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31 断罪の日
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31 断罪の日
断罪の日は、驚くほど静かな朝から始まった。
雨は降っていない。
空は薄曇りで、陽光は白く拡散し、王都の石畳も屋敷の窓も、輪郭だけを冷たく浮かび上がらせている。
派手な嵐ではない。
けれど、こういう天気の日ほど、起きることは長く記憶に残る――アリアベルは何となくそう思った。
その日、王宮では王と王妃、主要閣僚、高位貴族、そして関係家の代表を集めた正式の裁定が行われることになっていた。
表向きの名目は、先の婚約破棄とその後に生じた王太子周辺の混乱に関する整理。
だが実際には、もっとはっきりしている。
誰が何をしたのか。
誰がどこまで知っていたのか。
そして、その結果どう処されるのか。
それを、王家の名のもとで確定させる日だ。
フォルティス公爵邸の空気もまた、いつも以上に静まり返っていた。
使用人たちは無駄なく動いている。
茶も運ばれ、馬車も整えられ、侍女たちもアリアベルの支度を滞りなく整える。
けれど、誰も余計な言葉を口にしない。
今日がただの面会ではないことを、皆よくわかっているからだ。
「お嬢様、お召し物はこちらでよろしいでしょうか」
侍女が選んだのは、深い灰青のドレスだった。
華美ではない。
けれど、地味とも違う。
線の美しさと布の質だけで立つ色だ。
「ええ。それでいいわ」
アリアベルが答えると、侍女は静かに頭を下げた。
鏡の中の自分を見る。
婚約破棄された哀れな令嬢でもない。
復讐に酔う女でもない。
ただ、今日ここへ立つべき人間としての顔があった。
朝食の席では、公爵もマルセルも、いつも以上に言葉が少なかった。
「準備は整っております」
マルセルが言う。
「イネスの証言書写し、隠し部屋から回収した手紙の原本および控え、贈答品記録、王宮側の実務混乱の整理、すべて揃えております」
「ありがとう」
「お父様」
アリアベルが公爵を見る。
「今日、私はどこまで口を出すべきでしょう」
公爵はカップを置いた。
「問われたことだけ答えればよい」
「はい」
「今日の主役は、お前ではない」
アリアベルは少しだけ目を瞬かせた。
公爵は冷静に続ける。
「今日、裁かれるべきは王太子の軽率さと、リネット・ブランの作為だ。お前が前へ出すぎれば、また“傷ついた令嬢の感情”へ話を落とされる。だから、お前は事実の証人であれば十分だ」
その切り分けが、この家らしかった。
感情がないわけではない。
だが、感情を前へ出すべき場所と、そうでない場所を一切取り違えない。
「承知いたしました」
王宮へ向かう馬車の中で、アリアベルは一度だけ目を閉じた。
緊張していないわけではない。
ただ、それは怯えではなかった。
ようやくここまで辿り着いたのだという、静かな張りつめ方だ。
婚約破棄の夜。
可哀想な従妹。
止まる資金。
綻ぶ王太子。
イネスの震える声。
隠し部屋の手紙。
今さらの復縁懇願。
そして、差し出された手。
全部がここへ繋がっている。
王宮へ着くと、すでに多くの馬車が並んでいた。
格式ある家の紋章。
王家直属の近衛。
重苦しいほど整った動線。
誰ひとり大声は出していないのに、空気はぴんと張りつめている。
案内された先は、通常の会議室より一段大きい裁定の間だった。
王が中央奥に座り、王妃がその右。
左右に主要閣僚。
少し下がった位置に高位貴族。
関係家の代表席。
そして当事者の席。
席に着いた瞬間、アリアベルはすぐにリネットの姿を見つけた。
顔色が悪い。
白粉でどうにか整えてはいるが、目の下の影までは消えていない。
唇の色も薄く、手袋をした指先がかすかに震えているのが、遠目にもわかった。
その隣のユリヴェールは、以前より明らかに硬い。
彼はまだ王太子の装いをしている。
