1 / 4
第1章 婚約破棄、されちゃいましたわ?
しおりを挟む
「本日、侯爵令嬢フランボワーズ・ド・シャルティエ殿下と、王太子レオン・ラドクリフ殿下との婚約を正式に発表いたします――」
場内に響いた侍従の声を、わたくし――フランボワーズ・ド・シャルティエはぼんやりと聞いていた。大きく豪華な舞踏会場。王城の中央ホールにあるこの広間には、各国から招かれた貴族や要人がずらりと並び、さながら華やかな花の園のようである。
シャンデリアに照らされた大理石の床。テーブルには贅を尽くした料理の数々。煌びやかな衣装を身にまとった貴族や騎士が見目麗しく舞い、華やかな音楽が流れ続ける。まるで絵画のような光景……のはずなのだけれど、正直わたくしには、あまりピンと来ていなかった。
「では、レオン殿下。皆さまにご挨拶を……」
王宮侍従がそう促すと、わたくしの――一応まだ婚約者の立場である王太子レオン殿下は、金色の長髪をふわりと揺らして笑みを浮かべる。
「皆の者、よく集まってくれた。今日は父上のご意向もあって、フランボワーズとの婚約披露の場を設けた。これまでフランボワーズとは形式上の婚約だったが、俺は……」
その言葉を受けて、わたくしはちらりとレオン殿下を盗み見る。背が高く、優美な顔立ち。王家の血筋を示す碧眼は凛としており、貴公子と呼ぶにふさわしい外見だ。小さいころは多少なりとも憧れた記憶があるけれど……今は何と言えばいいのか。
正直、わたくしは彼に強い興味はない。というか、昔からいまいち波長が合わなかった。それに、世間が思うような「王太子との婚約! なんて幸せ!」という気持ちもあまり湧かない。わたくしは自分の好きなこと――たとえば珍しい草花を観察したり、ちょっとした錬金術の実験をしたり、ゆっくりお茶を楽しんだり――そういう日常が大切。
確かに、わたくしは侯爵家の令嬢として、それなりに贅沢な暮らしを送っている。でも、政略結婚みたいな関係で一生を縛られるなんて、なんだか息苦しい。だから、周囲には申し訳ないが、「もしこの婚約がなくなれば、もっと気楽に生きられるのに……」と思っていたのだ。もちろん、そんなことを口に出すわけにはいかない。
「――俺は、婚約者として今後も彼女を大切にしていこうと考えている。もっとも、まだ日取りなどは決まっていないがな。父王の許可と、貴族院の承認が降りれば、早いうちに結婚式を挙げるだろう」
レオン殿下は淡々と述べ、場の貴族たちは拍手で応じる。
(あら……わたくしとの結婚を、そんなに早めたいのかしら?)
疑問に思うが、殿下の考えはよくわからない。彼と話していると、いつも心ここにあらずというか、自分が中心に世界が回っているような雰囲気を感じる。
わたくしは常に微笑みを浮かべ、彼の手前、演技するように振る舞ってきた。祖父母や両親にも「どんな相手であっても、婚約というのは家のため。フランボワーズならうまくやれるだろう」と言われていたし。
ただ、心底から惚れた相手ではないから、どうしても自然体になれない。『フワフワした天然』だと言われるわたくしだけど、こういうときばかりは演技が苦手だ。
「さて、続いてはお待ちかねの余興として、余のご友人を紹介しよう」
レオン殿下が声を張ると、場がざわっと湧く。
「ご友人……?」
侍従が「殿下、それはまだ正式にお披露目するには早いのでは……」と慌てて耳打ちするが、殿下は気にした様子もなくウインクを飛ばした。
「いや、構わない。皆に知ってもらいたいのだ。俺が、真に愛する相手を」
――真に愛する相手?
その言葉に、わたくしを含め周囲の人々も目を見開く。だって、わたくしはここにいる“婚約者”では? まさか、ここでアピールするのはわたくしのこと……だろうか?
いや、違う。レオン殿下の視線は、わたくしではない場所を向いていた。
「ご紹介しよう。彼女こそが俺の運命の相手、そしてこの国を救う“聖女”だ。――カレン、こちらへ」
金の髪を持つ騎士たちが列を作り、スポットライトが当たるかのように、レオン殿下が呼び寄せたのは――華奢で可愛らしい少女だった。
栗色の髪を肩口でゆるくまとめ、蒼い瞳を大きく瞬かせた彼女。名前は確か……カレン、と言った。平民出身の孤児だが、聖女として奇跡を起こす不思議な力を持っていると噂されている。
その証拠に、教会や辺境伯領でも数々の“奇跡”を披露し、病を治したり作物を豊かに実らせたりしているらしい。ただ、王宮に招かれてまだ日が浅く、公式な場に出るのは初めてのはず。
カレンは少し恥ずかしそうに微笑んでいる。レオン殿下は彼女の手を取り、高々と掲げた。
「このカレンこそが、俺の唯一無二の……真の愛だ。今日ここで、皆に伝えたい。――フランボワーズとの婚約は破棄させてもらう。俺はカレンと結ばれるつもりだ!」
レオン殿下の高らかな宣言に、会場は一瞬で静まり返った。いや、静まったというよりは、あまりに想定外の事態で息を呑んだのだ。
わたくしは、ぽかんと口を開けてしまう。
(婚約……破棄? わたくしと殿下の……?)
