婚約破棄されたら、隠しチートが覚醒しました。元婚約者? 今さら後悔しても遅いですよ♪」

ふわふわ

文字の大きさ
8 / 30

第8話:無限収納の秘密

しおりを挟む
第8話:無限収納の秘密

翌朝、私は早起きして屋敷の台所に立っていた。  
古びた石の炉と、錆びた鍋が一つ。  
それでも、私にはもう関係ない。  
チートの力がある限り、どんな環境でも最高の料理が作れる。

セレナが眠そうに台所に入ってきた。

「お嬢様……もう朝食の準備ですか? 昨日はあんなに料理を作って、疲れているはずなのに……」

私は微笑んで、収納空間に意識を集中した。  
イメージするのは──新鮮な牛肉、玉ねぎ、マッシュルーム、赤ワイン。  
手のひらに光が集まり、ぴったりと切り分けられた上質のステーキ肉が現れる。  
さらに、塩、胡椒、ローズマリーのハーブ。  
すべてが完璧な状態で。

セレナが目を丸くした。

「お、お嬢様! またあの不思議な力で……! こんな立派なお肉、辺境じゃ絶対手に入らないのに!」

「ええ。これが私の秘密の力よ。無限に食材をストックできるの。しかも、腐らないし、いつでも新鮮」

私は炉に火を起こし、鉄板を熱した。  
肉を乗せると、ジューッという心地よい音とともに、香ばしい匂いが広がる。  
表面をこんがり焼いて、中はジューシーなミディアムレア。  
付け合わせに、収納から出したじゃがいもでマッシュポテトと、グリーンサラダ。

セレナが鼻をくんくんさせて、夢見心地で言った。

「もう……匂いだけでお腹が鳴っちゃいます。昨日シチューを食べた時も思いましたけど、お嬢様の料理は本当に神様の味です!」

朝食を二人で食べながら、私は今日の計画を立てた。

「今日は村の人たちに、もっと本格的な料理を振る舞うわ。昨日はシチューだけだったけど、今日はステーキよ。みんなの元気が出るはず」

セレナが目を輝かせた。

「ステーキ!? 村の人たち、泣いて喜びますよ! 私もまた食べたいです……」

私は笑って、さらに肉を追加で作成した。  
収納空間の容量は無限。  
イメージするだけで、何十人分でも作れる。

昼前、村の広場に大きな鍋と鉄板を運んだ。  
昨日より多くの村人が集まっていた。  
噂が広がったのだろう。子供たちが駆け寄り、大人たちも期待の目で見ている。

ガヤルドも腕を組んで立っていたが、昨日の冷たさは少し和らいでいる。

「おい、また料理か? 昨日は確かにうまかったが……毎日そんな贅沢ができるとは思えねえぞ」

私は微笑んで、鉄板を熱し始めた。

「見ててください、ガヤルドさん。今日は特別に、ステーキをお出ししますわ」

肉を乗せると、広場全体に香ばしい匂いが充満した。  
村人たちが一斉に息を呑む。

「こ、この匂い……肉のステーキだって!?」「こんな高級なもん、俺たち一生食ったことねえ……」

私は次々とステーキを焼き、セレナと一緒に皿に盛り付けて配った。  
付け合わせのマッシュポテトとサラダもたっぷり。  
さらに、収納から出した赤ワイン風のジュース(アルコール抜き)で乾杯。

一人のおじいさんが、ステーキを一口食べて、涙を流した。

「お嬢様……こんな美味いもん、夢でも食ったことねえ。ありがとう……本当にありがとう……」

子供たちが「もっと!」とせがみ、女性たちが「どうやって作ってるの?」と興味津々。

その時、一人の少女が近づいてきた。  
20歳くらいの、茶色の髪を三つ編みにした娘。  
少し恥ずかしそうに、私に話しかけた。

「あの……お嬢様。私はマリエッタ。この村で薬草を採ってる者です。昨日のお茶、すごく効きました。風邪が治ったみたいで……」

私は彼女の手を見た。  
指先に薬草の匂いが残っている。  
まさに、薬草チートの伏線にぴったりな人物だ。

「マリエッタさん、薬草に詳しいのね。実は、私も少し薬を作れるの。一緒に何か作ってみない?」

マリエッタが目を輝かせた。

「本当ですか!? 私、ずっと新しい薬草の使い方を探してたんです! お嬢様の料理にも、きっと薬草が合うはず!」

私は収納空間から、現代知識で再現したハーブを取り出した。  
ローズマリー、タイム、バジル。  
さらに、簡単な回復ポーションの材料になる薬草も。

マリエッタが驚きの声を上げた。

「こ、これ……聞いたことない香り! でも、すごく効きそう……!」

ガヤルドがステーキを食べ終わり、私に近づいてきた。

「ふん……確かに、ただの料理じゃねえな。お前の力は本物だ。村の奴らも、昨日より元気になってる」

私は微笑んだ。

「ありがとうございます、ガヤルドさん。これからも協力してくださいね」

ガヤルドは少し照れたように視線を逸らした。

「ああ……まあ、領主としてやる気があるなら、俺も手を貸してやるよ」

夕方、広場での食事会が終わると、村人たちは満足げに家路についた。  
マリエッタは私と一緒に屋敷に戻り、薬草の話を熱心に続けた。

「お嬢様、このハーブで傷薬を作ったら、きっとすごい効果が!」

私は頷き、収納空間で即席の軟膏を作成した。  
マリエッタが試しに古い傷に塗ると、すぐに痛みが引いたと喜ぶ。

セレナが横で興奮していた。

「お嬢様の力、無限ですね! 食材も薬も、なんでも出てくる! もう、王都の高級店なんて目じゃないです!」

夜、屋敷の部屋で私は一人、収納空間を眺めた。  
イメージするだけで、果物、野菜、肉、調味料……無限にストック可能。  
しかも、現代のレシピがすべて頭にある。

(これが、私の無限収納の秘密。  
時間も止まるから、いつまでも新鮮。  
これで、この領地を豊かにできる)