けれど、その華やかさはもう中身を支えきれていない。
王太子という立場の重みを、ようやく自分の骨で感じ始めた顔だった。
王が低く口を開いた。
「始める」
それだけで、室内の空気が完全に変わる。
王妃が、これまでの経緯を簡潔に確認する。
舞踏会での婚約破棄。
その独断性。
その後の王太子周辺の混乱。
そして、王妃宮の調査により浮かび上がった、リネット・ブランによる継続的な印象操作の疑い。
その“疑い”という慎重な言葉に続いて、証拠がひとつずつ出されていく。
手紙の下書き。
贈答品記録。
イネスの証言。
王宮内の侍女や学園関係者からの補足証言。
王は途中一度も遮らなかった。
ただ、聞いている。
その沈黙が何より重い。
「リネット・ブラン」
王妃が名を呼ぶ。
リネットは震えながら立ち上がった。
「あなたはこれらの手紙、贈答品の控え、侍女証言について、何か申し開きはありますか」
ここだ、とアリアベルは思う。
ここで彼女は、何を選ぶのだろう。
否定か。
沈黙か。
あるいは、ようやく認めるのか。
だがリネットが選んだのは、やはりいつもの札だった。
「わたくし……」
声がかすれる。
目元が潤む。
少しだけ肩を震わせ、か細く見える角度へ顔を落とす。
「わたくし、そんなつもりでは……ありませんでした」
室内は静まり返っている。
以前なら、この“そんなつもりでは”で何人かは揺れただろう。
だが今日は違う。
誰も動かない。
「ただ、殿下のおそばにいたくて……」
リネットは続ける。
「お姉様はいつも完璧で、わたくしは何をしても敵わなくて、だから少しでも、殿下に気にかけていただきたくて……」
涙が落ちる。
一粒、二粒。
美しいほどに整った泣き方だ。
けれど、その場にいる者たちの目はもう、その涙の流れ方など見ていなかった。
見ているのは、机の上の手紙と記録と証言。
そして、それらのあとに今この女が何を言うのかだけだ。
「……お姉様には、申し訳ないと」
リネットが顔を上げた。
「ずっと思っておりました。でも、ここまで大きなことになるなんて思わなくて……」
そこで言葉が詰まる。
言い方を変えれば、こうだ。
私は少し欲しがっただけ。
少し泣いただけ。
少しだけ殿下に近づきたかっただけ。
なのに大きくなりすぎたのは、周りのせい。
あまりにいつものやり方だった。
だからこそ、王妃の次の声は冷たかった。
「リネット・ブラン」
その呼びかけだけで、リネットの肩がびくりと跳ねる。
「あなたは今、自分が“ただ弱く愚かなだけ”であるかのように見せようとしている」
「そ、そんな……」
「違うのですか」
王妃は一歩も引かない。
「贈り物の横取りに控えを書き、渡し方にまで指示を入れ、“お姉様の名は出さないこと”と記しておきながら」
「それは……」
「手紙の下書きで“完璧な姉に怯える弱い妹”の構図を繰り返し作っておきながら」
リネットの目から涙がさらにこぼれる。
だがもう、その涙は重みを持たない。
「それを“そんなつもりではなかった”で済ませるつもりですか」
沈黙。
そして、リネットはついに、いつもの一手を大きく切った。
「わたくしだけが悪いのではありません!」
声が裏返る。
室内の空気が張る。
「殿下だって……殿下だって、わたくしのことを見てくださったのです! お姉様よりわたくしを選んでくださったのです!」
愚かだ、とアリアベルは思った。
そこへ逃げるのは最悪だ。
だが、追い詰められた彼女にはもうそれしかなかったのだろう。
ユリヴェールの顔色が変わる。
「リネット」
「だってそうではありませんか!」
彼女は涙の混じった声で叫ぶ。
「殿下は、わたくしのことを可哀想だと、守らなければと仰って……!」
その瞬間、王妃が静かに言った。
「つまり、自分が意図して殿下の判断をそちらへ寄せたことは認めるのですね」
リネットが息を呑む。
しまった、と顔に出た。
遅い。
「わ、わたくしは、そんな……」
「もう結構」
王妃の声には完全に温度が消えていた。