「ちょ、殿下!」
「婚約破棄など……そ、そんな!」
「国同士の取り決めはいったいどうなるのだ!?」
貴族たちや侍従、護衛の騎士がどよめき、ざわざわと会場が騒然となる。
わたくしの父であるシャルティエ侯爵も、母も、驚きと動揺で言葉が出ない様子だ。
――だが。
しかしながら、わたくしは心のどこかで「やった……!」と思ってしまった。だって、わたくしは正直、王太子との結婚をそこまで望んでいなかったのだから。家名のためや、世間体のため、断れずにいた。
それが、先方から破棄を言い渡してくれるなんて。
こんなとき、普通なら「なんてひどいことを!」と怒るか、「どうかお許しを……」と涙ぐむかもしれない。
しかしわたくしは根っからの“天然”らしい。頭の中では「あらまあ、なんだかラッキー?」と感じている。おかげで、口をついて出た言葉は奇妙に明るいトーンになってしまった。
「えっと……つまり、わたくしとの婚約を解消して、カレン様と結ばれると……。それは、おめでとうございます!」
会場がさらに静まる。殿下もカレンも、言葉を失ったようにわたくしを見ている。
「……おめでとう、とはどういう意味だ」
「だって、真に愛する方と出会えたのですから、それは喜ばしいことではありませんか? わたくし、心からお祝い申し上げますわ」
――パチパチパチ。
そう言って、わたくしは手を叩いてしまう。いや、本当に拍手までしてしまった。場の空気は凍りつき、わたくしの父母は泡を食っている。
「フ、フランボワーズ!?」
「あなた、今はそんな……!」
父も母も声にならないほど動揺しているが、わたくしは止まらない。これを逃せば、また面倒な情勢に巻き込まれるかもしれない。“ここできちんと潔く祝福して、退場するのが吉だ”――頭の中にそんな声が聞こえるのだ。
そして、わたくしの特技(?)である“らっきーすとらいく”が発動するのだろう。小さいころから、どうにもわたくしの運は変に強いらしい。ピンチに思える場面でも、なぜか結果的にうまく転がることが多い。
例えば――
幼少期、散歩中にあやまって川に落ちて溺れそうになったとき、偶然通りかかった漁師さんに速攻で助けられて、さらに珍しい貝をお土産にいただいた。
あるいは、貴族学校でアルコールランプを使った実験の際、火加減を誤って爆発しかけたところ、なぜか新種の香水として流行するような香りが生まれ、学校中から称賛された。
――そんな感じで「え、それって普通失敗でしょ?」というところから、いつの間にか大成功になる。周囲からすると不可解な出来事らしいけれど、わたくし自身には全くコントロールできないのだ。
今回も、この“らっきーすとらいく”が作用しているのか、わたくしはまったく動じることなく笑顔を絶やさない。むしろ「これで自由だわ!」という明るさが勝っている。
「フランボワーズ……お前は今の状況をわかっているのか?」
レオン殿下が困惑した顔で問うが、わたくしは心からの笑みで返す。
「はい、殿下がわたくしとの婚約を破棄したいのでしょう? でしたら、光栄です。――あ、ちなみに退席したほうがよいですか? それとも正式に破棄の証書を書かれます?」
とことんマイペースな物言いで、われながら大丈夫かしら、と少しだけ不安になる。でも既に言ってしまったものは仕方ない。
「フフン……その通りだ。これで、お前は自由だぞ」
レオン殿下は言葉に詰まりつつも、それを勝利宣言のように言い切った。その横にいるカレンは俯きがちだが、目はわずかに揺れている。
貴族たちの間からはいくつか声が上がる。
「しかし、あまりにも突然すぎる……」
「フランボワーズ様は動じていないようだが、これではシャルティエ侯爵家の顔が立たないのでは?」
「ど、どうなるのだ……!?」
わたくしの父はすぐに王へと談判しようと動きかけるが、時既に遅し。
王太子であるレオン殿下自身が“正式に婚約破棄を言い渡す”と宣言したからには、ここで逆らうと王家との関係がこじれてしまう恐れがある。
それに、当のわたくしが笑顔で「おめでとうございます」と言ったから、もはや誰も止めようがない状況らしい。
「……それなら、フランボワーズ様も堂々としていらしたほうがよろしいわ」
困り果てた母に、わたくしは小声で囁く。
「大丈夫ですわ、お母様。わたくし、困っていませんから」
「でも……!」
「むしろ喜ばしいことですの。これで次の道が開けるかもしれませんし」
わたくしの曇りなき笑顔に、母はしばし唖然とする。
「……あなた、昔からそういうところがあるわね。いつも天真爛漫で、ちょっと羨ましいくらい」
母はため息まじりに微笑む。父はまだ複雑そうな顔をしているが、ともかくわたくしの意思を尊重してくれるらしい。
「皆の者、今日はこれでお開きとしよう! 俺とカレンの披露はまた改めて行う!」
レオン殿下は勢いよく言い切り、カレンを連れて去っていく。残されたわたくしたちに、重い空気が漂うが、わたくしは足元を正してペコリとお辞儀した。
「本日はお騒がせしてしまい、申し訳ございません。わたくしは失礼いたしますわ」
こうして、王城の舞踏会は事実上お開きになり、わたくしの婚約はあっという間に“解消”された。
しかし不思議なことに、心は軽やかだった。まるで重石が取れたような爽快感。その理由は明白である。
(これで、わたくし、好きに生きていいってことよね?)
その夜、シャルティエ侯爵家
「フランボワーズ。正直言って、父としては今回の婚約破棄は大きな痛手だと思っている。王家との結びつきがなくなるということは、我が家の後ろ盾も弱くなる。だが……お前の気持ちを尊重したい。つらくないのか?」
父は複雑そうにテーブルを叩いている。
王城から帰宅したわたくしと両親は、小さなサロンで膝を突き合わせていた。侍女や執事は遠慮して奥へ下がり、家族だけの会話にしている。
「はい、お父様。わたくしは大丈夫です。むしろ、ほっとしているくらいですわ」
「ほっと……そうか。本当にそうなのだな?」
「はい。だって、王太子殿下との婚約が解消された今、わたくしはもう“王太子妃としての完璧な立ち居振る舞い”を要求されなくて済みますもの。自由に、好きに過ごせる時間が増えますわ」
無邪気にそう言うと、父は何とも言えない顔をする。母は母で「あなたいつも本音を隠さないわね」と呆れたように微笑む。
わたくしは正直、これまでずっと無理をしてきたと思う。幼少期に許嫁が決まり、淑女教育を徹底され、王太子妃になるのに相応しいと周囲が言い立てた。
けれどもわたくしは、動植物の研究や錬金術のほうが好きで、毎日の勉強やマナーの稽古は苦痛だった。何よりも――レオン殿下自身と相性が良いと思えなかった。
「ただ、問題はこれからよね。王家が一方的に破棄を通したとなると、世間からは『捨てられた可哀想なフランボワーズ様』みたいな目で見られるかもしれません。ご縁談も減るだろうし……」
母が心配そうに言うのも無理はない。わたくしが独身のまま過ごすと決めても、侯爵家としては大きな課題になる。
「そこは、僕らも何とかするから。お前が本当に望む道を探してみるのもいいだろう。錬金術士として生きるのも面白いかもしれん」
父はそう言って、わたくしの趣味に理解を示してくれる。ちょっと昔では考えられないことだ。
「ただし、何かあっても自己責任だぞ。……もしお前が本当に困ったときは、この家が支えるから遠慮なく頼れ」
「はい、お父様。ありがとうございます」
わたくしは心からお礼を言って、ちょこんと頭を下げた。
これで一件落着――かと思いきや、世間の目はそう甘くないらしい。翌日以降、街や貴族の間で、「婚約破棄されたフランボワーズ可哀想」「捨てられ令嬢」などという噂が飛び交い始めた。
