婚約破棄されたら、隠しチートが覚醒しました。元婚約者? 今さら後悔しても遅いですよ♪」

ふわふわ

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第15話:過去の傷

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第15話:過去の傷

魔物討伐の翌朝、屋敷は静かな朝を迎えていた。  
戦いの傷跡を癒すため、私は特別な朝食を用意した。  
温かいスープに、ふんわりとしたオムレツ、焼きたてのパン。  
ギャラクシーは客室から出てきて、無言でテーブルに着いた。

セレナが緊張しながら運び、マリエッタがハーブティーを注ぐ。

「おはようございます、公爵。昨日の疲れは取れましたか?」

ギャラクシーは青い瞳を私に向け、軽く頷いた。

「……君の湯のおかげだ。よく眠れた」

その声はいつもより少し柔らかく、昨夜のキス寸前の余韻がまだ残っている気がした。

朝食を食べながら、彼は領地の話を始めた。

「魔物の異常発生は、私の領地でも深刻だ。原因は不明だが、国境の魔力バランスが崩れているらしい」

私はスープをすすりながら、頷いた。

「私のチート……いえ、知識で作った薬が、少しでもお役に立てば」

彼はフォークを止め、私をまっすぐ見た。

「君の力は、特別だ。どうやってその知識を得た?」

私は少し迷ったが、部分的に本当のことを話すことにした。

「前世の記憶のようなものがあって……現代と呼ばれる世界の知識が、頭にあるんです。料理も、薬も、農業も」

ギャラクシーの瞳がわずかに揺れた。

「前世……転生か。珍しい話ではないが、君のような力は見たことがない」

彼はオムレツを一口食べ、静かに続けた。

「僕も、かつて……似たようなものを失った」

突然の告白に、私は息を呑んだ。

ギャラクシーは窓の外を見つめ、遠い目をした。

「幼い頃、母がいた。優しくて、温かくて、いつも僕のために料理を作ってくれた。甘いケーキや、温かいスープ……あの味が、僕の心を支えていた」

彼の声が、少し震える。

「だが、母は裏切られた。父の側室に毒を盛られ、死んだ。僕はその場にいた。母の最期の言葉は、『ギャラクシー、強く生きて』だった」

部屋が静まり返った。  
セレナとマリエッタが息を潜め、私も言葉を失う。

「それ以来、僕は心を閉ざした。誰も信じない。裏切りは、いつでも起こる。甘いものは、母の記憶を呼び起こすから、避けていた」

彼は私に向き直り、青い瞳に深い影を宿した。

「だが、君の料理を食べて……あの温かさが、蘇った。母の味に似ている。いや、それ以上だ」

私はそっと彼の手を握った。

「公爵……そんな辛い過去を、お話しいただいてありがとうございます。あなたは、強く生きてきたんですね」

彼の指が、私の手を強く握り返した。

「君の前では、なぜか話したくなる。君の料理が、僕の氷を溶かす」

その瞬間、距離が近づいた。  
彼の顔が寄り、息が触れ合う。

「ルーテシア……君は、僕を救ってくれるかもしれない」

唇が、ほんの少し触れそうになった時──  
セレナが慌てて入ってきた。

「お、お嬢様! 村の人が薬を追加で……あっ!」

二人が離れ、ギャラクシーは咳払いをして立ち上がった。

「……失礼。少し、外の空気を吸ってくる」

彼が部屋を出て行き、私は頰を赤らめて胸を押さえた。

セレナが小声で囁いた。

「お嬢様……今、絶対キスするところでしたよね!? 公爵様の目、すごく熱かったです!」

マリエッタも頰を赤くして。

「過去の傷を話すなんて……お嬢様に心を開いてる証拠です! 恋の予感、間違いないです!」

私は微笑み、立ち上がった。

「二人とも、ありがとう。でも、公爵の傷は深いわ。私が、料理で少しずつ癒せたらいいな」

午後、私は特別なデザートを作った。  
ギャラクシーの母の記憶に寄り添う、温かいアップルパイ。  
シナモンとリンゴの甘い香り、ホイップクリームをたっぷり。

屋敷の庭で、彼を待つ。  
ギャラクシーが戻ってきて、パイを見て立ち止まった。

「これは……母が作ってくれたものに、似ている」

私は皿を差し出した。

「食べてみてください。温かいうちに」

彼はゆっくりと一口食べ、目を閉じた。

「……ありがとう、ルーテシア。この味は、君だけが作れる」

彼は私の隣に座り、静かに言った。

「君のそばにいると、過去の傷が痛まない。もっと、君を知りたい。君の料理も、君自身も」

私は頷いた。

「ええ、私もです。公爵のことを、もっと知りたい」

夕陽が庭を染め、二人の距離がまた少し縮まった。

セレナが遠くから見て、興奮しているのがわかった。

(ギャラクシー……あなたのトラウマ、私が癒すわ)

胸の奥で、力が甘く脈打った。

【スキル進化】  
【癒し料理スキル獲得】  
【好感度急上昇】

過去の傷を共有した日。

互いの心が、確実に近づいた。

氷剣公爵の心が、私の温かさで溶け始めている。

これから、もっと甘い時間が待っている。

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