「あなたは最後まで、自分の作為より先に涙を差し出すのですね」
それは断罪の言葉だった。
王はその時初めて、ゆっくり口を開いた。
「十分だ」
重い声だった。
「リネット・ブラン。お前は、王太子の判断を意図して歪め、公爵家嫡女への信頼を削る行為を継続的に行った。王家との婚約に関わる場でそれを為し、なお責任を曖昧にしようとした」
リネットはへたり込むように膝を折る。
「ち、違います、陛下、わたくしは、わたくしはただ……」
「黙れ」
その一言で、場が凍る。
王の叱責は多くない。
多くないからこそ、響く。
「お前の“ただ”が、ここまでを招いた」
リネットはもう言葉にならない声で泣いている。
だが、誰も助けようとはしなかった。
王が続ける。
「リネット・ブランを王宮より退ける。以後、王家主催の社交・行事への出入りを禁ずる。ブラン家の管理下へ戻し、王妃宮付き監督官の立ち会いのもと身辺整理を行わせよ」
それは社交界からの追放に等しかった。
リネットが顔を上げる。
「そ、そんな……! 嫌です、嫌……っ、殿下、殿下!」
泣きながらユリヴェールのほうへ縋るように手を伸ばす。
だが、彼は立ち上がりもせず、青ざめたままそれを見ているだけだった。
その姿を見た瞬間、リネットの顔が変わる。
救われないと知った時の顔だった。
「殿下……?」
声がかすれる。
ユリヴェールは、ほんの一瞬だけ目を閉じ、それから視線を逸らした。
それで終わりだった。
近衛が静かに前へ出る。
乱暴ではない。
だが、拒める余地のない動きだ。
「お立ちください」
「いや……! いやです、離して、わたくしは、わたくしはまだ……!」
リネットはみっともなく足をばたつかせた。
裾が乱れ、髪が崩れ、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになる。
可憐さなどどこにも残らない。
それでも彼女は、なお泣けば何とかなると思っているように見えた。
だが今、この場にそれを受け止める者は一人もいない。
「殿下! 助けて! お願い、わたくしを――」
近衛が両腕を取り、引きずるように立たせる。
リネットはそれでも足を踏ん張り、見苦しく抵抗した。
「嫌、嫌! わたくしは悪くない、悪くないのに……! お姉様だって、アリアベル様だって、どうして何も言わないのよ!」
アリアベルは動かない。
もう何も言う必要はなかった。
彼女の涙は、ようやく完全に効力を失ったのだ。
「離して、離してよ……っ、殿下、殿下ぁ!」
近衛たちは無言でその体を支え、いや、実際には半ば引きずるようにして退出口へ向かう。
足先が床を擦る。
嗚咽が響く。
それでも、誰も止めない。
最後の最後まで、リネットは見苦しく喚き続けた。
「こんなの嘘よ! わたくしだけが悪いなんて嘘! 殿下だって、殿下だってわたくしを――!」
扉が閉じる。
その瞬間、部屋の中は奇妙なほど静かになった。
だが断罪は、まだ終わっていない。
王の視線が、今度はユリヴェールへ向く。
「第一王太子ユリヴェール」
彼はゆっくり立ち上がった。
足元が少し揺れている。
「お前は、王太子としてもっとも重い場面で、感情を優先し、確認を怠り、婚約と公爵家との均衡を軽んじた」
ユリヴェールは唇を引き結ぶ。
「その結果、王家の実務は乱れ、対外信用は揺らぎ、王太子としての資質に深い疑念を招いた」
一言ごとに、会議室の空気が重くなる。
「申し開きはあるか」
長い沈黙。
アリアベルは、彼が何を言うのかを静かに待った。
かつてなら、ここで彼は言い訳を重ねただろう。
惑わされた。
若かった。
守ろうとしただけだ。
でも今、そのどれもが通じないと、さすがに理解しているらしい。
「……ありません」
ようやく出た声は低かった。
王は頷く。
「よろしい」
その“よろしい”が、奇妙なくらい冷たい。
「第一王太子ユリヴェールを、王太子位より退ける」
室内が凍る。
