『公爵家を乗っ取った男爵一家は、家系図から消えました』 ―偽令嬢は王太子妃を夢見て国外追放、私は公爵として責務を果たします―

ふわふわ

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第三十話 鉱山からの報せ

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第三十話 鉱山からの報せ

冬の終わり。

王都に、ひとつの報告が届いた。

差出人は、北部鉱山管理官。

内容は簡潔だった。

「元男爵、労役中の事故により死亡」

それだけ。

エレノアは執務室でその書類を受け取る。

蝋封を切り、目を通す。

表情は変わらない。

ルークが慎重に問いかける。

「……いかがなさいますか」

「記録として保管を」

短い答え。

弔意も、感慨もない。

彼は、己の行為の結果を生きた。

それだけのこと。

報告書の下段には、追記があった。

「労役態度は終始不満と反抗的姿勢」

最後まで、自分が“公爵”だと喚いていたらしい。

「私は公爵だ」「こんな場所にいるはずがない」

だが誰も耳を貸さなかった。

番号で呼ばれる男。

名は消え、爵位も消えた。

そして命も。

エレノアは書類を閉じる。

窓の外、薔薇の枝に新芽が出ている。

季節は巡る。

王宮。

王太子も報告を受けていた。

「そうか」

一言だけ。

同情はない。

王家を欺き、血統を偽り、国家を揺るがした。

その終わりとしては、静かなものだ。

廷臣が小声で言う。

「公爵殿には伝わっているかと」

王太子は頷く。

「彼女は動じない」

理解している。

感情で揺れる少女ではない。

公爵だ。

公爵邸。

エレノアは帳簿に目を落とす。

鉱山の収益報告。

皮肉だ。

かつて彼が蔑んだ土地が、今は公爵家の重要な収入源。

「効率は改善されています」

ルークが説明する。

「労役制度も再編済みです」

エレノアは頷く。

過酷さは維持する。

だが無駄は排除する。

それが秩序。

夜。

エレノアはひとり、庭を歩く。

冷たい空気。

遠くで風が鳴る。

彼女は立ち止まる。

恨みはない。

怒りもない。

あるのは結果だけ。

「責務は果たされました」

小さく呟く。

そのとき、王太子が後ろから声をかける。

「報せを聞いた」

「ええ」

短いやりとり。

「何も感じないのか」

問いは静か。

エレノアは少し考える。

そして答える。

「感じる必要がありません」

冷たいわけではない。

終わったことに、情を引きずらない。

王太子は頷く。

「あなたは強い」

「公爵ですから」

いつもの答え。

だが今日は少し違う。

「強くなければ、守れません」

薔薇の新芽が風に揺れる。

春は近い。

鉱山では、番号がひとつ消えた。

誰も記憶しない。

物語の悪役は、静かに幕を閉じた。

だが終わりは、まだ来ない。

エレノアは王太子を見る。

「次は、国を強くします」

王太子は笑う。

「それは王の仕事だ」

「公爵も、同じです」

視線が交わる。

均衡は続く。

強ザマァは完遂。

救済はない。

だが空白ではない。

前へ進む。

公爵エレノアの物語は、責務とともに続いていく。
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