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第一話 卒業舞踏会の断罪
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第一話 卒業舞踏会の断罪
王立学園の大広間は、眩いほどの光に満ちていた。
高い天井から吊るされた幾重ものシャンデリア。磨き上げられた白大理石の床。壁際には王都でも名高い楽団が並び、優雅な旋律を絶やすことなく奏でている。卒業記念舞踏会――貴族の子女にとって、それは学園生活の締めくくりであると同時に、社交界へ羽ばたくための晴れの舞台でもあった。
色とりどりのドレスが花のように咲き、宝石が揺れるたびに光が散る。
笑い声も、ささやきも、祝福も、すべてがこの夜のために用意されたものだった。
その中心に立つべき令嬢は、誰よりも静かだった。
エレノア・フェルベルク侯爵令嬢。
淡い銀を溶かしたような髪を結い上げ、深い青のドレスを纏った彼女は、華やかな場にあってなお、派手さとは違う気品をまとっていた。すれ違う者はみな思わず目を奪われる。それほど整った容姿でありながら、彼女自身はそれを誇るような素振りを一切見せない。
まっすぐ背を伸ばし、余計な感情を顔に出さず、ただ定められた役目を果たす。
それが、未来の王太子妃として育てられてきたエレノアの在り方だった。
「フェルベルク様、今夜もお美しいですわ」
「ありがとうございます」
「殿下のご婚約者として、本当に非の打ち所がありませんのね」
「もったいないお言葉です」
にこやかな微笑みを浮かべ、相手に礼を返す。
それだけ見れば、完璧な令嬢だった。
だがエレノアは、自分に向けられる賛辞の大半が、ほんの薄い表面しか見ていないことを知っていた。彼女がしてきたのは、優雅に微笑むことだけではない。
癇癪を起こした王太子の機嫌を損ねないよう言葉を選び、問題を起こした相手の家に頭を下げ、失言の後始末をし、無茶な約束が実害になる前に根回しを済ませる。王太子アルヴィスの婚約者になってからの数年、彼女がしてきたことは数え切れなかった。
誰も気づかないところで火を消し続けてきた。
それなのに、表に立つのはいつもアルヴィスで、称賛を受けるのもアルヴィスだった。
エレノアはそれでも構わないと思っていた。未来の王妃とはそういうものだと教えられてきたし、自分もまた、そうあるべきだと信じていたからだ。
少なくとも、今夜までは。
「アルヴィス殿下は?」
エレノアに声をかけた伯爵夫人が、周囲を見回しながら言った。
「先ほどまでは、あちらでご学友たちと」
「そう。今夜は正式に卒業のお披露目でもありますものね。殿下と並ぶあなたを、皆が楽しみにしているのですよ」
「……ええ」
自然に返事をしたものの、胸の内には小さな違和感が残っていた。
今夜のアルヴィスは、先ほどから妙に落ち着きがなかった。視線が定まらず、何かを待っているような、あるいは舞台に上がる前の役者のような高揚を隠しきれていない。
嫌な予感がした。
けれど、その正体は掴めない。
エレノアは扇を閉じ、会場の奥へと視線を向ける。
そして、そのときだった。
ざわり、と空気が揺れた。
広間の一角にいた人々が左右に分かれ、道をあける。その先から歩いてくる人物を見て、エレノアはほんの一瞬、息を止めた。
アルヴィス王太子。
金の髪、整った顔立ち、王族らしい華やかな存在感。見目だけなら誰もが憧れるだろう青年だった。実際、学園でも彼に夢を見る令嬢は少なくない。
だが今、彼の腕に寄り添っている相手を見て、広間のざわめきは驚きと好奇心を含んだものへと変わっていた。
ミレイユ・フェルベルク。
エレノアの義妹だった。
桃色がかった蜂蜜色の髪をゆるく巻き、白に近い淡い薔薇色のドレスをまとったミレイユは、いかにも守ってあげたくなる可憐さを演出していた。大きな瞳は潤み、頬にはうっすらと赤みが差している。
誰が見ても、恋する少女の顔だった。