ただ、その噂を耳にしても、わたくしはそれほど気にならない。噂はいつの時代も勝手に広まっていくもの。それに関わっていたらキリがない。
それよりも、今は解放感でいっぱいなのだ。
数日後、侯爵家の離れにて
わたくしは離れにある研究室――と言っても物置を改造した狭い小部屋――で、新しい薬の調合を試みていた。
「ええと、まずは白芍薬の根を粉にして、それに月光草のエキスを混ぜて……。あら? 分量は……ああ、しまった。ちょっと入れすぎちゃいましたわ」
――ポンッ。
小さな爆発音。香ばしいというか、どこか爽やかな香りの煙がふわりと立ち上る。
「きゃっ……!」
慌てて後ずさるわたくし。背後の棚にぶつかって道具が落ちそうになるが、ふと足元にあった箱が偶然その道具を受け止め、割れずに済んだ。
(危ない……。でも、割れなくて助かりましたわ。らっきーすとらいく、かもしれません)
こんな小さな幸運まで、わたくしの周りではしょっちゅう起こる。周囲からは「あなたの天然と運の強さは奇跡的」などと評されるけれど、当のわたくしは特に意識していない。
「さて、爆発しちゃったけど、粉末が焦げたわけではないのね。どれどれ……」
湧き立つ白い煙を手で仰ぎながら、容器に残った粉末を慎重に観察する。色は少しだけ茶色がかっているが、月光草のエキスが加わったせいか、かすかに蛍光色を帯びているようにも見える。
「うーん……下手に舐めるわけにもいかないし、もう少し検証が必要そうですわね」
そうして試行錯誤していると、ノックの音がした。
「失礼いたします、フランボワーズお嬢様。奥様が呼んでいらっしゃいますが、今お時間ございますか?」
侍女のドロテアが顔を覗かせる。わたくしは慌てて白衣の代わりに使っていたエプロンを外した。
「あ、はい。すぐ行きますわ。ちょっと片付けを……あれ、どこかに洗剤が……」
棚の裏を覗き込み、あたふたしていると、ドロテアが優しく微笑んだ。
「お片付けはわたくしがやっておきますから、お嬢様は奥様のもとへどうぞ」
「そう? それでは甘えさせていただきますわ。ありがとう、ドロテア」
急いで汚れの少ない上着に着替え、母の待つ部屋へ向かう。
長い廊下を歩きながら、わたくしは思う。こうして自分の好きな研究を続けても、誰も文句を言わなくなった。王妃教育の押し付けもなくなり、堅苦しいイベントへの出席も最小限で済む。
(――ああ、なんて気楽なんでしょう。婚約破棄……最高かもしれませんわ)
母からの相談
母がいるのは、一階の客間だ。わたくしがドアを開けると、母はソファに腰掛けて少し難しそうな顔をしていた。
「フランボワーズ、来たわね。……あの、実は突然なんだけれど、こういう話が舞い込んできたの」
手渡されたのは、一通の書簡。開けてみるとそこには、王城からの呼び出し通知が書かれていた。
「王城……殿下、ではなく国王陛下からですの?」
「ええ。レオン殿下はもちろんだけれど、どうやら『正式な書面』としてフランボワーズ宛に送られてきたみたい。記録上、まだ婚約破棄の手続きが完了していないんですって」
「まあ……やっぱり書類が必要なのですね」
わたくしは、あの場で“口頭”で破棄を言い渡されたからといって、すぐに全てが終わるわけではないと知ってはいた。でも、せっかくだから早く済ませたい。
「それと、もう一つ。どうやら“聖女カレンとのお披露目会”を、再度開く予定らしいの。そこに、フランボワーズも招かれているわ」
「……は、はあ」
その声が上ずるのは仕方ない。まさか、破棄したはずの相手を呼びつけてまで、新しい愛をお披露目するなんて。ちょっとどうかしている。
「どうするの? 行きたくないなら断ってもいいのよ? でも、国王陛下からの要請だから、あまりぞんざいに扱うと失礼になる」
母は本音を言えば、こんなもの相手にするな、と言いたげだ。
わたくしはしばし黙考する。王太子殿下のあまりの身勝手ぶりに、気分はよくない。――が、ここで公然と拒否すれば、かえって波風が立つかもしれない。
(うーん、どうしたものかしら……)
と、そのときわたくしの胸の奥でふわっと温かい風が吹いたような感覚があった。これは――“らっきーすとらいく”の何かが巡ってきたサインだろうか。
直感的に「行ってみようかな」という気がする。なぜなら、わたくしが動いたほうが、最終的には都合のいい方向に転がる予感がするからだ。
「……せっかくだから、行ってみますわ。わたくしも公式に婚約破棄の書類にサインしたいですし、あちらに迷惑をかけないようきちんと対応しましょう」
「……そう。あなたがそう言うなら、私も父様も止めないわ」
母はわたくしの肩に手を置く。ほんの少し不安そうだけれど、わたくしが笑顔で頷くと安心したようだった。
再び王城へ
招待状には“王城の中庭で小規模の聖女披露セレモニーを行う”と書かれていた。舞踏会ほど大がかりではないが、やはり王族や神殿関係者が集まるそれなりの場になるらしい。
数日後、わたくしはそれなりに貴族らしいドレスを着て、馬車で王城へ向かった。
――が、そこで待ち受けていたのは、奇妙な光景だった。
なんと、門兵たちが忙しなく出入りし、雑務に追われているようなのだ。中庭から微かに聞こえる音は、ガンガンと鉄を打つような騒がしいもの。
「え……何でしょう、これ。聖女披露の準備……にしては騒がしすぎるような」
護衛の騎士が怪訝な表情をする。わたくしは戸惑いつつも、王城の案内係に従って中庭へと足を踏み入れる。
そこには、崩れかけのステージと、周囲を飛び回る神官たちの姿。そして……
「な、なんだあれは……」
焦げ跡のようなものが地面に広がっていた。何やら大規模な爆発が起こったようにも見える。神官たちが慌ただしく「聖女様、奇跡を!」「もう一度試してみては?」と大声で呼びかけているが、当のカレンはうずくまって泣きそうな顔をしていた。
レオン殿下は必死で彼女を支えながら、苛立ちを隠せない様子で周りに指示を飛ばしている。
「どういうこと……? あの舞台は、聖女様が奇跡を披露する予定だったのでは?」
そっと様子を伺っていると、近くにいた神官が口を滑らせるように言った。
「あの方、本当に聖女なのだろうか……。さっきも失敗して、ステージを壊してしまわれた……」
どうやら、カレンはここで何かの奇跡を起こす予定だったらしいが、それが失敗して派手に爆発のような形になってしまったらしい。
(奇跡を失敗して、爆発……? それって、わたくしみたいですわね)
思わず変な親近感がわいてしまうが、わたくしの場合は“結果オーライ”がほとんど。カレンは不運にも失敗のまま終わってしまったようだ。
「フランボワーズ……!」
人混みの向こうから、レオン殿下の声がする。彼は気づいたらこちらへ駆け寄ってきた。
「なぜ来たんだ? 招待状には一応書いたが、お前なんか来るわけないと思ってた。……いや、それより……」
レオン殿下は頭をかきむしりつつ、荒い息を整える。いつもの優雅な雰囲気はどこへやら、必死の形相だ。
「カレンが聖女として奇跡を示すはずだったのに、どういうわけか上手くいかなくなった。呪いか何かがかかったんじゃないかと、騎士や神官が騒いでいて……!」
「は、はあ……それは大変ですわね」
わたくしがどう反応すればいいのかわからず愛想笑いしていると、レオン殿下は苛立たしげに言う。
「お前、前に錬金術とか薬草学をかじっていたよな? 何か打開策はないのか? カレンを助ける方法を考えてくれ!」
「え……? わたくしが、ですか?」
まさかの依頼に、思わず目を丸くする。
(ちょっと待ってくださいまし、わたくしは殿下に一方的に婚約破棄されたんですのよ? それなのに、助けてって……?)
