
「……あら?」
花びらが、淡く光を放っている。
すると、どこからか声がした。
> 『ごきげんよう、アミリア♡』
驚いて周囲を見回すと、
塔の上に、淡い光の輪が浮かんでいた。
> 『ふふっ、よく育ててくださいましたわね。
“ざまぁ”の心は、確かに受け継がれておりますわ♡』
それは、千年前の女神――アリアの声だった。
> 『あなたたちの笑いが絶えない限り、
この世界は何度でも幸福を取り戻せますの♡』
アミリアは微笑み、静かにうなずいた。
「もちろんですわ♡ 笑いは、この国の通貨ですもの♡」
> 『よろしいですわ♡ では、今宵は特別に――もうひとつ贈り物を差し上げますの♡』
光が空に広がり、満天の星々が連動して瞬いた。
星々が描くように現れたのは、ひとつの文字。
> 『ざまぁ♡』
カイルが思わず笑う。
「……星空に“ざまぁ”って書かれる国、世界でもここだけだな」
「誇るべき文化ですわ♡」
「確かに!」
二人は見上げながら、手を取り合った。
---
やがて朝が来る。
夜露に濡れた花々が一斉に咲き、朝日を浴びて輝く。
その光景を見ながら、アミリアはそっとつぶやいた。
「ねぇ、アリア様。
“返品不可”って、つまり――
幸福は返品できないほど、手放せないものという意味ですのね♡」
> 『ええ♡ それが“本当のざまぁ”ですわ♡』
風の声が答える。
そしてその声は、朝の空に溶けていった。
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――それからさらに千年後。
学者たちは古文書を開き、こう記している。
> “この国の笑いは、千年絶えず。
涙はすべて笑顔へと転じ、
悲劇すらも喜劇に変える文化を築いた。
この奇跡を人々は“ざまぁ文明”と呼ぶ。”
ある研究者が笑って言った。
「つまり、国民性が“ざまぁ”ってことだな」
「それを誇る国、他にありませんね」
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やがて夜。
星空の下で、またひとつの花が咲く。
どこかで誰かが失恋し、けれど笑って「ざまぁ」と言う。
その瞬間、アリアも、ミリアも、アミリアも、
そしてすべての笑った者たちの声が風に乗る。
> 『泣くな♡ 笑え♡ ざまぁ♡』
それは、永遠の祝福の言葉。
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この物語の結末に、涙はない。
あるのは――笑いながら生き抜いた者たちの、
幸福の連鎖と、終わりなきざまぁの祈り。
そして今も風が吹くたびに、白い花がどこかで咲く。
その名は、女神アリアがつけた唯一の花の名。
> “返品不可(ノンリターン)”
幸福は返品できない。
だからこそ、大切に抱きしめて、笑いながら生きるのだ。
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