そして、エレノアは知っている。
あれが、最も効果的な表情であることを。
「……まあ」
「殿下のお隣、ミレイユ様ではなくて?」
「あれは、どういう……」
ささやきが広がる。
エレノアは動かなかった。
動けなかったのではない。動く必要を感じなかった。正確には、この先に何が起きるのかを理解するまで、余計な一歩を踏み出してはならないと身体が判断したのだ。
アルヴィスは、そのまま広間の中央へ進み出た。
楽団の演奏が止まる。
場を支配する沈黙の中、彼は満足げに周囲を見渡した。まるで、自分に注目が集まることを期待していたかのように。
いや、期待していたのだろう。
「皆、よく聞け」
よく通る声が広間に響いた。
「今宵、私はここに宣言する」
その瞬間、エレノアは悟った。
ああ、そういうことなのだと。
「エレノア・フェルベルクとの婚約を、ここに破棄する!」
空気が凍った。
一拍遅れて、場が大きくどよめく。
誰かが息を呑み、誰かが口元を覆い、誰かがあからさまに目を輝かせた。貴族社会において、これほど上等な見世物はそうそうない。王太子による婚約破棄。それも卒業舞踏会の真ん中で。
大広間中の視線が、一斉にエレノアへ突き刺さった。
だが彼女は、まばたき一つしなかった。
驚きで顔色を失うでもなく、取り乱すでもなく、ただ静かにアルヴィスを見つめていた。
その反応が気に入らなかったのか、アルヴィスは眉をひそめる。
「……なぜ黙っている。自分が何をしたのか、分かっていないわけではあるまい」
何をしたのか。
その言葉に、エレノアは心の中だけで薄く笑った。
何をしたのか分からないのは、どちらなのだろう。
それでも彼女は口を開かない。ここで先に言葉を発するのは得策ではない。今はまだ、相手にすべてを喋らせるべきだ。
すると、アルヴィスの腕にすがるようにしていたミレイユが、小さく震えながら一歩前に出た。
「お、お姉様……どうして、あんなことを……」
今にも泣き出しそうな声。
会場の空気が、すっとミレイユの側へ傾いていくのをエレノアは感じた。
そうだろう。事情を知らぬ者が見れば、舞踏会の真ん中で震える可憐な少女と、冷ややかな顔で立つ完璧な婚約者。どちらが加害者に見えるかなど、最初から答えは出ている。
「私は……お姉様に嫌われているのだと、ずっと思っておりました……でも、まさかあんなふうに……殿下とのことまで邪魔なさるなんて……」
すすり泣く。
周囲から同情のため息が漏れた。
エレノアは義妹を見つめたまま、ゆっくりと扇を握り直す。
その芝居が、いつから準備されていたものなのか。
あるいは、準備など必要ないほど慣れたものなのか。
「ミレイユ。もういい、無理をしなくていい」
アルヴィスはひどく芝居がかった優しさでミレイユの肩を抱いた。
「お前はよく耐えてきた。真実を口にするのは辛かっただろう」
「殿下……」
「安心しろ。私が守る」
広間のあちこちで、小さく黄色い声が上がる。
あまりにも陳腐で、あまりにも分かりやすい一幕だった。
けれど、それが効く場所と相手を、アルヴィスはよく知っている。いや、正しくは、彼の隣にいる少女が知っているのかもしれない。
アルヴィスはエレノアへ向き直った。
「エレノア。お前はこれまで、ミレイユを陰で虐げ、社交の場から締め出し、さらには私に虚偽の報告を重ねて彼女の評判を落とそうとした」
ざわ、と再び人々がざわめく。
「身内であることに甘え、その弱い立場につけ込んで、どれほど彼女を苦しめたか……私はすべて知っている」
すべて知っている。
その言葉に、エレノアはようやく口を開いた。
「殿下は、本当に“すべて”をご存じなのですか」
静かな声だった。
だが、しんと張り詰めた広間では、よく響いた。
アルヴィスの顔がわずかに歪む。反論ではなく問い返しだったことが気に入らないのだろう。
「何が言いたい」
「確認しただけです」
「まだ言い逃れをするつもりか」
「言い逃れ、ですか」
エレノアはそこで初めて、ほんの少しだけ表情を和らげた。笑みに見えなくもない、けれど温度のない薄い微笑だった。