わたくしが困惑していると、背後から神官長と思しき人物が駆け寄ってきた。
「失礼、シャルティエ令嬢! 聖女カレン様が今、奇跡の行使に失敗されたため、大怪我こそされていませんが魔力が乱れておられる。……そこを安定させる薬や何か手段があれば、ぜひともお力を貸していただきたい!」
慌てふためく神官長はさらに続ける。どうも、ここ数日カレンの“奇跡”がうまく発揮されず、逆に不発や暴走を起こしているらしい。
「うう……ごめんなさい、レオン様……」
遠くからカレンの弱々しい声が聞こえる。いかにも辛そうだ。
わたくしの母性がちょっと刺激される。あの子は平民出身で幼いころから苦労したのだと聞いたし、こんな大勢の前で失敗してしまっては、気の毒なことだろう。
「……わたくしにできることがあるなら、協力しますわ」
気づけばそう口にしていた。
(あれ? わたくし、完全に“捨てられ令嬢”なのでは……? でもまあ、困っている人を見捨てるのも気が引けますし)
こうして、わたくしは半ば強引に“聖女カレンの奇跡不調問題”の対策に協力することになった。
とりあえず、手持ちの道具や薬草を使って、カレンの魔力を鎮静化できるポーションを作り、飲ませる。幸い、ここで失敗して爆発……なんてことにはならなかった。
わたくしが配合した薬はカレンの体内でじんわりと効いていったようで、彼女はしだいに落ち着きを取り戻す。周囲の神官たちは「まるで聖女に必要な癒しの薬だ……」と感嘆の声をあげる。
(そんな大層な薬ではないんですが……まあ、効いてくれてよかったですわ)
自然と周囲の視線はわたくしへ集まる。“捨てられた婚約者”どころか、“聖女よりも凄い薬を作るのか”という空気さえある。まさか、こんな形で注目されることになるとは。
――こうして“婚約破棄”から数日で、わたくしは再び王城に関わることになった。
ざわめく噂と、わたくしの思惑
夕暮れどき、王城の応接室に通されたわたくしは、控えめにため息をつく。
結局、カレンの体調は回復し、展示予定だったセレモニーは延期となった。レオン殿下は「ありがとう、フランボワーズ。おかげで助かった」と小さな声でお礼を言ったが、なんだか気まずそうだった。
わたくしは王宮の医師とも情報を交換しつつ、さらなる薬の処方の可能性を探っている。だが、わたくしの専門は“薬草学と錬金術”であり、“聖女の奇跡”そのものをどうにかする術は持っていない。
(聖女様といえど、普通の人間と同じように体調を崩すのだなあ……)
そんなぼんやりしたことを考えていたとき、応接室の扉が開いた。
入ってきたのは、あまり会う機会のなかった第二王子――黒髪のセイラン殿下だ。レオン殿下の弟にあたるが、公務に熱心で国外に視察へ行くことも多いという。
「ご機嫌よう、シャルティエ令嬢。突然のご挨拶をお許しください」
落ち着いた低い声。兄王子のレオン殿下とはまるで正反対の雰囲気で、こちらが背筋を伸ばしてしまうほど真面目そうだ。
「こんにちは、セイラン殿下。わたくしなんかがお相手でよろしいのかしら?」
「それは俺のほうが問いたい。……いや、まずは礼を言わせてほしい。カレンを助けてくれたことについてだ」
「恐れ多いですわ。わたくしはできる範囲のことをしただけです」
わたくしが頭を下げると、セイラン殿下は少しだけ微笑んだ。
「先ほど、医師や神官長から話を聞いていた。フランボワーズ殿下……いや、シャルティエ令嬢がこのままいてくれれば、カレンも落ち着くだろうと皆が言っている」
「そうでしょうか……。わたくしとカレン様はあまり面識もありませんでしたが、今回のことで少し親近感が湧きました」
あの子も何かに追われているような目をしていた。レオン殿下に“真の愛”などと言われ、周囲から祭り上げられ、必死に奇跡を起こそうとして焦ったのかもしれない。
「それにしても……ああ、言いづらいのだが。お前は本当に、婚約破棄されたことを恨んでいないのか?」
セイラン殿下は率直にそう尋ねてくる。驚くほどストレートな物言いだ。
「え? そうですね……むしろ、感謝しています。わたくし、そこまでレオン殿下と結ばれたいとは思っていなかったんですもの」
「そうか……。兄上はお前のような女性を逃して、愚かだと俺は思うが」
「えっ……?」
わたくしはポカンとしてしまう。まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「……まあ、いい。もし今後、王城に用事があれば、俺にも声をかけてくれ。お前のような人材は、この国にとって貴重だ。――勝手を言ってすまないがな」
短い言葉を残して、セイラン殿下はさっと応接室を出て行く。
わたくしは何が何やらわからず、その場に佇んだ。
こうして、わたくしの“婚約破棄”は世間の噂になる一方で、なぜか王城の人々からちょっとした注目を浴びる結果になった。
「捨てられた令嬢」から、「聖女を助けた凄い令嬢」に評価が変わりつつある。
もちろん、ざわざわとした噂はまだ止まらない。“フランボワーズは王太子妃失格だった”“聖女カレンに負けた”などと言われるかと思えば、“あの爆発を防いだ奇跡の令嬢”という話まですでに飛び交っている。
(どちらにせよ、わたくしにとってはどうでもいいこと。――ただ、うまくいくならそれでよし、ですわ)
婚約破棄を言い渡された結果、わたくしの暮らしはむしろ楽しい方向に転がり始めた。仕事の依頼はちょっと増えたけれど、それはわたくしの得意な薬草学や錬金術を活かすためのもの。
人間関係も、窮屈だった王太子殿下からは完全に解放され、代わりに第二王子セイラン殿下との交流がちらほらと出てきている。もちろん、それがどう転ぶかはまだわからない。
ただ、一つだけ言えるのは――
「婚約破棄も、なんだかラッキーに転がっていますわね」
わたくしはそう呟いて、晴れた青空を見上げる。
まだ始まったばかりのざわめきは、今後どのように発展するのか。レオン殿下と聖女カレンの“愛の行方”はどうなるのか。そして、不思議とわたくしのもとに集まってくる“幸運”は、何をもたらすのか。
――ここから始まる物語は、わたくし自身にもまったく予想がつかない。
ただ、今はこの清々しい解放感を楽しみながら、一歩ずつ進んでみようと思う。
王家の争いがどう転んでも、わたくしが大丈夫なように、ちゃんと自分の技術や知識を磨いておきたい。
そう思いながら、わたくしはそっと微笑みを浮かべるのだった。
場内に響いた侍従の声を、わたくし――フランボワーズ・ド・シャルティエはぼんやりと聞いていた。大きく豪華な舞踏会場。王城の中央ホールにあるこの広間には、各国から招かれた貴族や要人がずらりと並び、さながら華やかな花の園のようである。
シャンデリアに照らされた大理石の床。テーブルには贅を尽くした料理の数々。煌びやかな衣装を身にまとった貴族や騎士が見目麗しく舞い、華やかな音楽が流れ続ける。まるで絵画のような光景……のはずなのだけれど、正直わたくしには、あまりピンと来ていなかった。
「では、レオン殿下。皆さまにご挨拶を……」
王宮侍従がそう促すと、わたくしの――一応まだ婚約者の立場である王太子レオン殿下は、金色の長髪をふわりと揺らして笑みを浮かべる。
「皆の者、よく集まってくれた。今日は父上のご意向もあって、フランボワーズとの婚約披露の場を設けた。これまでフランボワーズとは形式上の婚約だったが、俺は……」
その言葉を受けて、わたくしはちらりとレオン殿下を盗み見る。背が高く、優美な顔立ち。王家の血筋を示す碧眼は凛としており、貴公子と呼ぶにふさわしい外見だ。小さいころは多少なりとも憧れた記憶があるけれど……今は何と言えばいいのか。
正直、わたくしは彼に強い興味はない。というか、昔からいまいち波長が合わなかった。それに、世間が思うような「王太子との婚約! なんて幸せ!」という気持ちもあまり湧かない。わたくしは自分の好きなこと――たとえば珍しい草花を観察したり、ちょっとした錬金術の実験をしたり、ゆっくりお茶を楽しんだり――そういう日常が大切。
確かに、わたくしは侯爵家の令嬢として、それなりに贅沢な暮らしを送っている。でも、政略結婚みたいな関係で一生を縛られるなんて、なんだか息苦しい。だから、周囲には申し訳ないが、「もしこの婚約がなくなれば、もっと気楽に生きられるのに……」と思っていたのだ。もちろん、そんなことを口に出すわけにはいかない。
「――俺は、婚約者として今後も彼女を大切にしていこうと考えている。もっとも、まだ日取りなどは決まっていないがな。父王の許可と、貴族院の承認が降りれば、早いうちに結婚式を挙げるだろう」
レオン殿下は淡々と述べ、場の貴族たちは拍手で応じる。
(あら……わたくしとの結婚を、そんなに早めたいのかしら?)
