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40話 それでも、日常は続く
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40話 それでも、日常は続く
終わりの日は、いつも拍子抜けするほど静かに訪れる。
祝祭も、宣言も、幕引きの言葉もない。ただ、昨日と同じ朝が来るだけだ。
王宮の朝は、いつも通り整っていた。
報告は短く、資料は薄く、誰も急がない。
「殿下、本日の定例です」
「問題は?」
「ありません。全て基準内です」
「なら、進めてください」
それで終わる。
誰も「完了」とは言わない。
なぜなら――これは終わる仕事ではないからだ。
昼の会合では、議題が一つだけ残っていた。
新しい計画でも、改革でもない。
「……この体制を、今後も維持するという確認です」
側近の言葉に、誰も異を唱えない。
確認すること自体が、すでに形式的だった。
「維持する、でいい」
レオンハルトは短く答える。
「変える理由が出るまでは」
それが、最後の判断だった。
だが同時に、これからも繰り返される判断でもある。
会議が終わり、廊下を歩く。
誰も振り返らない。誰も立ち止まらない。
それぞれが、それぞれの仕事に戻っていく。
(これでいい)
英雄は、いらない。
物語の中心に立つ必要もない。
ただ、日常が続けばいい。
一方、フォーマルハウト領。
私は朝の巡回を終え、丘の上から領地を見下ろしていた。
畑は整い、道は繋がり、人々はそれぞれの場所で動いている。
笑い声も、小さな不満も、すべてが混ざった、普通の風景。
「変わりは?」
執事の問いに、私は首を横に振る。
「ありません」
その答えに、彼は安堵したように息を吐いた。
「それが、一番です」
変わらないことは、退屈ではない。
生きられるということだ。
午後、集会所で最後の確認を行う。
「判断に迷った件は?」
「ありません」
「問題は?」
「ありません」
即答だった。
そして、それ以上の会話は必要なかった。
同じ頃、王宮では一通の文書が静かに保管庫へ収められていた。
改革計画書。初期案。議論の記録。
「保存は?」 「完了しています」
「参照頻度は?」
「ほとんどありません」
「なら、それでいい」
歴史は、引き出しにしまわれる。
日常は、机の上に残る。
夜。
王宮の灯りは、いつも通りに消えていく。
誰も今日を特別な日だとは思わない。
一方、フォーマルハウト領の夜。
私は日誌を開き、最後の一文を書く。
――それでも、日常は続く。
誰かが称えられなくても。
誰かが忘れられても。
判断が記録に残らなくても。
線は引かれ、
基準は守られ、
明日は、今日と同じように来る。
距離は、最後まで変わらなかった。
だが、その距離の中で、王宮と領地はそれぞれに――
同じ結論に辿り着いていた。
続くことこそが、答えだ。
派手な結末はない。
涙も、喝采もない。
あるのは、
明日も仕事があり、
明日も判断があり、
明日も眠れる場所があるという事実だけ。
それで、十分だ。
こうして物語は終わる。
だが、世界は終わらない。
そして今日もまた、
誰にも気づかれないまま――
日常は、確かに続いていく。
終わりの日は、いつも拍子抜けするほど静かに訪れる。
祝祭も、宣言も、幕引きの言葉もない。ただ、昨日と同じ朝が来るだけだ。
王宮の朝は、いつも通り整っていた。
報告は短く、資料は薄く、誰も急がない。
「殿下、本日の定例です」
「問題は?」
「ありません。全て基準内です」
「なら、進めてください」
それで終わる。
誰も「完了」とは言わない。
なぜなら――これは終わる仕事ではないからだ。
昼の会合では、議題が一つだけ残っていた。
新しい計画でも、改革でもない。
「……この体制を、今後も維持するという確認です」
側近の言葉に、誰も異を唱えない。
確認すること自体が、すでに形式的だった。
「維持する、でいい」
レオンハルトは短く答える。
「変える理由が出るまでは」
それが、最後の判断だった。
だが同時に、これからも繰り返される判断でもある。
会議が終わり、廊下を歩く。
誰も振り返らない。誰も立ち止まらない。
それぞれが、それぞれの仕事に戻っていく。
(これでいい)
英雄は、いらない。
物語の中心に立つ必要もない。
ただ、日常が続けばいい。
一方、フォーマルハウト領。
私は朝の巡回を終え、丘の上から領地を見下ろしていた。
畑は整い、道は繋がり、人々はそれぞれの場所で動いている。
笑い声も、小さな不満も、すべてが混ざった、普通の風景。
「変わりは?」
執事の問いに、私は首を横に振る。
「ありません」
その答えに、彼は安堵したように息を吐いた。
「それが、一番です」
変わらないことは、退屈ではない。
生きられるということだ。
午後、集会所で最後の確認を行う。
「判断に迷った件は?」
「ありません」
「問題は?」
「ありません」
即答だった。
そして、それ以上の会話は必要なかった。
同じ頃、王宮では一通の文書が静かに保管庫へ収められていた。
改革計画書。初期案。議論の記録。
「保存は?」 「完了しています」
「参照頻度は?」
「ほとんどありません」
「なら、それでいい」
歴史は、引き出しにしまわれる。
日常は、机の上に残る。
夜。
王宮の灯りは、いつも通りに消えていく。
誰も今日を特別な日だとは思わない。
一方、フォーマルハウト領の夜。
私は日誌を開き、最後の一文を書く。
――それでも、日常は続く。
誰かが称えられなくても。
誰かが忘れられても。
判断が記録に残らなくても。
線は引かれ、
基準は守られ、
明日は、今日と同じように来る。
距離は、最後まで変わらなかった。
だが、その距離の中で、王宮と領地はそれぞれに――
同じ結論に辿り着いていた。
続くことこそが、答えだ。
派手な結末はない。
涙も、喝采もない。
あるのは、
明日も仕事があり、
明日も判断があり、
明日も眠れる場所があるという事実だけ。
それで、十分だ。
こうして物語は終わる。
だが、世界は終わらない。
そして今日もまた、
誰にも気づかれないまま――
日常は、確かに続いていく。
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