それを見て、アルヴィスの眉が吊り上がる。
彼はエレノアに泣いて縋ってほしかったのだ。あるいは、自分の潔白を必死に訴え、みっともなく取り乱す姿を見たかったのかもしれない。そうすれば、自分の選択が正しかったと思えるから。
だがエレノアは泣かない。
取り乱しもしない。
それが、彼には何より腹立たしいのだろう。
「その余裕ぶった態度が気に食わぬ!」
アルヴィスの声が強くなる。
「お前はいつもそうだ。何もかも見透かしたような顔で、私を正そうとする。婚約者だからといって出過ぎた真似ばかりしてきた!」
エレノアは目を伏せた。
その非難には、慣れていた。
少しでも無茶を止めれば口うるさいと言われる。問題が起きる前に手を打てば、勝手なことをすると不機嫌になられる。後始末をしても感謝はされず、当然のように扱われる。
それでも王太子妃となるためだと思い、耐えてきた。
だが今、その忍耐が愚かしいほど遠く感じられた。
「私は、殿下の婚約者として当然の務めを果たしてまいりました」
「黙れ!」
一喝が響く。
「その言い方が傲慢なのだ。まるで自分がいなければ何も成り立たぬかのように!」
エレノアはその言葉を聞いて、心のどこかが不思議なほど静まっていくのを感じた。
ああ、もういいのだ。
この人は、最後まで分からない。
自分が何に支えられていたのかも。何を当然だと受け取ってきたのかも。何を失おうとしているのかも。
「……そうですか」
「何だ、その返事は」
「殿下がそうお考えなら、それで結構です」
アルヴィスは一瞬、言葉に詰まった。
拍子抜けしたのだろう。もっと食い下がると思っていたに違いない。
その隙を埋めるように、ミレイユが再び震える声を出した。
「お姉様、どうして……どうして私ばかり……。私はただ、皆と仲良くしたかっただけなのに……」
ぽろり、と涙が落ちる。
完璧だ、とエレノアは思った。
可憐で、儚げで、傷ついていて、それでも相手を責めきれない優しさを装っている。何も知らない者なら、守りたくなるのも無理はない。
だが、その涙の下にあるものを、エレノアはよく知っていた。
自分のものではないものを欲しがる視線。
奪うことに罪悪感のない笑み。
手に入れたあとに飽きれば、壊れても構わないという残酷さ。
ミレイユは昔からそうだった。
気に入ったリボンがあれば姉の部屋から持ち出した。茶会で褒められた意匠があれば、自分の発案だと言った。使用人がエレノアを慕えば、不出来をでっち上げて追い払わせた。
そして今度は、婚約者だ。
エレノアは、目の前の義妹を見つめる。
ミレイユもまた、一瞬だけこちらを見返した。
泣き顔の奥で、その瞳が笑っていた。
勝った、と。
お姉様のものは、ぜんぶ私のもの。
そう言っているのと同じ目だった。
その瞬間、エレノアの中で何かが完全に切れた。
怒りではない。
悲しみでもない。
もっと冷たく、もっと明確なもの。
――もう、守る必要はない。
「エレノア・フェルベルク」
アルヴィスは厳かさを装い、声を張り上げた。
「私は王太子として、お前との婚約を正式に破棄する。そして今後、私の隣に立つのはミレイユだ」
広間が大きく沸いた。
驚き。興奮。好奇心。悪趣味な喜び。
そこに祝福はほとんどない。それでも当人たちは気づかないのだろう。見世物として盛り上がっているだけの空気を、自分たちへの喝采だと勘違いしている。
アルヴィスはさらに続けた。
「お前のような冷たい女ではなく、私は真実の愛を選ぶ」
その言葉に、会場の何人かがうっとりした顔をした。
あまりに安っぽい台詞に、エレノアはむしろ感心したくなった。
真実の愛。
それは責任も義務も無視して口にすれば、なんと軽い言葉なのだろう。
「返す言葉もないようだな」
勝ち誇った声音で、アルヴィスが言う。
返す言葉なら、いくらでもあった。
殿下がこれまで起こした失態の数。
王家に届くはずだった苦情を誰が処理してきたか。