疑問に思うが、殿下の考えはよくわからない。彼と話していると、いつも心ここにあらずというか、自分が中心に世界が回っているような雰囲気を感じる。
わたくしは常に微笑みを浮かべ、彼の手前、演技するように振る舞ってきた。祖父母や両親にも「どんな相手であっても、婚約というのは家のため。フランボワーズならうまくやれるだろう」と言われていたし。
ただ、心底から惚れた相手ではないから、どうしても自然体になれない。『フワフワした天然』だと言われるわたくしだけど、こういうときばかりは演技が苦手だ。
「さて、続いてはお待ちかねの余興として、余のご友人を紹介しよう」
レオン殿下が声を張ると、場がざわっと湧く。
「ご友人……?」
侍従が「殿下、それはまだ正式にお披露目するには早いのでは……」と慌てて耳打ちするが、殿下は気にした様子もなくウインクを飛ばした。
「いや、構わない。皆に知ってもらいたいのだ。俺が、真に愛する相手を」
――真に愛する相手?
その言葉に、わたくしを含め周囲の人々も目を見開く。だって、わたくしはここにいる“婚約者”では? まさか、ここでアピールするのはわたくしのこと……だろうか?
いや、違う。レオン殿下の視線は、わたくしではない場所を向いていた。
「ご紹介しよう。彼女こそが俺の運命の相手、そしてこの国を救う“聖女”だ。――カレン、こちらへ」
金の髪を持つ騎士たちが列を作り、スポットライトが当たるかのように、レオン殿下が呼び寄せたのは――華奢で可愛らしい少女だった。
栗色の髪を肩口でゆるくまとめ、蒼い瞳を大きく瞬かせた彼女。名前は確か……カレン、と言った。平民出身の孤児だが、聖女として奇跡を起こす不思議な力を持っていると噂されている。
その証拠に、教会や辺境伯領でも数々の“奇跡”を披露し、病を治したり作物を豊かに実らせたりしているらしい。ただ、王宮に招かれてまだ日が浅く、公式な場に出るのは初めてのはず。
カレンは少し恥ずかしそうに微笑んでいる。レオン殿下は彼女の手を取り、高々と掲げた。
「このカレンこそが、俺の唯一無二の……真の愛だ。今日ここで、皆に伝えたい。――フランボワーズとの婚約は破棄させてもらう。俺はカレンと結ばれるつもりだ!」
レオン殿下の高らかな宣言に、会場は一瞬で静まり返った。いや、静まったというよりは、あまりに想定外の事態で息を呑んだのだ。
わたくしは、ぽかんと口を開けてしまう。
(婚約……破棄? わたくしと殿下の……?)
「ちょ、殿下!」
「婚約破棄など……そ、そんな!」
「国同士の取り決めはいったいどうなるのだ!?」
貴族たちや侍従、護衛の騎士がどよめき、ざわざわと会場が騒然となる。
わたくしの父であるシャルティエ侯爵も、母も、驚きと動揺で言葉が出ない様子だ。
――だが。
しかしながら、わたくしは心のどこかで「やった……!」と思ってしまった。だって、わたくしは正直、王太子との結婚をそこまで望んでいなかったのだから。家名のためや、世間体のため、断れずにいた。
それが、先方から破棄を言い渡してくれるなんて。
こんなとき、普通なら「なんてひどいことを!」と怒るか、「どうかお許しを……」と涙ぐむかもしれない。
しかしわたくしは根っからの“天然”らしい。頭の中では「あらまあ、なんだかラッキー?」と感じている。おかげで、口をついて出た言葉は奇妙に明るいトーンになってしまった。
「えっと……つまり、わたくしとの婚約を解消して、カレン様と結ばれると……。それは、おめでとうございます!」
会場がさらに静まる。殿下もカレンも、言葉を失ったようにわたくしを見ている。
「……おめでとう、とはどういう意味だ」
「だって、真に愛する方と出会えたのですから、それは喜ばしいことではありませんか? わたくし、心からお祝い申し上げますわ」
――パチパチパチ。
そう言って、わたくしは手を叩いてしまう。いや、本当に拍手までしてしまった。場の空気は凍りつき、わたくしの父母は泡を食っている。
「フ、フランボワーズ!?」
「あなた、今はそんな……!」
父も母も声にならないほど動揺しているが、わたくしは止まらない。これを逃せば、また面倒な情勢に巻き込まれるかもしれない。“ここできちんと潔く祝福して、退場するのが吉だ”――頭の中にそんな声が聞こえるのだ。
そして、わたくしの特技(?)である“らっきーすとらいく”が発動するのだろう。小さいころから、どうにもわたくしの運は変に強いらしい。ピンチに思える場面でも、なぜか結果的にうまく転がることが多い。
例えば――
幼少期、散歩中にあやまって川に落ちて溺れそうになったとき、偶然通りかかった漁師さんに速攻で助けられて、さらに珍しい貝をお土産にいただいた。
あるいは、貴族学校でアルコールランプを使った実験の際、火加減を誤って爆発しかけたところ、なぜか新種の香水として流行するような香りが生まれ、学校中から称賛された。
――そんな感じで「え、それって普通失敗でしょ?」というところから、いつの間にか大成功になる。周囲からすると不可解な出来事らしいけれど、わたくし自身には全くコントロールできないのだ。
今回も、この“らっきーすとらいく”が作用しているのか、わたくしはまったく動じることなく笑顔を絶やさない。むしろ「これで自由だわ!」という明るさが勝っている。
「フランボワーズ……お前は今の状況をわかっているのか?」
レオン殿下が困惑した顔で問うが、わたくしは心からの笑みで返す。
「はい、殿下がわたくしとの婚約を破棄したいのでしょう? でしたら、光栄です。――あ、ちなみに退席したほうがよいですか? それとも正式に破棄の証書を書かれます?」
とことんマイペースな物言いで、われながら大丈夫かしら、と少しだけ不安になる。でも既に言ってしまったものは仕方ない。
「フフン……その通りだ。これで、お前は自由だぞ」
レオン殿下は言葉に詰まりつつも、それを勝利宣言のように言い切った。その横にいるカレンは俯きがちだが、目はわずかに揺れている。
貴族たちの間からはいくつか声が上がる。
「しかし、あまりにも突然すぎる……」
「フランボワーズ様は動じていないようだが、これではシャルティエ侯爵家の顔が立たないのでは?」
「ど、どうなるのだ……!?」
わたくしの父はすぐに王へと談判しようと動きかけるが、時既に遅し。
王太子であるレオン殿下自身が“正式に婚約破棄を言い渡す”と宣言したからには、ここで逆らうと王家との関係がこじれてしまう恐れがある。
それに、当のわたくしが笑顔で「おめでとうございます」と言ったから、もはや誰も止めようがない状況らしい。
「……それなら、フランボワーズ様も堂々としていらしたほうがよろしいわ」
困り果てた母に、わたくしは小声で囁く。
「大丈夫ですわ、お母様。わたくし、困っていませんから」
「でも……!」
「むしろ喜ばしいことですの。これで次の道が開けるかもしれませんし」
わたくしの曇りなき笑顔に、母はしばし唖然とする。
「……あなた、昔からそういうところがあるわね。いつも天真爛漫で、ちょっと羨ましいくらい」
母はため息まじりに微笑む。父はまだ複雑そうな顔をしているが、ともかくわたくしの意思を尊重してくれるらしい。
「皆の者、今日はこれでお開きとしよう! 俺とカレンの披露はまた改めて行う!」
レオン殿下は勢いよく言い切り、カレンを連れて去っていく。残されたわたくしたちに、重い空気が漂うが、わたくしは足元を正してペコリとお辞儀した。
「本日はお騒がせしてしまい、申し訳ございません。わたくしは失礼いたしますわ」
こうして、王城の舞踏会は事実上お開きになり、わたくしの婚約はあっという間に“解消”された。
しかし不思議なことに、心は軽やかだった。まるで重石が取れたような爽快感。その理由は明白である。
(これで、わたくし、好きに生きていいってことよね?)