大臣たちも、高位貴族たちも、予想していたとしても実際に言葉になると重いのだろう。
空気がひときわ深く沈む。
ユリヴェールの顔から血の気が引いた。
「……父上」
「公の場での婚約破棄、統治能力の未熟、確認不足、感情への脆弱さ。いずれも単独なら矯正の余地があった。だが、お前はそのすべてを同時に露呈した」
王の声は少しも揺れない。
「今のお前に、この国の次を背負わせることはできぬ」
ユリヴェールの喉が動く。
「待って……ください」
やっと、そこまでだった。
「一度の失策で」
「一度か?」
王の問いが鋭く落ちる。
ユリヴェールが息を詰まらせる。
そうだ。
一度ではない。
表に出たのが一度に見えただけで、実際には長い軽視と依存の結果だ。
「父上、私は……」
「まだ何か言うか」
ユリヴェールはそこで、ついに膝を折りかけた。
だが近衛が一歩出る。
その動きを見た瞬間、彼は完全に追い詰められた顔になった。
「待ってください! 私は、やり直せます! 私はもうわかっています、何を失ったかも、何が足りなかったかも……!」
その声は痛々しいほど必死だった。
けれど、遅い。
「だからこそだ」
王は言う。
「失ってからわかる者に、王太子の座は重すぎる」
ユリヴェールは顔を歪めた。
「父上……っ」
「近衛」
その一言で終わりだった。
二人の近衛が前へ出る。
リネットの時と同じく、乱暴ではない。
だが拒めぬ動きだ。
ユリヴェールは最初、凍ったように立ち尽くした。
そして次の瞬間、ようやく現実が骨へ届いたのか、一歩後ずさる。
「待ってくれ……待ってくれ、私はまだ――」
近衛が腕を取る。
「お放しください」
「やめろ!」
とうとう声が裏返る。
「私は王太子だ! 放せ! 放せと言っている!」
その叫びが、あまりにも空しく響く。
もう違う。
だから近衛は手を緩めない。
ユリヴェールは見苦しく身を捩った。
肩を振り、腕を振り、必死に抵抗する。
だが訓練された近衛の前では、若い男の狼狽など子どもの癇癪に近い。
「父上! 母上! どうか……!」
王妃は目を伏せている。
王は一切動かない。
「アリアベル!」
突然、自分の名が呼ばれて、アリアベルはほんのわずかに目を上げた。
ユリヴェールの顔は、もはや王太子のそれではなかった。
怯えと焦りと、すがりつきたい醜さが全部むき出しになっている。
「アリアベル、私は――」
その先は言わせてもらえなかった。
近衛が腕をねじるようにして向きを変え、彼を半ば引きずるように退出口へ向かわせる。
ユリヴェールはなお足を踏ん張った。
床に靴底が擦れる。
それでも止まらない。
「離せ! まだ話が――私はまだ終わっていない! こんなはずでは……!」
その叫びが遠ざかる。
最後まで見苦しかった。
扉が閉まると、ようやく本当の静寂が訪れた。
アリアベルはそこで初めて、小さく息を吐いた。
強いざまあとは、こういうものなのだろうかと、どこか他人事みたいに思う。
廃嫡しました。
それだけでは伝わらない。
地位を失った瞬間に、人は立ち姿まで変わる。
誇りも理性も剥がれ、結局その人間が何でできているかだけが残る。
今日、ユリヴェールにもリネットにも残ったのは、見苦しい執着と、遅すぎる後悔だけだった。
王が最後に、室内を見回して言った。
「本件はここで終える。各々、今日見たものを忘れるな」
重い言葉だった。
忘れるな。
それは記録せよ、という意味だけではない。
王太子がどうやって落ちたのか。
何が足りなかったのか。
どこで見誤ったのか。
この国に生きる者として、胸へ刻めという命令に近かった。
会が解かれ、人々が静かに席を立つ。
アリアベルもまた立ち上がった。
足元は不思議なほどしっかりしている。
震えもなかった。
泣きもしない。
叫びもしない。
ただ、終わったのだと静かに理解していた。
見苦しく抵抗し、無理やり連れ出されていった元王太子。
最後まで泣き喚き、引きずられるように消えた従妹。
あれが、彼らの断罪だった。
