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第二十五話 正しいという確信
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第二十五話 正しいという確信
王宮の朝は、いつも通り整然としている。
回廊を歩く侍従の足音も、書類を運ぶ文官の動きも、以前と何ひとつ変わらない。
変わったのは、視線の流れだけだ。
それは目に見えない。
だが確実に、方向がある。
第一王子レオンは、執務室で書類を読んでいた。
王太子女主導の政策一覧。
干ばつ対策、港湾整備、税制安定、外交成功。
成果が並ぶ。
彼は紙を静かに机へ置いた。
「成果が出ている」
それは否定できない事実。
だが彼は続ける。
「だが、急ぎすぎだ」
慎重であることは誤りではない。
無駄を出さないことも、王の務め。
彼はそう信じている。
午前の会議。
議題は隣国との交易拡張第三段階。
わたくしが説明する。
「関税は段階的に緩和。国内産業には補助金を」
財務卿が数字を示し、外務卿が交渉経緯を報告する。
議論は整っている。
レオンは口を開いた。
「拡張はここで止めるべきだ」
視線が集まる。
「安定している今こそ、無理をしない方が良い」
宰相が問う。
「無理とは?」
「拡張は常に反動を生む。急拡大は危険だ」
論理はある。
だが外務卿は冷静に言う。
「交渉国側は既に準備を終えております」
軍務卿も補足する。
「補給体制も整備済み」
国王が短く結論を出す。
「予定通り進めよ」
決定。
レオンは反論しない。
声を荒げない。
ただ座る。
会議後、若い文官が小声で言う。
「第一王子は慎重だな」
「だが今は動く時だ」
悪口ではない。
評価。
夕刻、庭園でレオンはひとり歩く。
風が涼しい。
彼は立ち止まり、空を見上げる。
「私は間違っていない」
婚約破棄も。
男爵令嬢を選んだことも。
急がぬ判断も。
血統の件は知らなかった。
知っていれば違った。
だが知らなかったのは罪か。
彼は自問する。
答えはいつも同じ。
「私は正しい」
だからこそ、焦らない。
いずれ評価は揺り戻す。
急ぎすぎた政策が歪みを生む。
その時こそ自分の出番。
彼は待つ。
自分が間違っていないと証明される日を。
一方、王太子女の執務室では灯りが遅くまで残る。
書類が整理され、決裁が進み、次の政策が整う。
評価は積み重なる。
民の支持は増える。
教会の声明は穏やかだが明確。
軍は忠誠を再確認する。
制度は変わらない。
王子の地位も変わらない。
だが、未来の話題は別の名で語られる。
夜更け。
レオンは机に向かい、白紙の羊皮紙を見つめる。
提案書を書こうとする。
だが筆は止まる。
何を書いても、今は採用されない。
それでも彼は思う。
「待てばいい」
自分は王子だ。
地位はある。
追放されていない。
機会は巡る。
そう信じている。
王宮は静かだ。
誰も彼を責めない。
誰も彼を罰しない。
ただ、選ばない。
それでも彼は確信している。
自分は正しいと。
そしてその確信こそが、彼を動かさずにいた。
王宮の朝は、いつも通り整然としている。
回廊を歩く侍従の足音も、書類を運ぶ文官の動きも、以前と何ひとつ変わらない。
変わったのは、視線の流れだけだ。
それは目に見えない。
だが確実に、方向がある。
第一王子レオンは、執務室で書類を読んでいた。
王太子女主導の政策一覧。
干ばつ対策、港湾整備、税制安定、外交成功。
成果が並ぶ。
彼は紙を静かに机へ置いた。
「成果が出ている」
それは否定できない事実。
だが彼は続ける。
「だが、急ぎすぎだ」
慎重であることは誤りではない。
無駄を出さないことも、王の務め。
彼はそう信じている。
午前の会議。
議題は隣国との交易拡張第三段階。
わたくしが説明する。
「関税は段階的に緩和。国内産業には補助金を」
財務卿が数字を示し、外務卿が交渉経緯を報告する。
議論は整っている。
レオンは口を開いた。
「拡張はここで止めるべきだ」
視線が集まる。
「安定している今こそ、無理をしない方が良い」
宰相が問う。
「無理とは?」
「拡張は常に反動を生む。急拡大は危険だ」
論理はある。
だが外務卿は冷静に言う。
「交渉国側は既に準備を終えております」
軍務卿も補足する。
「補給体制も整備済み」
国王が短く結論を出す。
「予定通り進めよ」
決定。
レオンは反論しない。
声を荒げない。
ただ座る。
会議後、若い文官が小声で言う。
「第一王子は慎重だな」
「だが今は動く時だ」
悪口ではない。
評価。
夕刻、庭園でレオンはひとり歩く。
風が涼しい。
彼は立ち止まり、空を見上げる。
「私は間違っていない」
婚約破棄も。
男爵令嬢を選んだことも。
急がぬ判断も。
血統の件は知らなかった。
知っていれば違った。
だが知らなかったのは罪か。
彼は自問する。
答えはいつも同じ。
「私は正しい」
だからこそ、焦らない。
いずれ評価は揺り戻す。
急ぎすぎた政策が歪みを生む。
その時こそ自分の出番。
彼は待つ。
自分が間違っていないと証明される日を。
一方、王太子女の執務室では灯りが遅くまで残る。
書類が整理され、決裁が進み、次の政策が整う。
評価は積み重なる。
民の支持は増える。
教会の声明は穏やかだが明確。
軍は忠誠を再確認する。
制度は変わらない。
王子の地位も変わらない。
だが、未来の話題は別の名で語られる。
夜更け。
レオンは机に向かい、白紙の羊皮紙を見つめる。
提案書を書こうとする。
だが筆は止まる。
何を書いても、今は採用されない。
それでも彼は思う。
「待てばいい」
自分は王子だ。
地位はある。
追放されていない。
機会は巡る。
そう信じている。
王宮は静かだ。
誰も彼を責めない。
誰も彼を罰しない。
ただ、選ばない。
それでも彼は確信している。
自分は正しいと。
そしてその確信こそが、彼を動かさずにいた。
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