社交の席で殿下が軽んじた相手が、どれほど危うい立場の人物だったか。
そして、ミレイユがいったい何をし、何を言い、誰を使ってここまで来たのか。
言おうと思えば、いくらでも言えた。
だが、今ここで言う必要はない。
エレノアはゆっくりと背筋を伸ばし、深く一礼した。
その所作の美しさに、一瞬だけ空気が止まる。
顔を上げた彼女は、静かな声で言った。
「承知いたしました」
広間が、再びしんと静まり返った。
承知した。
それだけ。
取り乱しもせず、言い募りもせず、ただ受け入れたその姿に、かえって周囲が戸惑ったのだ。
アルヴィスでさえも予想外だったらしい。
「……は?」
「殿下がそうご決定なさったのでしたら、私は従います」
「そ、そうか。ようやく自分の立場を理解したか」
「ええ。よく分かりました」
その意味を正しく受け取れた者は、この場にはほとんどいないだろう。
だが、エレノアにとっては十分だった。
もう一度だけ、彼女はアルヴィスとミレイユを見た。
金色の未来を手に入れたと思い込んでいる王太子。
姉からすべてを奪ったつもりでいる義妹。
二人とも、まだ知らない。
この瞬間に本当に失われたものが何であるのかを。
「それでは、失礼いたします」
エレノアは踵を返した。
ざわめきが後ろで膨らむ。
誰かが呼び止めるかと思ったが、しばらく誰も動かなかった。あまりにあっさりと去ろうとするものだから、逆に周囲が反応できなかったのだろう。
けれど、数歩進んだところで、低い声が耳に届いた。
「……見事だな」
エレノアは足を止める。
声の主は、会場の壁際、柱のそばに立っていた。
レオンハルト・クラウゼン公爵。
黒に近い濃紺の礼装を隙なく着こなし、銀灰色の髪を後ろへ流した青年は、相変わらず近寄りがたいほど整った顔に感情をほとんど乗せていなかった。冷徹公爵――そう社交界で囁かれるのも無理はない。
無駄を嫌い、情に流されず、容赦もない。
そんな評判の男だった。
その彼が、わずかに口元を上げている。
「クラウゼン公爵様」
「泣き崩れもしないとは。思っていた以上だ」
皮肉にも聞こえる言葉だったが、その瞳には侮蔑はなかった。
むしろ何かを確かめるような、静かな光が宿っている。
「人前で泣く趣味はございませんので」
「そうか」
短い応酬。
それだけなのに、不思議と呼吸が整う気がした。
レオンハルトは広間の中央を一瞥した。
そこではまだアルヴィスとミレイユが注目の中心であり続けている。だが、その熱気はすでに少しだけ質を変え始めていた。祝福ではなく、興味本位の見世物へと。
「今夜のこと、すぐに終わるとは思わぬことだ」
「ええ」
「だが、始まりでもある」
エレノアはその言葉に目を上げた。
レオンハルトはそれ以上何も言わなかった。ただ一礼し、すれ違う。
すれ違いざま、彼の声がもう一度だけ落ちた。
「ようやく自由になったな、エレノア嬢」
その言葉は、驚くほど真っ直ぐに胸へ届いた。
自由。
その響きに、エレノアは初めて、自分がほんの少しだけ震えていることに気づく。
悔しさでなく、悲しさでもなく。
長い間、強く締め付けていた紐が断ち切れたあとの、空白に似た震えだった。
大広間の扉が開く。
夜の冷たい空気が流れ込み、熱に浮かされた会場の匂いを洗い流していく。
エレノアは振り返らなかった。
もう、あの場所に未練はない。
誰のために笑うべきかを考え、誰の失敗を隠すべきかに心を砕き、理不尽に責められても耐えるだけの時間は、今終わったのだ。
階段を下りながら、彼女は胸の奥で静かに呟く。
これで、終わり。
そう思った。
けれど本当は、終わりではなかった。
これはまだ、始まりに過ぎない。
王太子と義妹は、自分たちが勝ったと思っている。
フェルベルク侯爵家の者たちもまた、エレノアが黙って従うと信じているだろう。
ならば、その思い込みのままでいればいい。
彼らがどれほど多くを当然のように奪い取り、どれほど危うい足場に立っているのか――そのことを思い知る日は、きっと遠くない。
冷たい夜風が、頬を撫でた。
