極寒監獄なのにぬくぬく生活!? 追放王女、所長に溺愛されて快適すぎてもう無期懲役にしてください』

ふわふわ

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第34話 調査官様、こちらは“寒さ対策済み”ですわ

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第34話 調査官様、こちらは“寒さ対策済み”ですわ

朝。

極寒監獄の門前に、五頭立ての馬車が止まった。
重厚な外套に身を包んだ男たちが降り立つ。

「王都監査局より参りました。
本日より三日間、極寒監獄の実地調査を行います」

先頭に立つ男は、無表情に書状を差し出した。

キャロはそれを受け取り、さっと目を通す。

「ご苦労さまですわ。道中、寒くありませんでした?」

調査官は一瞬、言葉に詰まった。

「……いえ。問題なく」

「それは何よりです。こちら、まずは温かいお飲み物を。
凍えた頭では、書類も読めませんでしょう?」

***

調査は、想像以上に“拍子抜け”だった。

暖房設備は最新式。
配給は基準以上。
医務室は清潔で、常駐医もいる。

「……これは」

官僚の一人が、報告書に目を落としながら呟く。

「王都の一部施設より、環境が整っていますな」

「でしょう?」

キャロは、にこやかに答えた。

「ここは極寒ですもの。
寒さ対策を怠れば、すぐに死人が出ますわ」

***

午後。

問題は、居住区の視察だった。

「本来、囚人は個室ではなく――」

「ええ、承知しておりますわ」

キャロは、即座に言葉を継ぐ。

「ですから、こちらをご覧くださいな」

案内されたのは、一般囚人区画。

簡素だが、清潔。
二人部屋、十分な暖房、寝具も標準以上。

「……王女殿下のお部屋だけが、特別では?」

「ええ。あれは――」

キャロは、少しだけ間を置いた。

「“国家保護対象”としての措置ですわ」

「国家、保護……?」

「はい。私、まだ正式には釈放されておりませんの」

一同が、凍りつく。

「つまり、私は囚人であり、同時に王族。
どちらの規定も適用される、非常に面倒な存在ですのよ」

***

夕刻。

調査官たちは、別室で協議を始めた。

「違法性は……見当たらない」

「むしろ、模範的だ」

「王都より、ここを改善しろと言われても……」

その結論は、ひとつ。

――手出しできない。

***

夜。

暖炉の前で、キャロは深く息を吐いた。

「……ひとまず、第一関門突破ですわ」

「見事でした」

ヴァルトは、素直に言った。

「攻撃せず、逃げず、説明しきる。
あれ以上の対応はありません」

キャロは、ふふっと笑う。

「だって、奪われる理由を与えていませんもの」

カップを持ち上げ、紅茶を一口。

「ぬくぬくは、力ですわ。
それを理解しない人間ほど、寒さに負けるのですから」

炎が、静かに揺れた。

極寒監獄は、この夜も変わらず暖かい。
だがそのぬくもりは、もはや“無防備な優しさ”ではなかった。

守ると決めた者だけが、保てる温度だった。
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