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第4章-2:暴かれた偽りと断罪
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第4章-2:暴かれた偽りと断罪
神殿の鐘が、重々しく鳴り響いていた。
その音は、王都において吉報を告げるものでも、祭りの始まりを告げるものでもない。
それは――“処刑”の予告。
大罪人が裁かれるとき、広場に集まる民に向けて響く、古来から続く宣告の合図だった。
「聖女様が……? 本当に?」
「いや、そんな……だって、癒しの力を……!」
「でも、染めてたって……黒髪じゃなかったんだって!」
「なんで……なんでそんな……!」
王都の民は混乱していた。
一度は心から信じた“再来の聖女”が、偽者だったと知ったときの衝撃。
それは怒りでも、失望でも、恐怖でもなかった。
ただ――空虚だった。
「また……だったのか」
「また“間違えて”たのか、俺たちは……」
* * *
エルミナは、王城地下の石牢に囚われていた。
両手を枷で拘束され、足元には血の滲んだ拘束鎖。
薄暗い空間の中で、彼女は肩を震わせながら、か細く呟いていた。
「……違うのよ……私が、悪いわけじゃないの……」
最初は、ただ“なりたかった”だけだった。
誰かに必要とされたい。
崇められたい。
信じてもらいたい。
自分は特別な存在だと――誰かに言ってほしかった。
黒髪に染め、神殿に現れ、風花の真似をして、演出をして。
人々が信じたとき、初めて、自分が“存在している”と感じた。
けれど、崩れるのはあっという間だった。
侍女の証言。
染料の検出。
癒しの力が薬物によるものであったこと。
神官による報告と証拠の提出。
(全部、バレた……)
「違うのよ……あたしは、求められたの。王も、神殿も……民も! だから私は応えただけ……!」
「黙れ」
看守の無感情な声が響く。
「お前は神を騙った。王命により、本日、処刑が執行される。祈る暇があるなら、悔い改めるがいい」
* * *
その日、王都最大の広場――セレスティア広場には、数千人の民が詰めかけていた。
処刑台の上には、白い処刑衣を着せられたエルミナが、無言で立たされていた。
髪は洗い落とされ、今は本来の淡いピンクが風に揺れている。
かつて“神の象徴”とされた黒は、今やひとつも残っていなかった。
群衆の中に、かつてエルミナに癒されたという老人がいた。
彼は震える声で呟いた。
「……あの子は、確かに優しかった。嘘だったとしても、あの手は……私の痛みを、和らげてくれた」
「それでも、神を騙ることは……許されないのです」
傍らの神官が、重く言い放つ。
やがて、壇上に王が現れる。
王・グラディウスは、沈痛な表情のまま、民に向けて声を放った。
「我らが信じた“新たな聖女”は、偽りであった。黒髪は偽装、癒しは薬と演出……そして何より、神の名を騙ったことこそ最大の罪である」
「よって、王命をもってエルミナを処刑する。これは民の不安を晴らすためではない。国の信仰と誇りを守るためである」
王の宣告が終わると、処刑人がゆっくりと剣を抜く。
エルミナは、その刃先を前にしても、目を閉じたままだった。
最後に、誰かが彼女に問うた。
「……後悔は、ありますか」
しばらく沈黙が続いたあと、彼女はぽつりと呟いた。
「……私は、本物になりたかった」
「……神に、なりたかった」
次の瞬間、剣が振り下ろされた。
――静寂。
処刑を告げる鐘が再び鳴り響き、王都に夜が落ちた。
* * *
王の部屋に戻ったグラディウスは、玉座に座るなり、頭を抱えた。
「……また、失った。偽物を信じ、真実を疑った結果だ」
王は召使に命じる。
「……雪月風花を、探せ。どこにいても、今度こそ……この命に代えてでも、迎え入れよ。彼女こそ、本物の“聖女”だったのだから……」
そして、風花に向けての三度目の召喚が始まる――。
神殿の鐘が、重々しく鳴り響いていた。
その音は、王都において吉報を告げるものでも、祭りの始まりを告げるものでもない。
それは――“処刑”の予告。
大罪人が裁かれるとき、広場に集まる民に向けて響く、古来から続く宣告の合図だった。
「聖女様が……? 本当に?」
「いや、そんな……だって、癒しの力を……!」
「でも、染めてたって……黒髪じゃなかったんだって!」
「なんで……なんでそんな……!」
王都の民は混乱していた。
一度は心から信じた“再来の聖女”が、偽者だったと知ったときの衝撃。
それは怒りでも、失望でも、恐怖でもなかった。
ただ――空虚だった。
「また……だったのか」
「また“間違えて”たのか、俺たちは……」
* * *
エルミナは、王城地下の石牢に囚われていた。
両手を枷で拘束され、足元には血の滲んだ拘束鎖。
薄暗い空間の中で、彼女は肩を震わせながら、か細く呟いていた。
「……違うのよ……私が、悪いわけじゃないの……」
最初は、ただ“なりたかった”だけだった。
誰かに必要とされたい。
崇められたい。
信じてもらいたい。
自分は特別な存在だと――誰かに言ってほしかった。
黒髪に染め、神殿に現れ、風花の真似をして、演出をして。
人々が信じたとき、初めて、自分が“存在している”と感じた。
けれど、崩れるのはあっという間だった。
侍女の証言。
染料の検出。
癒しの力が薬物によるものであったこと。
神官による報告と証拠の提出。
(全部、バレた……)
「違うのよ……あたしは、求められたの。王も、神殿も……民も! だから私は応えただけ……!」
「黙れ」
看守の無感情な声が響く。
「お前は神を騙った。王命により、本日、処刑が執行される。祈る暇があるなら、悔い改めるがいい」
* * *
その日、王都最大の広場――セレスティア広場には、数千人の民が詰めかけていた。
処刑台の上には、白い処刑衣を着せられたエルミナが、無言で立たされていた。
髪は洗い落とされ、今は本来の淡いピンクが風に揺れている。
かつて“神の象徴”とされた黒は、今やひとつも残っていなかった。
群衆の中に、かつてエルミナに癒されたという老人がいた。
彼は震える声で呟いた。
「……あの子は、確かに優しかった。嘘だったとしても、あの手は……私の痛みを、和らげてくれた」
「それでも、神を騙ることは……許されないのです」
傍らの神官が、重く言い放つ。
やがて、壇上に王が現れる。
王・グラディウスは、沈痛な表情のまま、民に向けて声を放った。
「我らが信じた“新たな聖女”は、偽りであった。黒髪は偽装、癒しは薬と演出……そして何より、神の名を騙ったことこそ最大の罪である」
「よって、王命をもってエルミナを処刑する。これは民の不安を晴らすためではない。国の信仰と誇りを守るためである」
王の宣告が終わると、処刑人がゆっくりと剣を抜く。
エルミナは、その刃先を前にしても、目を閉じたままだった。
最後に、誰かが彼女に問うた。
「……後悔は、ありますか」
しばらく沈黙が続いたあと、彼女はぽつりと呟いた。
「……私は、本物になりたかった」
「……神に、なりたかった」
次の瞬間、剣が振り下ろされた。
――静寂。
処刑を告げる鐘が再び鳴り響き、王都に夜が落ちた。
* * *
王の部屋に戻ったグラディウスは、玉座に座るなり、頭を抱えた。
「……また、失った。偽物を信じ、真実を疑った結果だ」
王は召使に命じる。
「……雪月風花を、探せ。どこにいても、今度こそ……この命に代えてでも、迎え入れよ。彼女こそ、本物の“聖女”だったのだから……」
そして、風花に向けての三度目の召喚が始まる――。
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