そしてアリアベルは、ようやく本当に過去から切り離されたのだと、静かに思った。
断罪の日は、驚くほど静かな朝から始まった。
雨は降っていない。
空は薄曇りで、陽光は白く拡散し、王都の石畳も屋敷の窓も、輪郭だけを冷たく浮かび上がらせている。
派手な嵐ではない。
けれど、こういう天気の日ほど、起きることは長く記憶に残る――アリアベルは何となくそう思った。
その日、王宮では王と王妃、主要閣僚、高位貴族、そして関係家の代表を集めた正式の裁定が行われることになっていた。
表向きの名目は、先の婚約破棄とその後に生じた王太子周辺の混乱に関する整理。
だが実際には、もっとはっきりしている。
誰が何をしたのか。
誰がどこまで知っていたのか。
そして、その結果どう処されるのか。
それを、王家の名のもとで確定させる日だ。
フォルティス公爵邸の空気もまた、いつも以上に静まり返っていた。
使用人たちは無駄なく動いている。
茶も運ばれ、馬車も整えられ、侍女たちもアリアベルの支度を滞りなく整える。
けれど、誰も余計な言葉を口にしない。
今日がただの面会ではないことを、皆よくわかっているからだ。
「お嬢様、お召し物はこちらでよろしいでしょうか」
侍女が選んだのは、深い灰青のドレスだった。
華美ではない。
けれど、地味とも違う。
線の美しさと布の質だけで立つ色だ。
「ええ。それでいいわ」
アリアベルが答えると、侍女は静かに頭を下げた。
鏡の中の自分を見る。
婚約破棄された哀れな令嬢でもない。
復讐に酔う女でもない。
ただ、今日ここへ立つべき人間としての顔があった。
朝食の席では、公爵もマルセルも、いつも以上に言葉が少なかった。
「準備は整っております」
マルセルが言う。
「イネスの証言書写し、隠し部屋から回収した手紙の原本および控え、贈答品記録、王宮側の実務混乱の整理、すべて揃えております」
「ありがとう」
「お父様」
アリアベルが公爵を見る。
「今日、私はどこまで口を出すべきでしょう」
公爵はカップを置いた。
「問われたことだけ答えればよい」
「はい」
「今日の主役は、お前ではない」
アリアベルは少しだけ目を瞬かせた。
公爵は冷静に続ける。
「今日、裁かれるべきは王太子の軽率さと、リネット・ブランの作為だ。お前が前へ出すぎれば、また“傷ついた令嬢の感情”へ話を落とされる。だから、お前は事実の証人であれば十分だ」
その切り分けが、この家らしかった。
感情がないわけではない。
だが、感情を前へ出すべき場所と、そうでない場所を一切取り違えない。
「承知いたしました」
王宮へ向かう馬車の中で、アリアベルは一度だけ目を閉じた。
緊張していないわけではない。
ただ、それは怯えではなかった。
ようやくここまで辿り着いたのだという、静かな張りつめ方だ。
婚約破棄の夜。
可哀想な従妹。
止まる資金。
綻ぶ王太子。
イネスの震える声。
隠し部屋の手紙。
今さらの復縁懇願。
そして、差し出された手。
全部がここへ繋がっている。
王宮へ着くと、すでに多くの馬車が並んでいた。
格式ある家の紋章。
王家直属の近衛。
重苦しいほど整った動線。
誰ひとり大声は出していないのに、空気はぴんと張りつめている。
案内された先は、通常の会議室より一段大きい裁定の間だった。
王が中央奥に座り、王妃がその右。
左右に主要閣僚。
少し下がった位置に高位貴族。
関係家の代表席。
そして当事者の席。
席に着いた瞬間、アリアベルはすぐにリネットの姿を見つけた。
顔色が悪い。
白粉でどうにか整えてはいるが、目の下の影までは消えていない。
唇の色も薄く、手袋をした指先がかすかに震えているのが、遠目にもわかった。
その隣のユリヴェールは、以前より明らかに硬い。
彼はまだ王太子の装いをしている。
けれど、その華やかさはもう中身を支えきれていない。
王太子という立場の重みを、ようやく自分の骨で感じ始めた顔だった。
王が低く口を開いた。
「始める」
それだけで、室内の空気が完全に変わる。