胸の奥で、力がまた少し強くなった気がした。

【スキル進化】  
【食材生成レベルアップ】  
【薬草調合スキル一部解放】

マリエッタが新しい仲間になり、ガヤルドも少し心を開き始めた。

明日からは、もっと本格的な改革を。

私のチートで、この辺境を──  
誰もが幸せに暮らせる場所に変えてみせる。

遠くで、村の灯りが優しく揺れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

わたくし生贄令嬢ですが、なにか? ~愛する王子に婚約破棄されたら、呪われて永遠を生きる最強魔術師を救ってしまいました~

新 星緒
恋愛
公爵令嬢のリリアナは愛する婚約者ガエターノ王子に婚約破棄をされたあげく、災厄の竜の生け贄になれと命じられてしまう。 国内には疫病が流行っているのだが、この竜に生け贄を捧げると災いが消え失せるとの伝承があるからだ。 覚悟と誇りをもって竜の元に赴くリリアナ。だけど突然現れた奇妙な男が、「災厄の竜なんてものはいない」と言ってーー。 ◇◇ 最愛の婚約者に捨てられた令嬢が、呪われて永遠を生きる魔術師に出会って、新しい恋をしたり彼の呪いをとくお話。

最強の薬師、婚約破棄される〜王子様の命は私の懐の中〜

岡暁舟
恋愛
代々薬師として王家に仕えてきたボアジエ公爵家。15代当主の長女リンプルもまた、優秀な薬師として主に王子ファンコニーの体調を整えていた。 献身的に仕えてくれるリンプルのことを、ファンコニーは少しずつ好きになっていった。次第に仲を深めていき、ついに、2人は婚約することになった。だがしかし、ある日突然問題が起きた。ファンコニーが突然倒れたのだ。その原因は、リンプルの処方の誤りであると決めつけられ、ファンコニー事故死計画という、突拍子もない疑いをかけられてしまう。 調査の指揮をとったのは、ボアジエ家の政敵であるホフマン公爵家の長女、アンナだった。 「ファンコニー様!今すぐあの女と婚約破棄してください!」 意識の回復したファンコニーに、アンナは詰め寄った。だが、ファンコニーは、本当にリンプルが自分を事故死させようと思ったのか、と疑問を抱き始め、自らの手で検証を始めることにした……。

婚約破棄?はい、どうぞお好きに!悪役令嬢は忙しいんです

ほーみ
恋愛
 王国アスティリア最大の劇場──もとい、王立学園の大講堂にて。  本日上演されるのは、わたくしリリアーナ・ヴァレンティアを断罪する、王太子殿下主催の茶番劇である。  壇上には、舞台の主役を気取った王太子アレクシス。その隣には、純白のドレスをひらつかせた侯爵令嬢エリーナ。  そして観客席には、好奇心で目を輝かせる学生たち。ざわめき、ひそひそ声、侮蔑の視線。  ふふ……完璧な舞台準備ね。 「リリアーナ・ヴァレンティア! そなたの悪行はすでに暴かれた!」  王太子の声が響く。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

婚約破棄して「無能」と捨てた元婚約者様へ。私が隣国の魔導予算を握っていますが、今さら戻ってこいなんて冗談ですよね?』

鷹 綾
恋愛
王太子アラルガンから「無能」「可愛げがない」と切り捨てられ、 夜会の場で一方的に婚約破棄された公爵令嬢エルフレイド。 だが彼女は、誰にも知られていなかっただけで―― 王国の魔導具開発、結界維持、そして莫大な魔導予算を 一人で回していた超実務型の才女だった。 追放同然で国を去ったエルフレイドを迎え入れたのは、 隣国の「氷の魔導皇帝」ゼノス。 彼は彼女の数字感覚と設計思想を即座に見抜き、 国家予算そのものを託す。 一方、エルフレイドを失った元王国は、 魔導障壁の不具合、予算破綻、偽聖女の無能露呈により 静かに、しかし確実に崩壊していく。 ――そして物語の後半、 焦点は「ざまぁ」から、さらに先へ。 裁かれない元王太子。 英雄を作らない制度。 責任を個人に押し付けない現場。 引き金を引かないという選択。 これは、 「誰かが偉かった」物語ではない。 「誰かを断罪する」物語でもない。 有能な人間が消えたあとも、世界が回り続けるようにする物語。 名前が消え、功績が語られず、 それでも街が守られ続ける―― そんな“完成した世界”に至るまでを描いた、 静かで痛快な大人向け婚約破棄ファンタジー。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

「誰もお前なんか愛さない」と笑われたけど、隣国の王が即プロポーズしてきました

ゆっこ
恋愛
「アンナ・リヴィエール、貴様との婚約は、今日をもって破棄する!」  王城の大広間に響いた声を、私は冷静に見つめていた。  誰よりも愛していた婚約者、レオンハルト王太子が、冷たい笑みを浮かべて私を断罪する。 「お前は地味で、つまらなくて、礼儀ばかりの女だ。華もない。……誰もお前なんか愛さないさ」  笑い声が響く。  取り巻きの令嬢たちが、まるで待っていたかのように口元を隠して嘲笑した。  胸が痛んだ。  けれど涙は出なかった。もう、心が乾いていたからだ。

処理中です...