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第23話 決定的な失敗
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第23話 決定的な失敗
補給部隊の馬車列が停まった街道の森。
霧が薄く残る朝の空気の中、捕縛された刺客たちが地面に跪かされていた。
レーヴェントとノルドハイムの騎士たちが、周囲を固く取り囲む。
イセッタは、馬車から降り、刺客のリーダーの前に立った。
「もう一度、聞くわ」
彼女の声は穏やかだが、氷のように冷たい。
「誰の命令で、ここに来たの?」
リーダーは、最初は唇を噛んで黙っていた。
しかし、ルクシオの騎士が剣を抜き、首筋に軽く当てた瞬間――
「……王、王太子殿下の……側近、男爵から……」
刺客の声が、震えながら漏れた。
イセッタは、静かに頷いた。
「証拠は?」
リーダーが、懐から血に汚れた紙を取り出した。
そこには、男爵の直筆と、エクウス王太子の印が押された命令書。
『戦争の混乱に乗じ、イセッタ・フォン・レーヴェントとソニア聖女を暗殺せよ。
成功報酬は金一千万。失敗した場合も、帝国軍のせいにせよ』
イセッタは、それを丁寧に受け取り、広げて確認した。
「これで……三度目ね」
彼女は、ルクシオに視線を向けた。
ルクシオが、冷たく刺客たちを見下ろした。
「全員、生け捕りで王都へ連行する。
貴族会議で、証人として立てる」
騎士たちが、刺客たちを馬に縛り付けた。
ソニアが、馬車から降りてきて、イセッタの袖を引いた。
「イセッタ様……殿下、本当に……?」
イセッタは、ソニアを抱きしめた。
「ええ。
でも、もう終わりよ」
彼女は、静かに空を見上げた。
「これで、決定的な証拠が揃った」
補給部隊は、予定通り前線へ向かった。
ルクシオが、すでに敵の第三波を撃破した後方基地で、イセッタとソニアを迎えた。
「無事だったか」
ルクシオが、イセッタを抱き寄せる。
イセッタは、証拠の命令書を彼に見せた。
「これ……殿下の、最後の陰謀」
ルクシオの瞳が、怒りに燃えた。
「許さん……
戦争を利用して、貴女を狙うとは」
彼は、すぐに王都へ急使を飛ばした。
『新たな暗殺未遂発生。
決定的証拠押収。
戦争終結後、即時貴族会議再開を要請』
王都、王宮。
エクウスは、私室で最後の報告を受けていた。
側近の男爵が、血相を変えて駆け込んできた。
「殿下……失敗です!
刺客が、全員捕縛されました……
命令書も、押収された模様です……!」
エクウスは、椅子から崩れ落ちた。
「そんな……
また……失敗……?」
男爵が、震える声で続ける。
「すでに、王都へ急使が……
レーヴェント家とノルドハイム家が、共同で貴族会議の再開を要請……
陛下も、承認なさいました」
エクウスは、床に膝をつき、頭を抱えた。
「なぜ……
なぜ、何もできない……!」
彼の陰謀は、三度とも失敗。
しかも、毎回、決定的な証拠を残して。
舞踏会の勘違い婚約破棄。
北の街道での刺客。
そして今、戦争中の暗殺未遂。
すべてが、彼自身に返ってきた。
男爵が、最後に呟いた。
「殿下……もう、逃げ場は……」
エクウスは、無言で手を振った。
男爵が、退室する。
一人残されたエクウスは、窓辺に立ち、王都を見下ろした。
遠くに、レーヴェント屋敷の灯。
前線で勝利を重ねる、ルクシオとイセッタの姿が、脳裏に浮かぶ。
「イセッタ……
お前が……俺を、ここまで追い詰めた……」
声は、掠れ、涙が頰を伝った。
しかし、もう遅い。
決定的な失敗。
それは、エクウスのすべてを奪った。
前線では、王国軍がさらに優勢を固めていた。
帝国軍の第四波も、ルクシオの指揮で粉砕。
ソニアの治療で、戦死者はほとんど出ない。
イセッタの補給で、兵士たちは飢えることなく戦えた。
勝利は、目前に迫っていた。
王都では、貴族たちの声が、一つになっていた。
「王太子殿下の罪は、重い」
「王国を危機に陥れたのは、殿下の私怨」
「レーヴェント家とノルドハイム家に、感謝を」
イセッタは、前線でルクシオと並び、戦況図を眺めていた。
「もう、すぐ終わるわ」
ルクシオが、彼女の手を取る。
「貴女のおかげだ」
イセッタは、微笑んだ。
「あなたと、ソニアのおかげよ」
ソニアが、治療テントから出てきて、二人に笑いかけた。
「みんな……生きて、帰れるね」
戦争は、終結へ向かっていた。
そして、エクウスの転落は、
決定的なものとなった。
王宮の控え室で、エクウスは一人、
ただ、崩れ落ちていた。
決定的な失敗。
それは、彼の人生を、永遠に変えた。