王妃が、これまでの経緯を簡潔に確認する。
舞踏会での婚約破棄。
その独断性。
その後の王太子周辺の混乱。
そして、王妃宮の調査により浮かび上がった、リネット・ブランによる継続的な印象操作の疑い。
その“疑い”という慎重な言葉に続いて、証拠がひとつずつ出されていく。
手紙の下書き。
贈答品記録。
イネスの証言。
王宮内の侍女や学園関係者からの補足証言。
王は途中一度も遮らなかった。
ただ、聞いている。
その沈黙が何より重い。
「リネット・ブラン」
王妃が名を呼ぶ。
リネットは震えながら立ち上がった。
「あなたはこれらの手紙、贈答品の控え、侍女証言について、何か申し開きはありますか」
ここだ、とアリアベルは思う。
ここで彼女は、何を選ぶのだろう。
否定か。
沈黙か。
あるいは、ようやく認めるのか。
だがリネットが選んだのは、やはりいつもの札だった。
「わたくし……」
声がかすれる。
目元が潤む。
少しだけ肩を震わせ、か細く見える角度へ顔を落とす。
「わたくし、そんなつもりでは……ありませんでした」
室内は静まり返っている。
以前なら、この“そんなつもりでは”で何人かは揺れただろう。
だが今日は違う。
誰も動かない。
「ただ、殿下のおそばにいたくて……」
リネットは続ける。
「お姉様はいつも完璧で、わたくしは何をしても敵わなくて、だから少しでも、殿下に気にかけていただきたくて……」
涙が落ちる。
一粒、二粒。
美しいほどに整った泣き方だ。
けれど、その場にいる者たちの目はもう、その涙の流れ方など見ていなかった。
見ているのは、机の上の手紙と記録と証言。
そして、それらのあとに今この女が何を言うのかだけだ。
「……お姉様には、申し訳ないと」
リネットが顔を上げた。
「ずっと思っておりました。でも、ここまで大きなことになるなんて思わなくて……」
そこで言葉が詰まる。
言い方を変えれば、こうだ。
私は少し欲しがっただけ。
少し泣いただけ。
少しだけ殿下に近づきたかっただけ。
なのに大きくなりすぎたのは、周りのせい。
あまりにいつものやり方だった。
だからこそ、王妃の次の声は冷たかった。
「リネット・ブラン」
その呼びかけだけで、リネットの肩がびくりと跳ねる。
「あなたは今、自分が“ただ弱く愚かなだけ”であるかのように見せようとしている」
「そ、そんな……」
「違うのですか」
王妃は一歩も引かない。
「贈り物の横取りに控えを書き、渡し方にまで指示を入れ、“お姉様の名は出さないこと”と記しておきながら」
「それは……」
「手紙の下書きで“完璧な姉に怯える弱い妹”の構図を繰り返し作っておきながら」
リネットの目から涙がさらにこぼれる。
だがもう、その涙は重みを持たない。
「それを“そんなつもりではなかった”で済ませるつもりですか」
沈黙。
そして、リネットはついに、いつもの一手を大きく切った。
「わたくしだけが悪いのではありません!」
声が裏返る。
室内の空気が張る。
「殿下だって……殿下だって、わたくしのことを見てくださったのです! お姉様よりわたくしを選んでくださったのです!」
愚かだ、とアリアベルは思った。
そこへ逃げるのは最悪だ。
だが、追い詰められた彼女にはもうそれしかなかったのだろう。
ユリヴェールの顔色が変わる。
「リネット」
「だってそうではありませんか!」
彼女は涙の混じった声で叫ぶ。
「殿下は、わたくしのことを可哀想だと、守らなければと仰って……!」
その瞬間、王妃が静かに言った。
「つまり、自分が意図して殿下の判断をそちらへ寄せたことは認めるのですね」
リネットが息を呑む。
しまった、と顔に出た。
遅い。
「わ、わたくしは、そんな……」
「もう結構」
王妃の声には完全に温度が消えていた。
「あなたは最後まで、自分の作為より先に涙を差し出すのですね」
それは断罪の言葉だった。
王はその時初めて、ゆっくり口を開いた。
「十分だ」
重い声だった。