エレノアは一度だけ目を閉じる。
そして再び開いた瞳には、もう迷いはなかった。
王立学園の大広間は、眩いほどの光に満ちていた。
高い天井から吊るされた幾重ものシャンデリア。磨き上げられた白大理石の床。壁際には王都でも名高い楽団が並び、優雅な旋律を絶やすことなく奏でている。卒業記念舞踏会――貴族の子女にとって、それは学園生活の締めくくりであると同時に、社交界へ羽ばたくための晴れの舞台でもあった。
色とりどりのドレスが花のように咲き、宝石が揺れるたびに光が散る。
笑い声も、ささやきも、祝福も、すべてがこの夜のために用意されたものだった。
その中心に立つべき令嬢は、誰よりも静かだった。
エレノア・フェルベルク侯爵令嬢。
淡い銀を溶かしたような髪を結い上げ、深い青のドレスを纏った彼女は、華やかな場にあってなお、派手さとは違う気品をまとっていた。すれ違う者はみな思わず目を奪われる。それほど整った容姿でありながら、彼女自身はそれを誇るような素振りを一切見せない。
まっすぐ背を伸ばし、余計な感情を顔に出さず、ただ定められた役目を果たす。
それが、未来の王太子妃として育てられてきたエレノアの在り方だった。
「フェルベルク様、今夜もお美しいですわ」
「ありがとうございます」
「殿下のご婚約者として、本当に非の打ち所がありませんのね」
「もったいないお言葉です」
にこやかな微笑みを浮かべ、相手に礼を返す。
それだけ見れば、完璧な令嬢だった。
だがエレノアは、自分に向けられる賛辞の大半が、ほんの薄い表面しか見ていないことを知っていた。彼女がしてきたのは、優雅に微笑むことだけではない。
癇癪を起こした王太子の機嫌を損ねないよう言葉を選び、問題を起こした相手の家に頭を下げ、失言の後始末をし、無茶な約束が実害になる前に根回しを済ませる。王太子アルヴィスの婚約者になってからの数年、彼女がしてきたことは数え切れなかった。
誰も気づかないところで火を消し続けてきた。
それなのに、表に立つのはいつもアルヴィスで、称賛を受けるのもアルヴィスだった。
エレノアはそれでも構わないと思っていた。未来の王妃とはそういうものだと教えられてきたし、自分もまた、そうあるべきだと信じていたからだ。
少なくとも、今夜までは。
「アルヴィス殿下は?」
エレノアに声をかけた伯爵夫人が、周囲を見回しながら言った。
「先ほどまでは、あちらでご学友たちと」
「そう。今夜は正式に卒業のお披露目でもありますものね。殿下と並ぶあなたを、皆が楽しみにしているのですよ」
「……ええ」
自然に返事をしたものの、胸の内には小さな違和感が残っていた。
今夜のアルヴィスは、先ほどから妙に落ち着きがなかった。視線が定まらず、何かを待っているような、あるいは舞台に上がる前の役者のような高揚を隠しきれていない。
嫌な予感がした。
けれど、その正体は掴めない。
エレノアは扇を閉じ、会場の奥へと視線を向ける。
そして、そのときだった。
ざわり、と空気が揺れた。
広間の一角にいた人々が左右に分かれ、道をあける。その先から歩いてくる人物を見て、エレノアはほんの一瞬、息を止めた。
アルヴィス王太子。
金の髪、整った顔立ち、王族らしい華やかな存在感。見目だけなら誰もが憧れるだろう青年だった。実際、学園でも彼に夢を見る令嬢は少なくない。
だが今、彼の腕に寄り添っている相手を見て、広間のざわめきは驚きと好奇心を含んだものへと変わっていた。
ミレイユ・フェルベルク。
エレノアの義妹だった。
桃色がかった蜂蜜色の髪をゆるく巻き、白に近い淡い薔薇色のドレスをまとったミレイユは、いかにも守ってあげたくなる可憐さを演出していた。大きな瞳は潤み、頬にはうっすらと赤みが差している。
誰が見ても、恋する少女の顔だった。
そして、エレノアは知っている。
あれが、最も効果的な表情であることを。
「……まあ」
「殿下のお隣、ミレイユ様ではなくて?」
「あれは、どういう……」
ささやきが広がる。
エレノアは動かなかった。
