『婚約破棄されたので玉座から降りました。――理で王国をざまあします

ふわふわ

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第三十六話 火元の影

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第三十六話 火元の影

 南部の反対集会は、沈静化した。

 王妃自らの説明と対話により、群衆は散り、広場には静けさが戻った。

 だが、私は確信していた。

 あれは自然発生ではない。

 火は、誰かが点けている。

 王宮・情報局。

「集会参加者の中に、特定の商会の関係者が複数確認されました」

 報告が上がる。

「商会名は?」

「エルドラン商会」

 レオニードが眉をひそめる。

「地方穀物取引を扱う老舗です」

「基金設立で利権が縮小した」

 私は静かに言う。

 教育基金は地方資金の流れを透明化した。

 中間搾取は難しくなる。

「直接の証拠は?」

「ございません」

 証拠がなければ、動けない。

 理は感情では裁かない。

 一方、王妃執務室。

「商会が裏にいる可能性」

 ミレーヌは報告書を閉じる。

「断罪はできません」

「ええ」

 彼女は頷く。

「ならば、どうする」

 夜、私は再び呼ばれた。

「火元は見えました」

 レオニードが言う。

「だが掴めない」

「掴む必要はありません」

 二人が視線を向ける。

「火元を潰せば、別の火が点きます」

「では?」

「湿らせる」

 翌週。

 王宮から新たな布告。

『地方商会連携制度の創設』

 基金と商会を公式に結び、透明な契約を結ぶ。

 参加すれば利益は確保。

 拒めば市場から外れる。

 エルドラン商会は沈黙した。

 選択肢は明白。

「……王妃は、敵を作らない」

 旧来派の一人が呟く。

「だが、逃げ場も作らない」

 それが均衡の強さ。

 正面衝突ではなく、構造で包囲する。

 夜。

 王宮の回廊。

「商会は参加を表明しました」

 側近が報告する。

「よろしい」

 ミレーヌは静かに答える。

 だが、その目には安堵だけではない。

「また別の火が生まれます」

 彼女は言う。

「ええ」

 レオニードも頷く。

「均衡は、終わらない」

 一方、私は塔の窓辺に立つ。

 王都の灯りは穏やかだ。

 火種は消えた。

 だが、影は残る。

 火元を断罪しない。

 だが、自由にもさせない。

 理は静かに締め付ける。

 私は小さく呟く。

「影は、消えませんわ」

 だが、影があってこそ光は際立つ。

 均衡は守られている。

 それでも、次の火種はすでにどこかで燻っている。

 王都の夜は深い。

 そして物語は、さらに深層へと進んでいく。
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