婚約破棄? それより南方貿易が忙しいのですが

ふわふわ

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第二十四話 帳消し

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第二十四話 帳消し

船は再び港を離れた。

農園での作業が続くと思われた矢先だった。
理由は告げられない。

縄は解かれ、また結ばれる。
別の船。
別の積み荷。

彼は列に並ぶ。

農園で覚えた動きは、もう使わない。

用途が変わる。

それだけ。

船倉は狭い。
暗い。
湿っている。

同じような者たちが押し込まれている。
言葉は通じない。
視線も交わさない。

揺れが始まる。

彼は壁にもたれる。

考えない。

理由も、行き先も。

意味はない。

数日後。

到着したのは、さらに内陸の集積所だった。

鉱区でも農園でもない。

人の売買が行われる場所。

番号が呼ばれる。

彼は前へ。

商人が腕を掴む。
筋を押す。
背中を見る。

頷く。

帳簿に印。

監督が値を告げる。

通訳が短く言う。

彼は理解しない。

だが一つだけ分かる。

また交換された。

用途が変わる。

それだけ。

新しい監督は若い。

目が冷たい。

彼を指差す。

そして番号を言う。

それが彼の呼称。

名ではない。

番号。

彼は頷く。

抵抗しない。

その日の夕刻。

倉庫で荷を動かす最中、事故が起きる。

重い木箱が崩れる。

一瞬の判断。

避ける。

間に合わない。

衝撃。

肩に激痛。

倒れる。

息が詰まる。

周囲が騒ぐ。

監督が近づく。

腕を掴む。

引き起こす。

立てない。

脚が震える。

商人が首を振る。

監督が帳簿を見る。

線を引く。

別の印。

彼は理解する。

価値が下がった。

使いにくい。

運搬効率が落ちる。

彼は立とうとする。

倒れる。

再び立つ。

震える。

だが立つ。

監督は無表情。

命令が飛ぶ。

彼は別の列へ。

軽作業。

倉庫の奥。

日陰。

役割が縮小する。

それは温情ではない。

廃棄前の調整。

数日後。

肩は動く。

だが以前ほどではない。

荷が持てない。

速度が落ちる。

監督が帳簿を見る。

再び線。

印が重なる。

夕刻。

番号が呼ばれない。

列に立たない。

倉庫の奥に座る。

商人が近づく。

低く話す。

監督が頷く。

彼は立たされる。

門の外へ。

別の集団へ押し出される。

用途不明。

行き先不明。

ただ、移動。

彼は振り返らない。

振り返る意味がない。

名を呼ぶ声はない。

番号も呼ばれない。

帳簿は閉じられる。

彼の印は消される。

新しい帳簿に移されるか、
あるいは移されないか。

それは彼には関係ない。

夕日が沈む。

影が長く伸びる。

彼は列の最後尾に立つ。

背筋は伸びている。

怒りもない。

誇りもない。

ただ、立っている。

かつて高みに立った者は、
今や交換の対象ですらなくなった。

名は呼ばれない。

番号も消える。

彼を知る者は、もうどこにもいない。

物語はそこで切れる。

救いはない。

証明もない。

ただ、帳消し。

それが彼の終わりだった。
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