托卵平民娘は悪事を企(托卵)んでる。婚約破棄?愚かすぎる王子は自滅しました。

ふわふわ

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第5章 王国の黄昏

セクション1 「失墜」

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セクション1 「失墜」

 ローソン領の帝国譲渡から数ヶ月。
 王国はかつてないほどの不安と動揺に包まれていた。

 失われた領は単なる辺境ではない。
 ――帝国との国境を守る要衝であり、豊かな鉱山と交易路を抱える生命線。
 それを丸ごと失った王国は、経済も軍備も急速に痩せ細っていった。

 街の市場では人々の嘆きが聞こえる。
「また税が上がった……」
「帝国の方が安い塩を売っているらしいぞ。国境を越えて買いに行く者もいる」
「王国に忠義を尽くす理由なんて、もうあるのか?」

 民は王家を見限り始めていた。
 ――その原因が、他でもない“王子アレックス”にあることを、誰もが口を揃えて語った。

 王宮の広間では、毎日のように抗議が押し寄せていた。
 疲弊した農民、没落寸前の商人、兵の待遇に不満を抱く士官たち……。
 だが玉座に座る国王は老齢にして病み衰え、その隣で対応に追われるのはアレックス王子だった。

「で、ですが! 我々は国を守るために……!」

 必死に言葉を並べるが、民衆の視線は冷たい。
 群衆の中から誰かが叫んだ。
「守る? 王子よ! お前は平民の女に騙され、領地を捨てたではないか!」

 その声に広間が揺れる。
「そうだ! ローソン令嬢を蔑ろにしなければ……!」
「托卵の王子に未来を託せるものか!」

 アレックスは真っ赤になり、拳を震わせた。
「ち、違う! 私は……私は愛を信じただけで……!」

 だが、その言葉こそが人々の嘲笑を誘った。
「愛だと? 国を売ってまでか!」
「王国を愛する心があれば、領を失わなかったはずだ!」

 アレックスの声は群衆の怒号にかき消され、彼は言葉を失うしかなかった。

 その夜、王子の私室。
 彼は机に突っ伏し、酒瓶を抱えて呻いていた。

「なぜだ……なぜ私は、あの時……」

 思い出すのは、舞踏会の夜。
 ファミマリアの冷たい微笑と、エリザベスの涙。
 彼は「真実の愛」という言葉に酔い、愚かな決断を下した。
 その代償が今、王国全体を蝕んでいるのだ。

「私は……間違っていない……愛は……愛は偉大なはずだ……」

 呟きは虚しく響く。
 だが扉の外に控える侍女や兵たちの耳には、もはや“哀れな狂言”にしか聞こえていなかった。

 一方その頃、各地の諸侯は密かに動き始めていた。

「ローソン家が帝国に付いた。ならば、我らもいつか……」
「王家はもはや信用ならぬ。帝国の庇護を受けた方が安泰ではないか」

 王都の中心で火種が燃え広がるように、貴族たちの忠誠は揺らぎ始めた。
 王家の権威は地に堕ち、残されたのは“平民を孕ませた愚王子”という嘲りの象徴だけ。

 翌朝、王宮の議場。
 老いた国王が弱々しい声で言った。
「アレックス……お前にこの国を任せられるのか……」

 王子は震え、父を直視できなかった。
「……わ、私は……必ず……」

 その言葉は空虚で、誰の心にも響かない。
 臣下たちの冷たい沈黙が、それを雄弁に物語っていた。

 こうして王子アレックスは、かつて「未来の王」と呼ばれた輝きを完全に失った。
 民心は離反し、諸侯は裏切りを考え、帝国はますます栄光を増す。

 その中心には、すでに皇后候補として確かな地位を築いたファミマリアがいる。
 ――王家を見限り、未来を掴み取った女。
 人々の噂話はいつしか彼女の名を「真の統治者」と呼ぶようになっていた。


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