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第5章 王国の黄昏
セクション3 「離反の連鎖」
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セクション3 「離反の連鎖」
王都の空気は、かつての華やぎをすっかり失っていた。
ローソン領の帝国帰属から半年。
市場は縮小し、兵士の数も減り、街角には失業した者たちが溢れている。
「税が上がったばかりなのに、また兵糧米の値が……」
「いっそ帝国に下った方が暮らしやすいのではないか?」
そんな囁きが庶民の口から自然と漏れるようになっていた。
王都の人々の信頼は、もはや王家にはなかった。
一方、地方の諸侯たちも動きを見せていた。
「ローソン家が帝国に靡いた今、国境の防備は崩壊したも同然だ」
「王家に忠誠を尽くしても、報われぬどころか、搾取されるばかり……」
重税に苦しむ領民たちを前にして、諸侯たちは密かに決断を下し始める。
帝国の商人を受け入れ、兵糧を輸入し、裏で皇帝ジークフリードと交渉を行う者まで現れた。
――離反の連鎖。
それは一気に王国全土へと広がっていった。
王宮の会議の間。
重々しい空気の中、国王は蒼白な顔で椅子に沈み込んでいた。
老いと病に蝕まれたその姿は、もはや国を導く力を残してはいない。
「報告いたします! 南方のベッケン侯が帝国との独自貿易を開始しました!」
「さらに東方のルーデル伯も、帝国から武器の輸入を……!」
次々と届く報告に、廷臣たちは狼狽した。
そして、その矛先はただ一人に向けられる。
「すべての元凶は……王子殿下の軽率な行いにございます!」
「ファミマリア令嬢を軽んじたがゆえに、この国の防壁を失った!」
アレックス王子は顔を真っ赤にし、必死に反論する。
「違う! 私はただ……真実の愛を……!」
「愛だと!? その愚かしさが王国を滅ぼすのだ!」
「領を失い、民を失い、諸侯を失った……お前に未来を託せるものか!」
怒号が飛び交い、議場は混乱に陥る。
だが国王はそれを止める力もなく、ただ咳き込みながら沈黙するばかりだった。
やがて、ある噂が広まった。
「アレックス王子は帝位を継げぬかもしれない」
「次の王は別の血筋から選ばれるやもしれぬ」
その囁きは、民草の希望であると同時に、王国の権威の失墜を決定づけるものだった。
街の酒場では、酔った兵士たちが口にする。
「どうせ俺たちの俸給は払われない。帝国に仕えた方がまだましだ」
「托卵王子に忠誠なんざ誓えるかよ」
王国軍の忠誠すら揺らぎ始めていた。
その頃、帝国。
宮廷の一角で報告を受けたジークフリードは、満足げに笑みを浮かべた。
「予想通りだ。……王国は自ら崩壊への道を歩んでいる」
隣に立つファミマリアは、扇子を閉じて低く呟いた。
「アレックス殿下は、国を背負う器ではなかった。
――けれど、その愚かさが、帝国にとっては何よりの贈り物となったのですわ」
その瞳には、冷徹な光が宿っていた。
王国の混乱は、帝国の繁栄に直結する。
そしてその舵を取っているのは、他でもない自分。
「諸侯が次々と離反する以上、もはや王家に従う理由は誰にもありません。……王国は衰退し、やがて滅びるでしょう」
ジークフリードは彼女を見つめ、静かに頷いた。
「ならば我らは、ただ手を差し伸べればよい。民も諸侯も、進んで帝国に靡くことになるだろう」
こうして王国の衰退は加速した。
アレックス王子は嘲笑の象徴となり、国王は病に沈み、諸侯は離反を繰り返す。
もはや王国の未来を信じる者はほとんどいなかった。
その一方で帝国は栄え、ファミマリアは人々に「皇后」として認められ始めていた。
王国の崩壊と帝国の繁栄――その対比は誰の目にも明らかになりつつあったのである。
王都の空気は、かつての華やぎをすっかり失っていた。
ローソン領の帝国帰属から半年。
市場は縮小し、兵士の数も減り、街角には失業した者たちが溢れている。
「税が上がったばかりなのに、また兵糧米の値が……」
「いっそ帝国に下った方が暮らしやすいのではないか?」
そんな囁きが庶民の口から自然と漏れるようになっていた。
王都の人々の信頼は、もはや王家にはなかった。
一方、地方の諸侯たちも動きを見せていた。
「ローソン家が帝国に靡いた今、国境の防備は崩壊したも同然だ」
「王家に忠誠を尽くしても、報われぬどころか、搾取されるばかり……」
重税に苦しむ領民たちを前にして、諸侯たちは密かに決断を下し始める。
帝国の商人を受け入れ、兵糧を輸入し、裏で皇帝ジークフリードと交渉を行う者まで現れた。
――離反の連鎖。
それは一気に王国全土へと広がっていった。
王宮の会議の間。
重々しい空気の中、国王は蒼白な顔で椅子に沈み込んでいた。
老いと病に蝕まれたその姿は、もはや国を導く力を残してはいない。
「報告いたします! 南方のベッケン侯が帝国との独自貿易を開始しました!」
「さらに東方のルーデル伯も、帝国から武器の輸入を……!」
次々と届く報告に、廷臣たちは狼狽した。
そして、その矛先はただ一人に向けられる。
「すべての元凶は……王子殿下の軽率な行いにございます!」
「ファミマリア令嬢を軽んじたがゆえに、この国の防壁を失った!」
アレックス王子は顔を真っ赤にし、必死に反論する。
「違う! 私はただ……真実の愛を……!」
「愛だと!? その愚かしさが王国を滅ぼすのだ!」
「領を失い、民を失い、諸侯を失った……お前に未来を託せるものか!」
怒号が飛び交い、議場は混乱に陥る。
だが国王はそれを止める力もなく、ただ咳き込みながら沈黙するばかりだった。
やがて、ある噂が広まった。
「アレックス王子は帝位を継げぬかもしれない」
「次の王は別の血筋から選ばれるやもしれぬ」
その囁きは、民草の希望であると同時に、王国の権威の失墜を決定づけるものだった。
街の酒場では、酔った兵士たちが口にする。
「どうせ俺たちの俸給は払われない。帝国に仕えた方がまだましだ」
「托卵王子に忠誠なんざ誓えるかよ」
王国軍の忠誠すら揺らぎ始めていた。
その頃、帝国。
宮廷の一角で報告を受けたジークフリードは、満足げに笑みを浮かべた。
「予想通りだ。……王国は自ら崩壊への道を歩んでいる」
隣に立つファミマリアは、扇子を閉じて低く呟いた。
「アレックス殿下は、国を背負う器ではなかった。
――けれど、その愚かさが、帝国にとっては何よりの贈り物となったのですわ」
その瞳には、冷徹な光が宿っていた。
王国の混乱は、帝国の繁栄に直結する。
そしてその舵を取っているのは、他でもない自分。
「諸侯が次々と離反する以上、もはや王家に従う理由は誰にもありません。……王国は衰退し、やがて滅びるでしょう」
ジークフリードは彼女を見つめ、静かに頷いた。
「ならば我らは、ただ手を差し伸べればよい。民も諸侯も、進んで帝国に靡くことになるだろう」
こうして王国の衰退は加速した。
アレックス王子は嘲笑の象徴となり、国王は病に沈み、諸侯は離反を繰り返す。
もはや王国の未来を信じる者はほとんどいなかった。
その一方で帝国は栄え、ファミマリアは人々に「皇后」として認められ始めていた。
王国の崩壊と帝国の繁栄――その対比は誰の目にも明らかになりつつあったのである。
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