托卵平民娘は悪事を企(托卵)んでる。婚約破棄?愚かすぎる王子は自滅しました。

ふわふわ

文字の大きさ
11 / 26
第3章 托卵の崩壊

セクション2 「暴かれた愚行」 

しおりを挟む

 王都の宮廷にて。
 昼下がりの穏やかな日差しが差し込む謁見の間は、緊張に包まれていた。
 玉座に座る国王の隣で、王子アレックスは得意げに胸を張っていた。
 その傍らにはエリザベス――ふくらみ始めた腹を愛おしそうに撫でながら、陶酔に浸った微笑を浮かべている。

「父上。彼女こそ、私の真実の愛……そしてお腹には私の子が宿っております」

 アレックスは声を張り上げ、広間の臣下たちを見渡した。
 その顔には誇らしげな光が宿っていたが――臣下たちの目は冷ややかだった。

 そこへ、謁見の場を割るように一人の使者が進み出る。
 ローソン家に仕える騎士だ。

「陛下。……この場にて、重大な事実を申し上げます」

 空気が一気に張り詰める。
 王は眉をひそめた。
「何事だ?」

 騎士は跪き、冷徹に告げた。

「エリザベス嬢とフレーゲル男爵との密会を目撃いたしました。その折の会話にて……彼女の腹の子は、殿下の御子ではなく、フレーゲル男爵の子であると確認されました」

 ――ざわあああっ!

 謁見の間は一瞬にして騒然となった。
 臣下たちが口々に囁き合い、王の顔色が険しさを増す。

「な、何を……!?」
 アレックスは血の気を失い、青ざめた顔で叫んだ。
「そんなはずはない! エリザベス、何か言え!」

 震える王子の声に、エリザベスは唇を震わせた。
 だが、先ほどまでの余裕ある笑みは消え失せ、顔は蒼白に染まっている。

「わ、わたしは……殿下のお子を……!」
「嘘を申すな!」

 怒声とともに、別の証人が前へと進み出た。
 それは王宮の衛兵であり、ローソン家の密偵が残した証拠を受け取った人物だった。

「陛下。密会の場において、フレーゲル男爵自ら『托卵』という言葉を口にしておりました。――これは録音魔導具に残されております」

 証拠の魔導具が差し出され、幻影が広間に映し出される。
 そこには確かに、月夜の中庭で囁き合う二人の姿――。

『殿下はすっかり信じ切っていますわ。わたしのお腹の子が殿下の御子だと』
『ふん、愚かなお花畑王子め。托卵とは言葉の通りだ――』

 その瞬間、広間の空気は凍り付いた。

 アレックスは、崩れ落ちるように膝をついた。
 信じていた“真実の愛”。
 愛しいと抱きしめた女。
 そして誇らしげに語った“我が子”。

 すべてが、欺瞞と嘲笑に塗り潰された。

「……そんな……ばかな……」

 呻き声は誰にも慰められなかった。
 臣下たちの視線は冷たく、王の瞳は怒りに燃えていた。

「フレーゲル男爵!」
 王の怒声が響き渡る。
「お前は王家を欺き、我が子を愚弄した! その罪、死罪に値する!」

 衛兵たちが男爵を捕らえようと進み出る。
 フレーゲル男爵は狼狽し、必死に叫んだ。
「ち、違う! これは、ただの冗談で……!」

 だが、その声に耳を貸す者はいなかった。

 エリザベスは絶叫した。
「いやああっ! フレーゲル様! 離して! わたしは殿下の愛する女なのに――!」

 だがその叫びも虚しく、兵に押さえつけられる。

 アレックスは、蒼白な顔でその光景を見つめていた。
 やがて、自らの喉から震えるような声を漏らす。

「……私は……私は、托卵に……欺かれた……のか……?」

 誰も答えない。
 だが沈黙こそが、その問いへの残酷な答えだった。

 玉座の王は深々とため息をつき、厳かに言葉を放った。

「この愚行……この恥辱……もはや王国全体に広まるであろう」

 謁見の間に、重く暗い影が落ちた。
 王子の名誉は失墜し、王家の威信は地に堕ちた。
 だが同時に――この瞬間こそ、ファミマリアの反撃の幕開けでもあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

双子令嬢の幸せな婚約破棄

石田空
恋愛
クラウディアは双子の妹のクリスティナに当主の座と婚約者を奪われ、辺境の地に住まう貴族の元に嫁ぐこととなった……。 よくある姉妹格差の問題かと思いきや、クリスティナの結婚式のときにも仲睦まじく祝福の言葉を贈るクラウディア。 どうして双子の姉妹は、当主の座と婚約者を入れ替えてしまったのか。それぞれの婚約者の思惑は。 果たして世間の言うほど、ふたりは仲違いを起こしていたのだろうか。 双子令嬢の幸せな婚約破棄の顛末。 サイトより転載になります。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜

いっぺいちゃん
ファンタジー
タイトルは「没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜」 婚約破棄により一夜にしてすべてを失った侯爵令嬢・エリシア・フォン・リースフェルト。 残されたのは誇りと、支払いきれない式場キャンセル料、ドレス代、其の他諸々計二万五千リラ。 家は差し押さえ、財産もゼロ。 そんな彼女の傍に残ったのは、皮肉屋で冷静すぎる執事――セシルだけだった。 「働くのよ、セシル! 借金を返して、私の人生を取り戻すの!」 「……お嬢様、まずは焦げたパンをどうにかしてください」 料理も家事も世間知らずな令嬢と、口の悪い完璧執事。 身分を失った主従が、パン屋・酒場・劇場……とバイトを転々としながら、借金返済と再起を目指す日々が始まる。 ぶつかり合いながらも、次第に生まれていく信頼と絆。 そして、やがて明らかになるセシルの過去の秘密――。 没落から始まる、二人の再生と恋の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

婚約者が最凶すぎて困っています

白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。 そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。 最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。 *幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。 *不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。 *カクヨム。小説家になろうにも投稿。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん
恋愛
 運命が狂った瞬間は…あの舞踏会での王太子殿下の婚約破棄宣言。  罪を犯し、家を取り潰され、王都から追放された元侯爵令嬢オリビアは、辺境の親類の子爵家の養女となった。  嫌々参加した辺境伯主催の夜会で大商家の息子に絡まれてしまったオリビアを助けてくれたダグラスは言った。 「お会いしたかった。元侯爵令嬢殿」  ダグラスは、オリビアの犯した罪を知っていて、更に頼みたい事があると言うが…

処理中です...