その夜、シャルティエ侯爵家
「フランボワーズ。正直言って、父としては今回の婚約破棄は大きな痛手だと思っている。王家との結びつきがなくなるということは、我が家の後ろ盾も弱くなる。だが……お前の気持ちを尊重したい。つらくないのか?」
父は複雑そうにテーブルを叩いている。
王城から帰宅したわたくしと両親は、小さなサロンで膝を突き合わせていた。侍女や執事は遠慮して奥へ下がり、家族だけの会話にしている。
「はい、お父様。わたくしは大丈夫です。むしろ、ほっとしているくらいですわ」
「ほっと……そうか。本当にそうなのだな?」
「はい。だって、王太子殿下との婚約が解消された今、わたくしはもう“王太子妃としての完璧な立ち居振る舞い”を要求されなくて済みますもの。自由に、好きに過ごせる時間が増えますわ」
無邪気にそう言うと、父は何とも言えない顔をする。母は母で「あなたいつも本音を隠さないわね」と呆れたように微笑む。
わたくしは正直、これまでずっと無理をしてきたと思う。幼少期に許嫁が決まり、淑女教育を徹底され、王太子妃になるのに相応しいと周囲が言い立てた。
けれどもわたくしは、動植物の研究や錬金術のほうが好きで、毎日の勉強やマナーの稽古は苦痛だった。何よりも――レオン殿下自身と相性が良いと思えなかった。
「ただ、問題はこれからよね。王家が一方的に破棄を通したとなると、世間からは『捨てられた可哀想なフランボワーズ様』みたいな目で見られるかもしれません。ご縁談も減るだろうし……」
母が心配そうに言うのも無理はない。わたくしが独身のまま過ごすと決めても、侯爵家としては大きな課題になる。
「そこは、僕らも何とかするから。お前が本当に望む道を探してみるのもいいだろう。錬金術士として生きるのも面白いかもしれん」
父はそう言って、わたくしの趣味に理解を示してくれる。ちょっと昔では考えられないことだ。
「ただし、何かあっても自己責任だぞ。……もしお前が本当に困ったときは、この家が支えるから遠慮なく頼れ」
「はい、お父様。ありがとうございます」
わたくしは心からお礼を言って、ちょこんと頭を下げた。
これで一件落着――かと思いきや、世間の目はそう甘くないらしい。翌日以降、街や貴族の間で、「婚約破棄されたフランボワーズ可哀想」「捨てられ令嬢」などという噂が飛び交い始めた。
ただ、その噂を耳にしても、わたくしはそれほど気にならない。噂はいつの時代も勝手に広まっていくもの。それに関わっていたらキリがない。
それよりも、今は解放感でいっぱいなのだ。
数日後、侯爵家の離れにて
わたくしは離れにある研究室――と言っても物置を改造した狭い小部屋――で、新しい薬の調合を試みていた。
「ええと、まずは白芍薬の根を粉にして、それに月光草のエキスを混ぜて……。あら? 分量は……ああ、しまった。ちょっと入れすぎちゃいましたわ」
――ポンッ。
小さな爆発音。香ばしいというか、どこか爽やかな香りの煙がふわりと立ち上る。
「きゃっ……!」
慌てて後ずさるわたくし。背後の棚にぶつかって道具が落ちそうになるが、ふと足元にあった箱が偶然その道具を受け止め、割れずに済んだ。
(危ない……。でも、割れなくて助かりましたわ。らっきーすとらいく、かもしれません)
こんな小さな幸運まで、わたくしの周りではしょっちゅう起こる。周囲からは「あなたの天然と運の強さは奇跡的」などと評されるけれど、当のわたくしは特に意識していない。
「さて、爆発しちゃったけど、粉末が焦げたわけではないのね。どれどれ……」
湧き立つ白い煙を手で仰ぎながら、容器に残った粉末を慎重に観察する。色は少しだけ茶色がかっているが、月光草のエキスが加わったせいか、かすかに蛍光色を帯びているようにも見える。
「うーん……下手に舐めるわけにもいかないし、もう少し検証が必要そうですわね」
そうして試行錯誤していると、ノックの音がした。
「失礼いたします、フランボワーズお嬢様。奥様が呼んでいらっしゃいますが、今お時間ございますか?」
侍女のドロテアが顔を覗かせる。わたくしは慌てて白衣の代わりに使っていたエプロンを外した。
「あ、はい。すぐ行きますわ。ちょっと片付けを……あれ、どこかに洗剤が……」
棚の裏を覗き込み、あたふたしていると、ドロテアが優しく微笑んだ。
「お片付けはわたくしがやっておきますから、お嬢様は奥様のもとへどうぞ」
「そう? それでは甘えさせていただきますわ。ありがとう、ドロテア」
急いで汚れの少ない上着に着替え、母の待つ部屋へ向かう。
長い廊下を歩きながら、わたくしは思う。こうして自分の好きな研究を続けても、誰も文句を言わなくなった。王妃教育の押し付けもなくなり、堅苦しいイベントへの出席も最小限で済む。
(――ああ、なんて気楽なんでしょう。婚約破棄……最高かもしれませんわ)
母からの相談
母がいるのは、一階の客間だ。わたくしがドアを開けると、母はソファに腰掛けて少し難しそうな顔をしていた。
「フランボワーズ、来たわね。……あの、実は突然なんだけれど、こういう話が舞い込んできたの」
手渡されたのは、一通の書簡。開けてみるとそこには、王城からの呼び出し通知が書かれていた。
「王城……殿下、ではなく国王陛下からですの?」
「ええ。レオン殿下はもちろんだけれど、どうやら『正式な書面』としてフランボワーズ宛に送られてきたみたい。記録上、まだ婚約破棄の手続きが完了していないんですって」
「まあ……やっぱり書類が必要なのですね」
わたくしは、あの場で“口頭”で破棄を言い渡されたからといって、すぐに全てが終わるわけではないと知ってはいた。でも、せっかくだから早く済ませたい。
「それと、もう一つ。どうやら“聖女カレンとのお披露目会”を、再度開く予定らしいの。そこに、フランボワーズも招かれているわ」
「……は、はあ」
その声が上ずるのは仕方ない。まさか、破棄したはずの相手を呼びつけてまで、新しい愛をお披露目するなんて。ちょっとどうかしている。
「どうするの? 行きたくないなら断ってもいいのよ? でも、国王陛下からの要請だから、あまりぞんざいに扱うと失礼になる」
母は本音を言えば、こんなもの相手にするな、と言いたげだ。
わたくしはしばし黙考する。王太子殿下のあまりの身勝手ぶりに、気分はよくない。――が、ここで公然と拒否すれば、かえって波風が立つかもしれない。
(うーん、どうしたものかしら……)
と、そのときわたくしの胸の奥でふわっと温かい風が吹いたような感覚があった。これは――“らっきーすとらいく”の何かが巡ってきたサインだろうか。
