婚約破棄されたら、隠しチートが覚醒しました。元婚約者? 今さら後悔しても遅いですよ♪」

ふわふわ

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第7話:荒れた領地

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第7話:荒れた領地

馬車が止まった瞬間、私は息を呑んだ。  
辺境の領地──エルグランド家の別領地は、想像以上の荒廃ぶりだった。  
灰色の空の下、荒れた大地が広がり、村の家々は半壊した木造の小屋がまばらに並んでいるだけ。  
畑は雑草だらけで、作物らしきものはほとんど見えない。  
遠くに山々が連なり、時折風が枯れた葉を舞い上げる。

セレナが馬車から降り、荷物を抱えながら周囲を見回した。

「お嬢様……ここが、私たちの新しいお住まいですか? とても……寂しい場所ですわ」

私は頷き、静かに前を向いた。

「ええ。でも、ここから変えていきましょう。まずは、領主として村の人たちに挨拶を」

道中でチートが覚醒したおかげで、心に余裕があった。  
無限収納空間と現代知識──これがあれば、どんな荒地でも再生できるはず。

村の中心らしき広場へ歩くと、数人の村人たちが不審げに私たちを眺めていた。  
痩せた男性、ぼろぼろの服を着た女性、元気のない子供たち。  
全員の目が疲れ切っている。

その時、一人の男が前に出てきた。  
30歳くらいの、筋肉質の体躯。  
黒い髪を短く切り、鎧を着て剣を腰に差している。  
顔には傷跡があり、鋭い視線を向けてくる。

「貴方は……王都から来たという、エルグランド家の娘か?」

彼の声は低く、警戒心が滲んでいる。

私は優雅に一礼した。

「はい。ルーテシア・フォン・エルグランドと申します。この度、この領地の領主となりました。どうぞよろしくお願いします」

男は鼻を鳴らした。

「領主だと? 王都の貴族が、こんな辺境に左遷されてくるなんて、よほどのことだな。俺はガヤルド。この村の騎士団長……と言っても、騎士は俺一人だがな」

ガヤルドの態度が冷たいのは、わかる。  
この領地は長年放置され、王都からの支援もほとんどない。  
領主が来ても、税を搾取するだけだと思っているのだろう。

村人たちがざわめく。

「また貴族か……」「どうせすぐ帰るさ」「飢えで死にそうなのに……」

セレナが不安そうに私の袖を引いたが、私は微笑んだ。

「皆さん、ご苦労をおかけしています。この領地が荒れているのは、私の家系の責任でもありますわ。でも、私はここを変えたいと思っています。まずは、少しですが、皆さんにご挨拶の品を」

私は心の中で収納空間にアクセスした。  
道中で集めた野草と、イメージで再現した肉や野菜。  
現代知識で、簡単な料理を即興で作成──  
手のひらに光が集まり、大きな鍋が現れた。  
中には、熱々のシチュー。  
牛肉、じゃがいも、にんじんを煮込んだ、クリーミーな一品。  
香りが広場に広がる。

村人たちの目が一気に変わった。

「こ、この匂い……」「食べ物?」「そんなにたくさん、どうやって……」

ガヤルドが警戒しながら近づき、鍋を覗き込んだ。

「なんだ、これは? 魔法か? 貴族の遊びか?」

私はスプーンを差し出し、ガヤルドに勧めた。

「どうぞ、召し上がってみてください。皆さんにも分けますわ」

ガヤルドは渋々スプーンを口に運び──  
次の瞬間、表情が緩んだ。

「こ、これは……! こんな美味いもの、食ったことがねえ……温かくて、肉が柔らかくて……」

彼の言葉に、村人たちが我慢できず寄ってきた。  
子供たちが最初に飛びつき、大人たちも次々と鍋に手を伸ばす。  
セレナが笑顔で配り、私はさらに鍋を追加で作成した。

一人のおばさんが、涙を浮かべて言った。

「お嬢様……ありがとうございます。この村は不作続きで、みんなろくに食べられなくて……」

私は優しく頷いた。

「これからは、毎日作りますわ。私の力で、この領地を豊かにします」

ガヤルドが、シチューを食べ終わり、私をまっすぐ見た。

「貴方の力……本当に魔法か? こんな辺境で、そんなことができるのか?」

私は軽く首を振った。

「魔法ではなく、知識と工夫ですわ。でも、皆さんの協力が必要です。ガヤルドさん、あなたの力も貸してください」

ガヤルドは少し考え、ため息をついた。

「ふん……とりあえず、今日のところは信じてやるよ。腹が満たされたら、文句は言えねえからな」

村人たちが少しずつ笑顔になり、広場に活気が戻ってきた。  
子供たちが「もっと!」とせがみ、私はさらにパンを作って配った。

夕方近く、屋敷に戻る頃には、村人たちの視線が少し柔らかくなっていた。  
ガヤルドが、屋敷の門まで見送りに来てくれた。

「明日、領地の現状を説明する。魔物の脅威もある。甘く見るなよ」

私は頷いた。

「わかりました。よろしくお願いしますわ」

屋敷に戻り、セレナが興奮して言った。

「お嬢様の料理、みんなを虜にしましたね! あんなに喜んでくれて……」

私はベッドに座り、収納空間を操作して自分用の夕食を作った。  
ステーキにサラダ、デザートのプリン。  
現代風のメニューが、疲れた身体を癒す。

(これが、私のチート。  
料理で人心を掴み、知識で改革を)

胸の奥で、力がさらに強くなっている気がした。  
明日から、本格的な領地改革が始まる。

ガヤルドの冷たい態度も、少しずつ溶けていくはず。

この辺境が、私の新しい居場所になる。
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