動けなかったのではない。動く必要を感じなかった。正確には、この先に何が起きるのかを理解するまで、余計な一歩を踏み出してはならないと身体が判断したのだ。
アルヴィスは、そのまま広間の中央へ進み出た。
楽団の演奏が止まる。
場を支配する沈黙の中、彼は満足げに周囲を見渡した。まるで、自分に注目が集まることを期待していたかのように。
いや、期待していたのだろう。
「皆、よく聞け」
よく通る声が広間に響いた。
「今宵、私はここに宣言する」
その瞬間、エレノアは悟った。
ああ、そういうことなのだと。
「エレノア・フェルベルクとの婚約を、ここに破棄する!」
空気が凍った。
一拍遅れて、場が大きくどよめく。
誰かが息を呑み、誰かが口元を覆い、誰かがあからさまに目を輝かせた。貴族社会において、これほど上等な見世物はそうそうない。王太子による婚約破棄。それも卒業舞踏会の真ん中で。
大広間中の視線が、一斉にエレノアへ突き刺さった。
だが彼女は、まばたき一つしなかった。
驚きで顔色を失うでもなく、取り乱すでもなく、ただ静かにアルヴィスを見つめていた。
その反応が気に入らなかったのか、アルヴィスは眉をひそめる。
「……なぜ黙っている。自分が何をしたのか、分かっていないわけではあるまい」
何をしたのか。
その言葉に、エレノアは心の中だけで薄く笑った。
何をしたのか分からないのは、どちらなのだろう。
それでも彼女は口を開かない。ここで先に言葉を発するのは得策ではない。今はまだ、相手にすべてを喋らせるべきだ。
すると、アルヴィスの腕にすがるようにしていたミレイユが、小さく震えながら一歩前に出た。
「お、お姉様……どうして、あんなことを……」
今にも泣き出しそうな声。
会場の空気が、すっとミレイユの側へ傾いていくのをエレノアは感じた。
そうだろう。事情を知らぬ者が見れば、舞踏会の真ん中で震える可憐な少女と、冷ややかな顔で立つ完璧な婚約者。どちらが加害者に見えるかなど、最初から答えは出ている。
「私は……お姉様に嫌われているのだと、ずっと思っておりました……でも、まさかあんなふうに……殿下とのことまで邪魔なさるなんて……」
すすり泣く。
周囲から同情のため息が漏れた。
エレノアは義妹を見つめたまま、ゆっくりと扇を握り直す。
その芝居が、いつから準備されていたものなのか。
あるいは、準備など必要ないほど慣れたものなのか。
「ミレイユ。もういい、無理をしなくていい」
アルヴィスはひどく芝居がかった優しさでミレイユの肩を抱いた。
「お前はよく耐えてきた。真実を口にするのは辛かっただろう」
「殿下……」
「安心しろ。私が守る」
広間のあちこちで、小さく黄色い声が上がる。
あまりにも陳腐で、あまりにも分かりやすい一幕だった。
けれど、それが効く場所と相手を、アルヴィスはよく知っている。いや、正しくは、彼の隣にいる少女が知っているのかもしれない。
アルヴィスはエレノアへ向き直った。
「エレノア。お前はこれまで、ミレイユを陰で虐げ、社交の場から締め出し、さらには私に虚偽の報告を重ねて彼女の評判を落とそうとした」
ざわ、と再び人々がざわめく。
「身内であることに甘え、その弱い立場につけ込んで、どれほど彼女を苦しめたか……私はすべて知っている」
すべて知っている。
その言葉に、エレノアはようやく口を開いた。
「殿下は、本当に“すべて”をご存じなのですか」
静かな声だった。
だが、しんと張り詰めた広間では、よく響いた。
アルヴィスの顔がわずかに歪む。反論ではなく問い返しだったことが気に入らないのだろう。
「何が言いたい」
「確認しただけです」
「まだ言い逃れをするつもりか」
「言い逃れ、ですか」
エレノアはそこで初めて、ほんの少しだけ表情を和らげた。笑みに見えなくもない、けれど温度のない薄い微笑だった。
それを見て、アルヴィスの眉が吊り上がる。
彼はエレノアに泣いて縋ってほしかったのだ。あるいは、自分の潔白を必死に訴え、みっともなく取り乱す姿を見たかったのかもしれない。そうすれば、自分の選択が正しかったと思えるから。