「リネット・ブラン。お前は、王太子の判断を意図して歪め、公爵家嫡女への信頼を削る行為を継続的に行った。王家との婚約に関わる場でそれを為し、なお責任を曖昧にしようとした」
リネットはへたり込むように膝を折る。
「ち、違います、陛下、わたくしは、わたくしはただ……」
「黙れ」
その一言で、場が凍る。
王の叱責は多くない。
多くないからこそ、響く。
「お前の“ただ”が、ここまでを招いた」
リネットはもう言葉にならない声で泣いている。
だが、誰も助けようとはしなかった。
王が続ける。
「リネット・ブランを王宮より退ける。以後、王家主催の社交・行事への出入りを禁ずる。ブラン家の管理下へ戻し、王妃宮付き監督官の立ち会いのもと身辺整理を行わせよ」
それは社交界からの追放に等しかった。
リネットが顔を上げる。
「そ、そんな……! 嫌です、嫌……っ、殿下、殿下!」
泣きながらユリヴェールのほうへ縋るように手を伸ばす。
だが、彼は立ち上がりもせず、青ざめたままそれを見ているだけだった。
その姿を見た瞬間、リネットの顔が変わる。
救われないと知った時の顔だった。
「殿下……?」
声がかすれる。
ユリヴェールは、ほんの一瞬だけ目を閉じ、それから視線を逸らした。
それで終わりだった。
近衛が静かに前へ出る。
乱暴ではない。
だが、拒める余地のない動きだ。
「お立ちください」
「いや……! いやです、離して、わたくしは、わたくしはまだ……!」
リネットはみっともなく足をばたつかせた。
裾が乱れ、髪が崩れ、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになる。
可憐さなどどこにも残らない。
それでも彼女は、なお泣けば何とかなると思っているように見えた。
だが今、この場にそれを受け止める者は一人もいない。
「殿下! 助けて! お願い、わたくしを――」
近衛が両腕を取り、引きずるように立たせる。
リネットはそれでも足を踏ん張り、見苦しく抵抗した。
「嫌、嫌! わたくしは悪くない、悪くないのに……! お姉様だって、アリアベル様だって、どうして何も言わないのよ!」
アリアベルは動かない。
もう何も言う必要はなかった。
彼女の涙は、ようやく完全に効力を失ったのだ。
「離して、離してよ……っ、殿下、殿下ぁ!」
近衛たちは無言でその体を支え、いや、実際には半ば引きずるようにして退出口へ向かう。
足先が床を擦る。
嗚咽が響く。
それでも、誰も止めない。
最後の最後まで、リネットは見苦しく喚き続けた。
「こんなの嘘よ! わたくしだけが悪いなんて嘘! 殿下だって、殿下だってわたくしを――!」
扉が閉じる。
その瞬間、部屋の中は奇妙なほど静かになった。
だが断罪は、まだ終わっていない。
王の視線が、今度はユリヴェールへ向く。
「第一王太子ユリヴェール」
彼はゆっくり立ち上がった。
足元が少し揺れている。
「お前は、王太子としてもっとも重い場面で、感情を優先し、確認を怠り、婚約と公爵家との均衡を軽んじた」
ユリヴェールは唇を引き結ぶ。
「その結果、王家の実務は乱れ、対外信用は揺らぎ、王太子としての資質に深い疑念を招いた」
一言ごとに、会議室の空気が重くなる。
「申し開きはあるか」
長い沈黙。
アリアベルは、彼が何を言うのかを静かに待った。
かつてなら、ここで彼は言い訳を重ねただろう。
惑わされた。
若かった。
守ろうとしただけだ。
でも今、そのどれもが通じないと、さすがに理解しているらしい。
「……ありません」
ようやく出た声は低かった。
王は頷く。
「よろしい」
その“よろしい”が、奇妙なくらい冷たい。
「第一王太子ユリヴェールを、王太子位より退ける」
室内が凍る。
大臣たちも、高位貴族たちも、予想していたとしても実際に言葉になると重いのだろう。
空気がひときわ深く沈む。
ユリヴェールの顔から血の気が引いた。
「……父上」