王国は、勝利の光に包まれようとしていた。
イセッタたちの、輝かしい未来が、
すぐそこにあった。
(
補給部隊の馬車列が停まった街道の森。
霧が薄く残る朝の空気の中、捕縛された刺客たちが地面に跪かされていた。
レーヴェントとノルドハイムの騎士たちが、周囲を固く取り囲む。
イセッタは、馬車から降り、刺客のリーダーの前に立った。
「もう一度、聞くわ」
彼女の声は穏やかだが、氷のように冷たい。
「誰の命令で、ここに来たの?」
リーダーは、最初は唇を噛んで黙っていた。
しかし、ルクシオの騎士が剣を抜き、首筋に軽く当てた瞬間――
「……王、王太子殿下の……側近、男爵から……」
刺客の声が、震えながら漏れた。
イセッタは、静かに頷いた。
「証拠は?」
リーダーが、懐から血に汚れた紙を取り出した。
そこには、男爵の直筆と、エクウス王太子の印が押された命令書。
『戦争の混乱に乗じ、イセッタ・フォン・レーヴェントとソニア聖女を暗殺せよ。
成功報酬は金一千万。失敗した場合も、帝国軍のせいにせよ』
イセッタは、それを丁寧に受け取り、広げて確認した。
「これで……三度目ね」
彼女は、ルクシオに視線を向けた。
ルクシオが、冷たく刺客たちを見下ろした。
「全員、生け捕りで王都へ連行する。
貴族会議で、証人として立てる」
騎士たちが、刺客たちを馬に縛り付けた。
ソニアが、馬車から降りてきて、イセッタの袖を引いた。
「イセッタ様……殿下、本当に……?」
イセッタは、ソニアを抱きしめた。
「ええ。
でも、もう終わりよ」
彼女は、静かに空を見上げた。
「これで、決定的な証拠が揃った」
補給部隊は、予定通り前線へ向かった。
ルクシオが、すでに敵の第三波を撃破した後方基地で、イセッタとソニアを迎えた。
「無事だったか」
ルクシオが、イセッタを抱き寄せる。
イセッタは、証拠の命令書を彼に見せた。
「これ……殿下の、最後の陰謀」
ルクシオの瞳が、怒りに燃えた。
「許さん……
戦争を利用して、貴女を狙うとは」
彼は、すぐに王都へ急使を飛ばした。
『新たな暗殺未遂発生。
決定的証拠押収。
戦争終結後、即時貴族会議再開を要請』
王都、王宮。
エクウスは、私室で最後の報告を受けていた。
側近の男爵が、血相を変えて駆け込んできた。
「殿下……失敗です!
刺客が、全員捕縛されました……
命令書も、押収された模様です……!」
エクウスは、椅子から崩れ落ちた。
「そんな……
また……失敗……?」
男爵が、震える声で続ける。
「すでに、王都へ急使が……
レーヴェント家とノルドハイム家が、共同で貴族会議の再開を要請……
陛下も、承認なさいました」
エクウスは、床に膝をつき、頭を抱えた。
「なぜ……
なぜ、何もできない……!」
彼の陰謀は、三度とも失敗。
しかも、毎回、決定的な証拠を残して。
舞踏会の勘違い婚約破棄。
北の街道での刺客。
そして今、戦争中の暗殺未遂。
すべてが、彼自身に返ってきた。
男爵が、最後に呟いた。
「殿下……もう、逃げ場は……」
エクウスは、無言で手を振った。
男爵が、退室する。
一人残されたエクウスは、窓辺に立ち、王都を見下ろした。
遠くに、レーヴェント屋敷の灯。
前線で勝利を重ねる、ルクシオとイセッタの姿が、脳裏に浮かぶ。
「イセッタ……
お前が……俺を、ここまで追い詰めた……」
声は、掠れ、涙が頰を伝った。
しかし、もう遅い。
決定的な失敗。
それは、エクウスのすべてを奪った。
前線では、王国軍がさらに優勢を固めていた。
帝国軍の第四波も、ルクシオの指揮で粉砕。
ソニアの治療で、戦死者はほとんど出ない。
イセッタの補給で、兵士たちは飢えることなく戦えた。
勝利は、目前に迫っていた。
王都では、貴族たちの声が、一つになっていた。
「王太子殿下の罪は、重い」
「王国を危機に陥れたのは、殿下の私怨」
「レーヴェント家とノルドハイム家に、感謝を」
イセッタは、前線でルクシオと並び、戦況図を眺めていた。
「もう、すぐ終わるわ」
ルクシオが、彼女の手を取る。
「貴女のおかげだ」
イセッタは、微笑んだ。
「あなたと、ソニアのおかげよ」
ソニアが、治療テントから出てきて、二人に笑いかけた。
「みんな……生きて、帰れるね」
戦争は、終結へ向かっていた。
そして、エクウスの転落は、
決定的なものとなった。
王宮の控え室で、エクウスは一人、
ただ、崩れ落ちていた。
決定的な失敗。
それは、彼の人生を、永遠に変えた。
王国は、勝利の光に包まれようとしていた。
イセッタたちの、輝かしい未来が、
すぐそこにあった。
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