だがエレノアは泣かない。
取り乱しもしない。
それが、彼には何より腹立たしいのだろう。
「その余裕ぶった態度が気に食わぬ!」
アルヴィスの声が強くなる。
「お前はいつもそうだ。何もかも見透かしたような顔で、私を正そうとする。婚約者だからといって出過ぎた真似ばかりしてきた!」
エレノアは目を伏せた。
その非難には、慣れていた。
少しでも無茶を止めれば口うるさいと言われる。問題が起きる前に手を打てば、勝手なことをすると不機嫌になられる。後始末をしても感謝はされず、当然のように扱われる。
それでも王太子妃となるためだと思い、耐えてきた。
だが今、その忍耐が愚かしいほど遠く感じられた。
「私は、殿下の婚約者として当然の務めを果たしてまいりました」
「黙れ!」
一喝が響く。
「その言い方が傲慢なのだ。まるで自分がいなければ何も成り立たぬかのように!」
エレノアはその言葉を聞いて、心のどこかが不思議なほど静まっていくのを感じた。
ああ、もういいのだ。
この人は、最後まで分からない。
自分が何に支えられていたのかも。何を当然だと受け取ってきたのかも。何を失おうとしているのかも。
「……そうですか」
「何だ、その返事は」
「殿下がそうお考えなら、それで結構です」
アルヴィスは一瞬、言葉に詰まった。
拍子抜けしたのだろう。もっと食い下がると思っていたに違いない。
その隙を埋めるように、ミレイユが再び震える声を出した。
「お姉様、どうして……どうして私ばかり……。私はただ、皆と仲良くしたかっただけなのに……」
ぽろり、と涙が落ちる。
完璧だ、とエレノアは思った。
可憐で、儚げで、傷ついていて、それでも相手を責めきれない優しさを装っている。何も知らない者なら、守りたくなるのも無理はない。
だが、その涙の下にあるものを、エレノアはよく知っていた。
自分のものではないものを欲しがる視線。
奪うことに罪悪感のない笑み。
手に入れたあとに飽きれば、壊れても構わないという残酷さ。
ミレイユは昔からそうだった。
気に入ったリボンがあれば姉の部屋から持ち出した。茶会で褒められた意匠があれば、自分の発案だと言った。使用人がエレノアを慕えば、不出来をでっち上げて追い払わせた。
そして今度は、婚約者だ。
エレノアは、目の前の義妹を見つめる。
ミレイユもまた、一瞬だけこちらを見返した。
泣き顔の奥で、その瞳が笑っていた。
勝った、と。
お姉様のものは、ぜんぶ私のもの。
そう言っているのと同じ目だった。
その瞬間、エレノアの中で何かが完全に切れた。
怒りではない。
悲しみでもない。
もっと冷たく、もっと明確なもの。
――もう、守る必要はない。
「エレノア・フェルベルク」
アルヴィスは厳かさを装い、声を張り上げた。
「私は王太子として、お前との婚約を正式に破棄する。そして今後、私の隣に立つのはミレイユだ」
広間が大きく沸いた。
驚き。興奮。好奇心。悪趣味な喜び。
そこに祝福はほとんどない。それでも当人たちは気づかないのだろう。見世物として盛り上がっているだけの空気を、自分たちへの喝采だと勘違いしている。
アルヴィスはさらに続けた。
「お前のような冷たい女ではなく、私は真実の愛を選ぶ」
その言葉に、会場の何人かがうっとりした顔をした。
あまりに安っぽい台詞に、エレノアはむしろ感心したくなった。
真実の愛。
それは責任も義務も無視して口にすれば、なんと軽い言葉なのだろう。
「返す言葉もないようだな」
勝ち誇った声音で、アルヴィスが言う。
返す言葉なら、いくらでもあった。
殿下がこれまで起こした失態の数。
王家に届くはずだった苦情を誰が処理してきたか。
社交の席で殿下が軽んじた相手が、どれほど危うい立場の人物だったか。
そして、ミレイユがいったい何をし、何を言い、誰を使ってここまで来たのか。
言おうと思えば、いくらでも言えた。
だが、今ここで言う必要はない。