直感的に「行ってみようかな」という気がする。なぜなら、わたくしが動いたほうが、最終的には都合のいい方向に転がる予感がするからだ。
「……せっかくだから、行ってみますわ。わたくしも公式に婚約破棄の書類にサインしたいですし、あちらに迷惑をかけないようきちんと対応しましょう」
「……そう。あなたがそう言うなら、私も父様も止めないわ」
母はわたくしの肩に手を置く。ほんの少し不安そうだけれど、わたくしが笑顔で頷くと安心したようだった。
再び王城へ
招待状には“王城の中庭で小規模の聖女披露セレモニーを行う”と書かれていた。舞踏会ほど大がかりではないが、やはり王族や神殿関係者が集まるそれなりの場になるらしい。
数日後、わたくしはそれなりに貴族らしいドレスを着て、馬車で王城へ向かった。
――が、そこで待ち受けていたのは、奇妙な光景だった。
なんと、門兵たちが忙しなく出入りし、雑務に追われているようなのだ。中庭から微かに聞こえる音は、ガンガンと鉄を打つような騒がしいもの。
「え……何でしょう、これ。聖女披露の準備……にしては騒がしすぎるような」
護衛の騎士が怪訝な表情をする。わたくしは戸惑いつつも、王城の案内係に従って中庭へと足を踏み入れる。
そこには、崩れかけのステージと、周囲を飛び回る神官たちの姿。そして……
「な、なんだあれは……」
焦げ跡のようなものが地面に広がっていた。何やら大規模な爆発が起こったようにも見える。神官たちが慌ただしく「聖女様、奇跡を!」「もう一度試してみては?」と大声で呼びかけているが、当のカレンはうずくまって泣きそうな顔をしていた。
レオン殿下は必死で彼女を支えながら、苛立ちを隠せない様子で周りに指示を飛ばしている。
「どういうこと……? あの舞台は、聖女様が奇跡を披露する予定だったのでは?」
そっと様子を伺っていると、近くにいた神官が口を滑らせるように言った。
「あの方、本当に聖女なのだろうか……。さっきも失敗して、ステージを壊してしまわれた……」
どうやら、カレンはここで何かの奇跡を起こす予定だったらしいが、それが失敗して派手に爆発のような形になってしまったらしい。
(奇跡を失敗して、爆発……? それって、わたくしみたいですわね)
思わず変な親近感がわいてしまうが、わたくしの場合は“結果オーライ”がほとんど。カレンは不運にも失敗のまま終わってしまったようだ。
「フランボワーズ……!」
人混みの向こうから、レオン殿下の声がする。彼は気づいたらこちらへ駆け寄ってきた。
「なぜ来たんだ? 招待状には一応書いたが、お前なんか来るわけないと思ってた。……いや、それより……」
レオン殿下は頭をかきむしりつつ、荒い息を整える。いつもの優雅な雰囲気はどこへやら、必死の形相だ。
「カレンが聖女として奇跡を示すはずだったのに、どういうわけか上手くいかなくなった。呪いか何かがかかったんじゃないかと、騎士や神官が騒いでいて……!」
「は、はあ……それは大変ですわね」
わたくしがどう反応すればいいのかわからず愛想笑いしていると、レオン殿下は苛立たしげに言う。
「お前、前に錬金術とか薬草学をかじっていたよな? 何か打開策はないのか? カレンを助ける方法を考えてくれ!」
「え……? わたくしが、ですか?」
まさかの依頼に、思わず目を丸くする。
(ちょっと待ってくださいまし、わたくしは殿下に一方的に婚約破棄されたんですのよ? それなのに、助けてって……?)
わたくしが困惑していると、背後から神官長と思しき人物が駆け寄ってきた。
「失礼、シャルティエ令嬢! 聖女カレン様が今、奇跡の行使に失敗されたため、大怪我こそされていませんが魔力が乱れておられる。……そこを安定させる薬や何か手段があれば、ぜひともお力を貸していただきたい!」
慌てふためく神官長はさらに続ける。どうも、ここ数日カレンの“奇跡”がうまく発揮されず、逆に不発や暴走を起こしているらしい。
「うう……ごめんなさい、レオン様……」
遠くからカレンの弱々しい声が聞こえる。いかにも辛そうだ。
わたくしの母性がちょっと刺激される。あの子は平民出身で幼いころから苦労したのだと聞いたし、こんな大勢の前で失敗してしまっては、気の毒なことだろう。
「……わたくしにできることがあるなら、協力しますわ」
気づけばそう口にしていた。
(あれ? わたくし、完全に“捨てられ令嬢”なのでは……? でもまあ、困っている人を見捨てるのも気が引けますし)
こうして、わたくしは半ば強引に“聖女カレンの奇跡不調問題”の対策に協力することになった。
とりあえず、手持ちの道具や薬草を使って、カレンの魔力を鎮静化できるポーションを作り、飲ませる。幸い、ここで失敗して爆発……なんてことにはならなかった。
わたくしが配合した薬はカレンの体内でじんわりと効いていったようで、彼女はしだいに落ち着きを取り戻す。周囲の神官たちは「まるで聖女に必要な癒しの薬だ……」と感嘆の声をあげる。
(そんな大層な薬ではないんですが……まあ、効いてくれてよかったですわ)
自然と周囲の視線はわたくしへ集まる。“捨てられた婚約者”どころか、“聖女よりも凄い薬を作るのか”という空気さえある。まさか、こんな形で注目されることになるとは。
――こうして“婚約破棄”から数日で、わたくしは再び王城に関わることになった。
ざわめく噂と、わたくしの思惑
夕暮れどき、王城の応接室に通されたわたくしは、控えめにため息をつく。
結局、カレンの体調は回復し、展示予定だったセレモニーは延期となった。レオン殿下は「ありがとう、フランボワーズ。おかげで助かった」と小さな声でお礼を言ったが、なんだか気まずそうだった。
わたくしは王宮の医師とも情報を交換しつつ、さらなる薬の処方の可能性を探っている。だが、わたくしの専門は“薬草学と錬金術”であり、“聖女の奇跡”そのものをどうにかする術は持っていない。
(聖女様といえど、普通の人間と同じように体調を崩すのだなあ……)
そんなぼんやりしたことを考えていたとき、応接室の扉が開いた。
入ってきたのは、あまり会う機会のなかった第二王子――黒髪のセイラン殿下だ。レオン殿下の弟にあたるが、公務に熱心で国外に視察へ行くことも多いという。
「ご機嫌よう、シャルティエ令嬢。突然のご挨拶をお許しください」
落ち着いた低い声。兄王子のレオン殿下とはまるで正反対の雰囲気で、こちらが背筋を伸ばしてしまうほど真面目そうだ。
