婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第4話: 公開の屈辱

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 第4話: 公開の屈辱

数日後の夜、王宮の大広間は再び華やかな宴の場となっていた。

今宵は「聖女ソルスティス・レインズ歓迎の宴」。  
王都の貴族がほぼ全員集まり、シャンデリアの光が一層強く輝いている。中央にはソルスティスが白銀のドレスで立ち、カイロン王子がその隣に寄り添っていた。

エルカミーノは、いつものように控えめな位置に控えていた。  
黒髪をシンプルにまとめ、深い藍色のドレス。宝石は最小限。目立たぬよう、壁際の柱の陰に近い場所を選んでいる。

セシルが心配そうに小声で囁く。

「お嬢様……今日は、なんだか空気が違いますわ」

「……ええ、わかっている」

エルカミーノは静かに頷いた。  
数日前、カイロンが庭園で言った言葉を思い出す。

『まだ公にはできない。もう少し時間をくれ』

――それが、今夜だということは明白だった。

宴の進行が佳境に入り、王が玉座から立ち上がる。  
そして、カイロンが一歩前に進み出た。

「皆さま、本日はお集まりいただき感謝申し上げる」

金髪を優雅に揺らし、完璧な笑みを浮かべる王子。  
会場が静まり返る中、彼はソルスティスの手を取り、ゆっくりと宣言した。

「私は、ここに正式に発表する。  
エルカミーノ・フォン・リンデル嬢との婚約を、解消いたします」

ざわっ……!

大広間に、波のような動揺が広がる。  
貴族たちが顔を見合わせ、囁きが爆発的に増えていく。

カイロンは、まるでそれが当然のように続けた。

「理由は明白だ。ソルスティス・レインズ嬢こそが、真の聖女であり、私の運命の相手だからだ」

彼はソルスティスを抱き寄せ、優しく微笑む。

「彼女の聖なる力は、この国の未来を照らす光となる。  
地味で目立たぬ者ではなく、国民全員を魅了する存在こそ、王妃に相応しい」

――地味で目立たぬ者。

その言葉が、エルカミーノの胸に突き刺さる。  
周囲の視線が一斉に彼女に集中する。嘲笑、好奇、同情、蔑み……さまざまな感情が混じり合った視線。

(……来たわね)

エルカミーノは、静かに深呼吸した。  
涙を見せまいと、唇を軽く噛む。

ソルスティスが、可憐な笑みを浮かべて口を開く。

「エルカミーノ様、どうかお許しくださいませ。  
私、カイロン殿下の幸せのためなら……どんなことでも」

――演技、うまいわね。

前世知識を持つエルカミーノには、それがはっきりわかった。  
ソルスティスは涙目を作りながら、内心では勝ち誇っている。

会場がざわめく中、姉のヴィオラが青ざめた顔で近づいてくる。

「エルカミーノ……!」

しかし、エルカミーノは静かに首を振った。

「姉上、大丈夫です」

彼女はゆっくりと一歩前に進み出る。  
すべての視線が集中する中、優雅に膝を折り、礼をした。

「カイロン殿下のお気持ち、しかと承りました。  
婚約解消を、心よりお受けいたします」

声は震えなかった。  
むしろ、静かで澄んでいた。

カイロンが少し驚いたように目を見開く。

「……お前、泣かないのか?」

「泣く理由はございません。殿下が本当の運命をお選びになったのなら、私もまた、自分の道を歩むだけです」

会場がどよめく。  
誰もが予想した「悪役令嬢の取り乱し」は、起こらなかった。

エルカミーノは、ゆっくりと顔を上げた。  
その瞳は、静かだが、どこか凛としていた。

(やった……! これで、自由よ)

内心で小さくガッツポーズをしながら、  
彼女は静かに微笑んだ。

宴の喧騒は続いていたが、  
エルカミーノの心の中だけは、奇妙なほど晴れやかだった。

――これで、本当に始まる。

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