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第40話 それでも私は、私の居場所を選びますわ
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第40話 それでも私は、私の居場所を選びますわ
朝、馬車は静かに動き出した。
車輪の音は控えめで、街道を揺らすほどではない。
空は澄み、雲は高い。
(……いよいよ、ですわね)
私は窓から外を眺めながら、深く息を吸った。
祖国へ向かう道。
けれど、戻るわけではない。
レオナードは向かいの席に座り、地図を広げている。
指先が示すのは、疫病が最も深刻な地域。
王都ではない。
政治の中心でもない。
「まずは、ここから」
彼は顔を上げ、私を見る。
「一番、声の届かない場所です」
「正しい判断ですわ」
私は頷いた。
象徴を救うより、生活を救う。
それが、今回の支援の本質だ。
昼前、馬車を降りると、空気が変わった。
重い。
湿り気を帯び、薬草と消毒の匂いが混じる。
人々は疲れていた。
だが、絶望してはいない。
(……まだ、間に合います)
私は外套を脱ぎ、袖をまくる。
「ここからは、私の指示に従ってください」
「異論は、受け付けませんわ」
誰も反論しない。
それが、条件として約束された権限だ。
治療は、奇跡ではない。
分別、選別、継続。
水、衛生、隔離。
できることを、できる範囲で、確実に。
魔法は使う。
だが、最小限に。
「治った……」
「息が、楽だ……」
囁きが広がる。
私は微笑まない。
仕事だからだ。
夕方、一区切りついた頃、
レオナードが静かに声をかけてきた。
「……ありがとうございます」
「礼は、結果で返してください」
彼は一瞬驚き、すぐに頷いた。
「必ず」
その一言に、重みはあった。
誓いではなく、選択としての言葉。
夜。
簡易の天幕の外で、私は星を見上げる。
かつてなら、
この光景は“再起の始まり”と呼ばれただろう。
だが今は違う。
(……終わったら、去りますわ)
私は、ここに居続けない。
居場所を固定しない。
助けはする。
関わりは持つ。
けれど、縛られない。
それが、千年転生の果てに選んだ答えだ。
翌朝、治療の体制は現地に引き継がれた。
判断は、彼ら自身が下す。
私は一歩、引く。
「もう、十分ですわ」
そう告げると、
人々は深く頭を下げた。
名を呼ぶ者はいない。
称号もない。
それでいい。
馬車に乗り込む前、
レオナードが私に言った。
「……あなたの居場所は、ここではありませんか」
私は、少し考えてから答える。
「居場所は、選び続けるものですわ」
「決めてしまったら、また奪われますもの」
彼は微笑んだ。
理解している顔だった。
馬車が動き出す。
街道は、また静けさを取り戻す。
私は窓を閉め、目を閉じる。
婚約は破棄された。
追放もされた。
国は、ざまぁを迎えた。
けれど――
それが結末ではない。
私は、今日も選ぶ。
助けるか、去るか。
名乗るか、黙るか。
そして、何者でもないまま、生きる。
それでも私は、
私の居場所を選び続けますわ。
――それが、
誰にも奪われない、
私だけの物語なのだから。
朝、馬車は静かに動き出した。
車輪の音は控えめで、街道を揺らすほどではない。
空は澄み、雲は高い。
(……いよいよ、ですわね)
私は窓から外を眺めながら、深く息を吸った。
祖国へ向かう道。
けれど、戻るわけではない。
レオナードは向かいの席に座り、地図を広げている。
指先が示すのは、疫病が最も深刻な地域。
王都ではない。
政治の中心でもない。
「まずは、ここから」
彼は顔を上げ、私を見る。
「一番、声の届かない場所です」
「正しい判断ですわ」
私は頷いた。
象徴を救うより、生活を救う。
それが、今回の支援の本質だ。
昼前、馬車を降りると、空気が変わった。
重い。
湿り気を帯び、薬草と消毒の匂いが混じる。
人々は疲れていた。
だが、絶望してはいない。
(……まだ、間に合います)
私は外套を脱ぎ、袖をまくる。
「ここからは、私の指示に従ってください」
「異論は、受け付けませんわ」
誰も反論しない。
それが、条件として約束された権限だ。
治療は、奇跡ではない。
分別、選別、継続。
水、衛生、隔離。
できることを、できる範囲で、確実に。
魔法は使う。
だが、最小限に。
「治った……」
「息が、楽だ……」
囁きが広がる。
私は微笑まない。
仕事だからだ。
夕方、一区切りついた頃、
レオナードが静かに声をかけてきた。
「……ありがとうございます」
「礼は、結果で返してください」
彼は一瞬驚き、すぐに頷いた。
「必ず」
その一言に、重みはあった。
誓いではなく、選択としての言葉。
夜。
簡易の天幕の外で、私は星を見上げる。
かつてなら、
この光景は“再起の始まり”と呼ばれただろう。
だが今は違う。
(……終わったら、去りますわ)
私は、ここに居続けない。
居場所を固定しない。
助けはする。
関わりは持つ。
けれど、縛られない。
それが、千年転生の果てに選んだ答えだ。
翌朝、治療の体制は現地に引き継がれた。
判断は、彼ら自身が下す。
私は一歩、引く。
「もう、十分ですわ」
そう告げると、
人々は深く頭を下げた。
名を呼ぶ者はいない。
称号もない。
それでいい。
馬車に乗り込む前、
レオナードが私に言った。
「……あなたの居場所は、ここではありませんか」
私は、少し考えてから答える。
「居場所は、選び続けるものですわ」
「決めてしまったら、また奪われますもの」
彼は微笑んだ。
理解している顔だった。
馬車が動き出す。
街道は、また静けさを取り戻す。
私は窓を閉め、目を閉じる。
婚約は破棄された。
追放もされた。
国は、ざまぁを迎えた。
けれど――
それが結末ではない。
私は、今日も選ぶ。
助けるか、去るか。
名乗るか、黙るか。
そして、何者でもないまま、生きる。
それでも私は、
私の居場所を選び続けますわ。
――それが、
誰にも奪われない、
私だけの物語なのだから。
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