「こんにちは、セイラン殿下。わたくしなんかがお相手でよろしいのかしら?」
「それは俺のほうが問いたい。……いや、まずは礼を言わせてほしい。カレンを助けてくれたことについてだ」
「恐れ多いですわ。わたくしはできる範囲のことをしただけです」
わたくしが頭を下げると、セイラン殿下は少しだけ微笑んだ。
「先ほど、医師や神官長から話を聞いていた。フランボワーズ殿下……いや、シャルティエ令嬢がこのままいてくれれば、カレンも落ち着くだろうと皆が言っている」
「そうでしょうか……。わたくしとカレン様はあまり面識もありませんでしたが、今回のことで少し親近感が湧きました」
あの子も何かに追われているような目をしていた。レオン殿下に“真の愛”などと言われ、周囲から祭り上げられ、必死に奇跡を起こそうとして焦ったのかもしれない。
「それにしても……ああ、言いづらいのだが。お前は本当に、婚約破棄されたことを恨んでいないのか?」
セイラン殿下は率直にそう尋ねてくる。驚くほどストレートな物言いだ。
「え? そうですね……むしろ、感謝しています。わたくし、そこまでレオン殿下と結ばれたいとは思っていなかったんですもの」
「そうか……。兄上はお前のような女性を逃して、愚かだと俺は思うが」
「えっ……?」
わたくしはポカンとしてしまう。まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「……まあ、いい。もし今後、王城に用事があれば、俺にも声をかけてくれ。お前のような人材は、この国にとって貴重だ。――勝手を言ってすまないがな」
短い言葉を残して、セイラン殿下はさっと応接室を出て行く。
わたくしは何が何やらわからず、その場に佇んだ。
こうして、わたくしの“婚約破棄”は世間の噂になる一方で、なぜか王城の人々からちょっとした注目を浴びる結果になった。
「捨てられた令嬢」から、「聖女を助けた凄い令嬢」に評価が変わりつつある。
もちろん、ざわざわとした噂はまだ止まらない。“フランボワーズは王太子妃失格だった”“聖女カレンに負けた”などと言われるかと思えば、“あの爆発を防いだ奇跡の令嬢”という話まですでに飛び交っている。
(どちらにせよ、わたくしにとってはどうでもいいこと。――ただ、うまくいくならそれでよし、ですわ)
婚約破棄を言い渡された結果、わたくしの暮らしはむしろ楽しい方向に転がり始めた。仕事の依頼はちょっと増えたけれど、それはわたくしの得意な薬草学や錬金術を活かすためのもの。
人間関係も、窮屈だった王太子殿下からは完全に解放され、代わりに第二王子セイラン殿下との交流がちらほらと出てきている。もちろん、それがどう転ぶかはまだわからない。
ただ、一つだけ言えるのは――
「婚約破棄も、なんだかラッキーに転がっていますわね」
わたくしはそう呟いて、晴れた青空を見上げる。
まだ始まったばかりのざわめきは、今後どのように発展するのか。レオン殿下と聖女カレンの“愛の行方”はどうなるのか。そして、不思議とわたくしのもとに集まってくる“幸運”は、何をもたらすのか。
――ここから始まる物語は、わたくし自身にもまったく予想がつかない。
ただ、今はこの清々しい解放感を楽しみながら、一歩ずつ進んでみようと思う。
王家の争いがどう転んでも、わたくしが大丈夫なように、ちゃんと自分の技術や知識を磨いておきたい。
そう思いながら、わたくしはそっと微笑みを浮かべるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
「薬草まみれの地味な女」と婚約破棄された宮廷薬師ですが、辺境でのんびり暮らしていたら元婚約者が全てを失っていました
メトト
恋愛
宮廷薬師エルザは、夜会の場で婚約者の侯爵家嫡男レオンに公開婚約破棄される。
「薬草にまみれた地味な女」——そう蔑まれたエルザだが、その胸にあったのは悲しみではなく安堵だった。
七年間、浪費家の婚約者を支え続けた日々はもう終わり。
エルザは宮廷薬師を辞し、薬草の宝庫と名高い辺境の街ヴェルデンで小さな薬屋を開く。
そこで出会ったのは、不器用だけどまっすぐな領主代行の青年騎士ノエル。
薬屋は大繁盛、流行病を退け、新薬の開発にも成功——エルザの薬師としての才能が、辺境の地で花開いていく。
一方、エルザを失った王都では。
宮廷薬師の後任は見つからず、新しい婚約者の浪費で侯爵家の財政は火の車。
全てを失ったレオンがエルザの元に現れた時、彼女が返した言葉とは——。
復讐なんてしない。ただ自分らしく生きるだけ。
それが最大の「ざまぁ」になる、爽快異世界恋愛物語。
完結保証 全12話になります。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
裏の顔ありな推しとの婚約って!?
花車莉咲
恋愛
鉱業が盛んなペレス王国、ここはその国で貴族令嬢令息が通う学園であるジュエルート学園。
その学園に通うシエンナ・カーネリアラ伯爵令嬢は前世の記憶を持っている。
この世界は乙女ゲーム【恋の宝石箱~キラキラブラブ学園生活~】の世界であり自分はその世界のモブになっていると気付くが特に何もする気はなかった。
自分はゲームで名前も出てこないモブだし推しはいるが積極的に関わりたいとは思わない。
私の前世の推し、ルイス・パライバトラ侯爵令息は王国騎士団団長を父に持つ騎士候補生かつ第二王子の側近である。
彼は、脳筋だった。
頭で考える前に体が動くタイプで正義感が強くどんな物事にも真っ直ぐな性格。
というのは表向きの話。
実は彼は‥‥。
「グレース・エメラディア!!貴女との婚約を今ここで破棄させてもらう!」
この国の第二王子、ローガン・ペレス・ダイヤモルト様がそう叫んだ。
乙女ゲームの最終局面、断罪の時間。
しかし‥‥。
「これ以上は見過ごせません、ローガン殿下」
何故かゲームと違う展開に。
そして。
「シエンナ嬢、俺と婚約しませんか?」
乙女ゲームのストーリーにほぼ関与してないはずなのにどんどんストーリーから離れていく現実、特に何も目立った事はしてないはずなのに推しに婚約を申し込まれる。
(そこは断罪されなかった悪役令嬢とくっつく所では?何故、私?)
※前作【悪役令息(冤罪)が婿に来た】にて名前が出てきたペレス王国で何が起きていたのかを書いたスピンオフ作品です。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる