托卵平民娘は悪事を企(托卵)んでる。婚約破棄?愚かすぎる王子は自滅しました。

ふわふわ

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エピローグ

エピローグ 「歴史に刻まれる名」

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エピローグ 「歴史に刻まれる名」

 王国の都は、もはや廃墟と化していた。
 瓦礫に覆われた街路、空っぽになった市場、そして飢えに倒れる民。
 王族も貴族も互いに責任を擦り付け合い、最後には自らの首を絞めるように崩壊していった。

 かつて「真実の愛」と叫び、平民の娘と手を取り合った王子アレックスは――。
 今では歴史書にすらその名が記されない。
 ただ「愚かな王子」「托卵に騙された男」として人々に語られるだけであった。

***

 一方、帝国。
 その繁栄は最高潮に達していた。
 市場には活気が満ち、学舎では子供たちが学び、兵士たちは規律を守り、国境はかつてなく堅固であった。

 その中心に立つのは――白銀の髪を戴く皇后、ファミマリア・ド・ローソン。

 彼女の名はすでに「女帝」として人々の心に刻まれていた。
 難民を救い、秩序を与え、繁栄を築き上げたその姿は、民にとってまさしく「母」であり「指導者」だった。

「皇后陛下万歳!」
「女帝ファミマリアに栄光あれ!」

 その声は街々で絶えず響き渡り、帝国をひとつに結びつけていた。

***

 宮殿の高殿。
 ファミマリアはバルコニーから帝都を見下ろしていた。
 眼下には灯火が星のように瞬き、遠くには王国の残滓が闇に沈んでいる。

「……終わったのね」

 彼女は扇子を閉じ、静かに呟いた。
 あれほど重荷だった王国との縁も、愚かなる王子の存在も、もはや過去。
 今あるのは、帝国の未来だけだった。

 背後から歩み寄る気配。
 ジークフリード皇帝が隣に立ち、彼女の横顔を見つめる。

「お前がいたからこそ、帝国はここまで強くなれた」
「いいえ。陛下の剣と民の力があったからです。……私はただ、愚かな王国の過ちを利用したに過ぎませんわ」

 ファミマリアは冷ややかに微笑む。
 その瞳には、揺るぎない光が宿っていた。

「けれど覚えておいてください、陛下。私はこの帝国を導く女帝。……未来を築くためなら、どんな犠牲も厭いません」

 ジークフリードはしばし黙し、やがて微笑みを返した。
「それでいい。民も兵も皆、お前の強さに惹かれている。……女帝ファミマリア、その名は必ず歴史に残るだろう」

***

 そして、時は流れ――後世の歴史家たちはこう記すことになる。

 ――「愚かな王子が国を滅ぼし、賢き女帝が帝国を導いた」と。
 ――「ローソン辺境伯令嬢こそ、王国の滅亡と帝国の繁栄を同時にもたらした存在であった」と。

 その名は確かに刻まれた。
 女帝ファミマリア・ド・ローソン。

 愚かなる愛の茶番から始まった物語は、こうしてひとつの結末を迎えたのである。
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