エレノアはゆっくりと背筋を伸ばし、深く一礼した。
その所作の美しさに、一瞬だけ空気が止まる。
顔を上げた彼女は、静かな声で言った。
「承知いたしました」
広間が、再びしんと静まり返った。
承知した。
それだけ。
取り乱しもせず、言い募りもせず、ただ受け入れたその姿に、かえって周囲が戸惑ったのだ。
アルヴィスでさえも予想外だったらしい。
「……は?」
「殿下がそうご決定なさったのでしたら、私は従います」
「そ、そうか。ようやく自分の立場を理解したか」
「ええ。よく分かりました」
その意味を正しく受け取れた者は、この場にはほとんどいないだろう。
だが、エレノアにとっては十分だった。
もう一度だけ、彼女はアルヴィスとミレイユを見た。
金色の未来を手に入れたと思い込んでいる王太子。
姉からすべてを奪ったつもりでいる義妹。
二人とも、まだ知らない。
この瞬間に本当に失われたものが何であるのかを。
「それでは、失礼いたします」
エレノアは踵を返した。
ざわめきが後ろで膨らむ。
誰かが呼び止めるかと思ったが、しばらく誰も動かなかった。あまりにあっさりと去ろうとするものだから、逆に周囲が反応できなかったのだろう。
けれど、数歩進んだところで、低い声が耳に届いた。
「……見事だな」
エレノアは足を止める。
声の主は、会場の壁際、柱のそばに立っていた。
レオンハルト・クラウゼン公爵。
黒に近い濃紺の礼装を隙なく着こなし、銀灰色の髪を後ろへ流した青年は、相変わらず近寄りがたいほど整った顔に感情をほとんど乗せていなかった。冷徹公爵――そう社交界で囁かれるのも無理はない。
無駄を嫌い、情に流されず、容赦もない。
そんな評判の男だった。
その彼が、わずかに口元を上げている。
「クラウゼン公爵様」
「泣き崩れもしないとは。思っていた以上だ」
皮肉にも聞こえる言葉だったが、その瞳には侮蔑はなかった。
むしろ何かを確かめるような、静かな光が宿っている。
「人前で泣く趣味はございませんので」
「そうか」
短い応酬。
それだけなのに、不思議と呼吸が整う気がした。
レオンハルトは広間の中央を一瞥した。
そこではまだアルヴィスとミレイユが注目の中心であり続けている。だが、その熱気はすでに少しだけ質を変え始めていた。祝福ではなく、興味本位の見世物へと。
「今夜のこと、すぐに終わるとは思わぬことだ」
「ええ」
「だが、始まりでもある」
エレノアはその言葉に目を上げた。
レオンハルトはそれ以上何も言わなかった。ただ一礼し、すれ違う。
すれ違いざま、彼の声がもう一度だけ落ちた。
「ようやく自由になったな、エレノア嬢」
その言葉は、驚くほど真っ直ぐに胸へ届いた。
自由。
その響きに、エレノアは初めて、自分がほんの少しだけ震えていることに気づく。
悔しさでなく、悲しさでもなく。
長い間、強く締め付けていた紐が断ち切れたあとの、空白に似た震えだった。
大広間の扉が開く。
夜の冷たい空気が流れ込み、熱に浮かされた会場の匂いを洗い流していく。
エレノアは振り返らなかった。
もう、あの場所に未練はない。
誰のために笑うべきかを考え、誰の失敗を隠すべきかに心を砕き、理不尽に責められても耐えるだけの時間は、今終わったのだ。
階段を下りながら、彼女は胸の奥で静かに呟く。
これで、終わり。
そう思った。
けれど本当は、終わりではなかった。
これはまだ、始まりに過ぎない。
王太子と義妹は、自分たちが勝ったと思っている。
フェルベルク侯爵家の者たちもまた、エレノアが黙って従うと信じているだろう。
ならば、その思い込みのままでいればいい。
彼らがどれほど多くを当然のように奪い取り、どれほど危うい足場に立っているのか――そのことを思い知る日は、きっと遠くない。
冷たい夜風が、頬を撫でた。
エレノアは一度だけ目を閉じる。
そして再び開いた瞳には、もう迷いはなかった。
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