『婚約破棄されたので玉座から降りました。――理で王国をざまあします

ふわふわ

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第三十五話 揺らぎの火種

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第三十五話 揺らぎの火種

 監査委譲案は、表向きは円満に可決された。

 王宮と議会の共同策定。

 理は保たれ、透明性も確保された。

 王都は再び安定を語る。

 だが、均衡が続くほど、焦りは地下へ潜る。

 王宮・情報局。

「地方南部で、王妃基金に対する反対集会が発生」

 報告が上がる。

「規模は小さいが、組織的」

「主導は?」

「表向きは自発的市民団体」

 レオニードは静かに目を細める。

「裏は」

「特定には至らず」

 証拠はない。

 だが、匂いはある。

 一方、王妃執務室。

「民が不安を抱いているなら、説明が必要です」

 ミレーヌは即座に言う。

「反対派を排除すべきではありません」

「ですが、放置すれば拡大します」

 側近の声は慎重だ。

 理は強い。

 だが、感情は理を超える。

 夜、私は呼ばれた。

「火種が生まれました」

 レオニードが言う。

「小さいものです」

「小さい火ほど、油を注がれやすい」

 私は答える。

「どう動く」

「動きません」

 二人が同時に私を見る。

「今は」

 私は続ける。

「集会を禁止すれば、弾圧と騒がれます」

「では」

「見せます」

 翌日。

 王妃は南部へ向かった。

 公式訪問。

 集会予定地の近隣で。

 壇上ではなく、広場で。

「ご不安があると聞きました」

 彼女は穏やかに言う。

「基金の詳細を説明いたします」

 数字、運営方法、監査体制。

 隠さない。

 怒号はあった。

 だが、彼女は遮らない。

「疑問があるなら、質問を」

 対話。

 それは時間がかかる。

 だが、油は注がれない。

 群衆の一人が言った。

「話は初めて聞いた」

「王宮は何も説明しないと思っていた」

 噂は、情報の空白から生まれる。

 空白を埋めれば、火は弱まる。

 王都。

 旧来派の会合。

「……直接出向いたか」

「弾圧を期待したのだが」

「逆効果だ」

 静かな苛立ち。

 彼らは強硬策を望んだ。

 だが、王妃は火種を包んだ。

 夜。

 王宮の庭園。

「怖くはありませんでしたか」

 レオニードが問う。

「少し」

 ミレーヌは正直に答える。

「ですが、逃げれば火は大きくなります」

 彼は頷く。

「私なら、兵を配置していた」

「だからこそ、二人で」

 視線が交わる。

 一方、私は塔から南部の灯りを見ていた。

 火種は消えていない。

 だが、延焼は止まった。

 均衡は守られた。

 しかし、誰かが火を点けようとしている。

 私は小さく呟く。

「次は、火元を探す番ですわね」

 王都は静かだ。

 だが、揺らぎは確実に存在していた。
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