「公の場での婚約破棄、統治能力の未熟、確認不足、感情への脆弱さ。いずれも単独なら矯正の余地があった。だが、お前はそのすべてを同時に露呈した」
王の声は少しも揺れない。
「今のお前に、この国の次を背負わせることはできぬ」
ユリヴェールの喉が動く。
「待って……ください」
やっと、そこまでだった。
「一度の失策で」
「一度か?」
王の問いが鋭く落ちる。
ユリヴェールが息を詰まらせる。
そうだ。
一度ではない。
表に出たのが一度に見えただけで、実際には長い軽視と依存の結果だ。
「父上、私は……」
「まだ何か言うか」
ユリヴェールはそこで、ついに膝を折りかけた。
だが近衛が一歩出る。
その動きを見た瞬間、彼は完全に追い詰められた顔になった。
「待ってください! 私は、やり直せます! 私はもうわかっています、何を失ったかも、何が足りなかったかも……!」
その声は痛々しいほど必死だった。
けれど、遅い。
「だからこそだ」
王は言う。
「失ってからわかる者に、王太子の座は重すぎる」
ユリヴェールは顔を歪めた。
「父上……っ」
「近衛」
その一言で終わりだった。
二人の近衛が前へ出る。
リネットの時と同じく、乱暴ではない。
だが拒めぬ動きだ。
ユリヴェールは最初、凍ったように立ち尽くした。
そして次の瞬間、ようやく現実が骨へ届いたのか、一歩後ずさる。
「待ってくれ……待ってくれ、私はまだ――」
近衛が腕を取る。
「お放しください」
「やめろ!」
とうとう声が裏返る。
「私は王太子だ! 放せ! 放せと言っている!」
その叫びが、あまりにも空しく響く。
もう違う。
だから近衛は手を緩めない。
ユリヴェールは見苦しく身を捩った。
肩を振り、腕を振り、必死に抵抗する。
だが訓練された近衛の前では、若い男の狼狽など子どもの癇癪に近い。
「父上! 母上! どうか……!」
王妃は目を伏せている。
王は一切動かない。
「アリアベル!」
突然、自分の名が呼ばれて、アリアベルはほんのわずかに目を上げた。
ユリヴェールの顔は、もはや王太子のそれではなかった。
怯えと焦りと、すがりつきたい醜さが全部むき出しになっている。
「アリアベル、私は――」
その先は言わせてもらえなかった。
近衛が腕をねじるようにして向きを変え、彼を半ば引きずるように退出口へ向かわせる。
ユリヴェールはなお足を踏ん張った。
床に靴底が擦れる。
それでも止まらない。
「離せ! まだ話が――私はまだ終わっていない! こんなはずでは……!」
その叫びが遠ざかる。
最後まで見苦しかった。
扉が閉まると、ようやく本当の静寂が訪れた。
アリアベルはそこで初めて、小さく息を吐いた。
強いざまあとは、こういうものなのだろうかと、どこか他人事みたいに思う。
廃嫡しました。
それだけでは伝わらない。
地位を失った瞬間に、人は立ち姿まで変わる。
誇りも理性も剥がれ、結局その人間が何でできているかだけが残る。
今日、ユリヴェールにもリネットにも残ったのは、見苦しい執着と、遅すぎる後悔だけだった。
王が最後に、室内を見回して言った。
「本件はここで終える。各々、今日見たものを忘れるな」
重い言葉だった。
忘れるな。
それは記録せよ、という意味だけではない。
王太子がどうやって落ちたのか。
何が足りなかったのか。
どこで見誤ったのか。
この国に生きる者として、胸へ刻めという命令に近かった。
会が解かれ、人々が静かに席を立つ。
アリアベルもまた立ち上がった。
足元は不思議なほどしっかりしている。
震えもなかった。
泣きもしない。
叫びもしない。
ただ、終わったのだと静かに理解していた。
見苦しく抵抗し、無理やり連れ出されていった元王太子。
最後まで泣き喚き、引きずられるように消えた従妹。
あれが、彼らの断罪だった。
そしてアリアベルは、ようやく本当に過去から切り離されたのだと、静かに思った。
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