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第三十九話 選ばれなかった未来
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第三十九話 選ばれなかった未来
王都は、穏やかだった。
北境は静まり、南部の不満も鎮まり、商会連携制度は軌道に乗る。
王と王妃は理を選び続け、制度は成熟している。
均衡は保たれている。
――それでも。
王宮の最上階、かつて私が立つはずだった場所。
そこから見下ろす王都は、変わらず美しい。
私は塔の窓辺に立ち、静かな灯りを見つめていた。
あの夜。
婚約破棄が告げられた夜。
私は怒りも涙も見せず、ただ一歩退いた。
もし、あの時。
感情を選んでいたら。
玉座に固執していたら。
制度は生まれただろうか。
王は理を学んだだろうか。
王妃は今の覚悟に辿り着いただろうか。
答えは、ない。
王宮・執務室。
「地方からの新規提案です」
ミレーヌが書類を受け取る。
彼女の所作は、すでに王妃のもの。
迷いはある。
だが、揺れない。
レオニードはその横顔を見る。
「……君は強くなった」
「強くなければ、続きません」
その言葉は静かだ。
だが、以前の少女ではない。
彼女は、選び続けている。
夜。
私は王宮に招かれた。
非公式。
王と王妃、そして私。
「ここまで来られたのは、あなたのおかげだ」
レオニードが言う。
「違います」
私は微笑む。
「あなたが理を選んだからです」
「だが、教えられなければ」
「選ぶのは、あなた」
沈黙が流れる。
ミレーヌが静かに口を開いた。
「……後悔はありませんか」
まっすぐな問い。
私は彼女を見る。
「ありません」
それは本心。
私は選ばれなかった。
だが、私は選んだ。
均衡という道を。
もし、私が王妃になっていたら。
おそらく、制度は違う形だった。
王は違う決断を重ねただろう。
だが、それは今ではない未来。
選ばれなかった未来は、もう存在しない。
王宮の庭園。
三人で立つ。
静かな夜風。
「王国は安定している」
レオニードが言う。
「ええ」
「だが、終わりではない」
ミレーヌが頷く。
「均衡は続きます」
私は静かに空を見上げる。
星は変わらない。
だが、地上は変わった。
婚約破棄から始まったこの物語。
ざまあは、復讐ではなかった。
崩壊ではなかった。
成熟だった。
選ばれなかった未来を恨まない。
選んだ未来を誇る。
それが私の答え。
私は静かに言う。
「これで、ようやく物語の終盤ですわね」
均衡は完成しない。
だが、成熟はする。
王は理を選び続ける。
王妃は責任を受け入れ続ける。
そして私は、外側から制度を磨き続ける。
選ばれなかった未来は消えた。
だが、選んだ未来は、確かにここにある。
王都の灯りは、静かに輝いていた。
王都は、穏やかだった。
北境は静まり、南部の不満も鎮まり、商会連携制度は軌道に乗る。
王と王妃は理を選び続け、制度は成熟している。
均衡は保たれている。
――それでも。
王宮の最上階、かつて私が立つはずだった場所。
そこから見下ろす王都は、変わらず美しい。
私は塔の窓辺に立ち、静かな灯りを見つめていた。
あの夜。
婚約破棄が告げられた夜。
私は怒りも涙も見せず、ただ一歩退いた。
もし、あの時。
感情を選んでいたら。
玉座に固執していたら。
制度は生まれただろうか。
王は理を学んだだろうか。
王妃は今の覚悟に辿り着いただろうか。
答えは、ない。
王宮・執務室。
「地方からの新規提案です」
ミレーヌが書類を受け取る。
彼女の所作は、すでに王妃のもの。
迷いはある。
だが、揺れない。
レオニードはその横顔を見る。
「……君は強くなった」
「強くなければ、続きません」
その言葉は静かだ。
だが、以前の少女ではない。
彼女は、選び続けている。
夜。
私は王宮に招かれた。
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「ここまで来られたのは、あなたのおかげだ」
レオニードが言う。
「違います」
私は微笑む。
「あなたが理を選んだからです」
「だが、教えられなければ」
「選ぶのは、あなた」
沈黙が流れる。
ミレーヌが静かに口を開いた。
「……後悔はありませんか」
まっすぐな問い。
私は彼女を見る。
「ありません」
それは本心。
私は選ばれなかった。
だが、私は選んだ。
均衡という道を。
もし、私が王妃になっていたら。
おそらく、制度は違う形だった。
王は違う決断を重ねただろう。
だが、それは今ではない未来。
選ばれなかった未来は、もう存在しない。
王宮の庭園。
三人で立つ。
静かな夜風。
「王国は安定している」
レオニードが言う。
「ええ」
「だが、終わりではない」
ミレーヌが頷く。
「均衡は続きます」
私は静かに空を見上げる。
星は変わらない。
だが、地上は変わった。
婚約破棄から始まったこの物語。
ざまあは、復讐ではなかった。
崩壊ではなかった。
成熟だった。
選ばれなかった未来を恨まない。
選んだ未来を誇る。
それが私の答え。
私は静かに言う。
「これで、ようやく物語の終盤ですわね」
均衡は完成しない。
だが、成熟はする。
王は理を選び続ける。
王妃は責任を受け入れ続ける。
そして私は、外側から制度を磨き続ける。
選ばれなかった未来は消えた。
だが、選んだ未来は、確かにここにある。
王都の灯りは、静かに輝いていた。
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